日本人の平均的なグルメ度では、魚は養殖よりも天然物が好まれます。ところが畜肉では「柔らかさ」「脂肪の味」が好まれ、それは明らかに野生のもの(たとえば、おフランスのジビエ)よりは養殖、じゃなくて、家畜の肉を好む、ということです。
ただ、最近は魚の方にも脂の味を望む動きがどんどん出てきて(回転ずしでも「○○トロ」が増えていません?)、もしかしたらその内に魚も「やっぱり養殖の方が美味しい」が“常識”となるのかもしれません。
【ただいま読書中】
『クラゲの光に魅せられて ──ノーベル化学賞の原点』下村脩 著、 朝日新聞出版、2009年、1000円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4022599553?ie=UTF8&tag=m0kada-22&link_code=as3&camp=767&creative=3999&creativeASIN=4022599553
厳密には下村さんは本書の「著者」ではありません。講演に加筆したものや対談やパネルディスカッション(に加筆されたもの)によって本書は構成されていますので。ただ、下村さんの研究の概略だけではなくてその人となりについて本人の“肉声”で知ることができる点では良い本です。
終戦直後、名古屋大学の研究生としてたまたまウミホタルの研究を下村さんは始めます。与えられたテーマは「ウミホタルの発光物質(ルシフェリン)の結晶化」。ところがそれはまだ世界で誰も成功したことが無く、下村さんも10ヶ月間失敗を続けます。しかし、ある日溶液を別のことに使おうと濃塩酸を加え、普通ならそこで加熱するのにたまたまオーブンが用意されていなかったので冬の実験室に一夜放置しておくと翌朝色が変わっているのを下村さんは見つけました。捨てようとしてよく見ると底に小さな沈殿が。念のために顕微鏡で見るとそれがルシフェリンの結晶でした。
考えつくありとあらゆることをやってみて、失敗だと思っても細かい変化を見逃さないこと、科学における「成功の法則」がここでも生きています。結局その結晶をほかの人が分析して構造式を決定するのですが、それが後の下村さんの研究にも大きな意味を持つようになります。
ルシフェリンの業績により、プリンストン大学からの誘いで下村さんはフルブライト奨学生として渡米します。与えられたテーマはオワンクラゲ。指導教授はオワンクラゲが発光するのはルシフェリンによると信じていましたが、下村さんはその意見に賛成できませんでした。結局1万匹のオワンクラゲから数mgの発光タンパクを精製し「イクオリン」と名付けます。イクオリンに微量のカルシウムイオンを加えると青く発光しました。ところがその過程で、緑色の蛍光を発する物質も微量発見し、下村さんは“ついでに”精製します(後にGFPと名付けられました)。イクオリンはカルシウムイオンの検出に有用でした。さらにその構造にはルシフェリンと共通の部分がありそれが発光の中核であることがわかりました。GFPは他の多くの蛍光蛋白質(別々の蛋白質と発光団が組み合わさっている)とは異なって、自分自身の蛋白質構造の中に発光団を持っていました。つまり遺伝操作によってまるごとクローニングが可能です。その研究の結果、細胞内に蛍光タンパクを入れて細胞内小器官を観察したりガン細胞だけを光らせたり、ができるようになったそうです。
ちなみに1990年頃から、下村さんたちが採集していたときには海いっぱいにいたオワンクラゲは姿を消したそうです。ただ、発光する生物はほかにもたくさんいるそうです。トビイカ、ウミエラ、発光ミミズ、発光ゴカイ、ツキヨタケ、アミヒカリタケ、発光カタツムリ、発光ヤスデ……研究対象はたくさんあります。そしてその応用も。ただ、ノーベル賞が下村さんに与えられたのは「基礎研究を高く評価するぞ」というノーベル賞選考委員会からのメッセージでしょう。
ただ、最近は魚の方にも脂の味を望む動きがどんどん出てきて(回転ずしでも「○○トロ」が増えていません?)、もしかしたらその内に魚も「やっぱり養殖の方が美味しい」が“常識”となるのかもしれません。
【ただいま読書中】
『クラゲの光に魅せられて ──ノーベル化学賞の原点』下村脩 著、 朝日新聞出版、2009年、1000円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4022599553?ie=UTF8&tag=m0kada-22&link_code=as3&camp=767&creative=3999&creativeASIN=4022599553
厳密には下村さんは本書の「著者」ではありません。講演に加筆したものや対談やパネルディスカッション(に加筆されたもの)によって本書は構成されていますので。ただ、下村さんの研究の概略だけではなくてその人となりについて本人の“肉声”で知ることができる点では良い本です。
終戦直後、名古屋大学の研究生としてたまたまウミホタルの研究を下村さんは始めます。与えられたテーマは「ウミホタルの発光物質(ルシフェリン)の結晶化」。ところがそれはまだ世界で誰も成功したことが無く、下村さんも10ヶ月間失敗を続けます。しかし、ある日溶液を別のことに使おうと濃塩酸を加え、普通ならそこで加熱するのにたまたまオーブンが用意されていなかったので冬の実験室に一夜放置しておくと翌朝色が変わっているのを下村さんは見つけました。捨てようとしてよく見ると底に小さな沈殿が。念のために顕微鏡で見るとそれがルシフェリンの結晶でした。
考えつくありとあらゆることをやってみて、失敗だと思っても細かい変化を見逃さないこと、科学における「成功の法則」がここでも生きています。結局その結晶をほかの人が分析して構造式を決定するのですが、それが後の下村さんの研究にも大きな意味を持つようになります。
ルシフェリンの業績により、プリンストン大学からの誘いで下村さんはフルブライト奨学生として渡米します。与えられたテーマはオワンクラゲ。指導教授はオワンクラゲが発光するのはルシフェリンによると信じていましたが、下村さんはその意見に賛成できませんでした。結局1万匹のオワンクラゲから数mgの発光タンパクを精製し「イクオリン」と名付けます。イクオリンに微量のカルシウムイオンを加えると青く発光しました。ところがその過程で、緑色の蛍光を発する物質も微量発見し、下村さんは“ついでに”精製します(後にGFPと名付けられました)。イクオリンはカルシウムイオンの検出に有用でした。さらにその構造にはルシフェリンと共通の部分がありそれが発光の中核であることがわかりました。GFPは他の多くの蛍光蛋白質(別々の蛋白質と発光団が組み合わさっている)とは異なって、自分自身の蛋白質構造の中に発光団を持っていました。つまり遺伝操作によってまるごとクローニングが可能です。その研究の結果、細胞内に蛍光タンパクを入れて細胞内小器官を観察したりガン細胞だけを光らせたり、ができるようになったそうです。
ちなみに1990年頃から、下村さんたちが採集していたときには海いっぱいにいたオワンクラゲは姿を消したそうです。ただ、発光する生物はほかにもたくさんいるそうです。トビイカ、ウミエラ、発光ミミズ、発光ゴカイ、ツキヨタケ、アミヒカリタケ、発光カタツムリ、発光ヤスデ……研究対象はたくさんあります。そしてその応用も。ただ、ノーベル賞が下村さんに与えられたのは「基礎研究を高く評価するぞ」というノーベル賞選考委員会からのメッセージでしょう。