特権
「桜を見る会」では「首相の地元特権」があるようですが、その特権は「桜を見る会」だけに限定なのでしょうか? 別のことでも細々と優遇されている、なんてことは? いや「首相の支持者だから当然だ」という意識かもしれませんが「日本の首相」であって「山口の首相」ではないでしょう?
【ただいま読書中】『世界の貧困・日本の貧困(シリーズ 貧困を考える(1)) ──国際比較 世界と日本の同じと違いを考えよう』池上彰 監修、稲葉茂勝 著、 ミネルヴァ書房、2017年、1800円(税別)
「貧困」を論じるのならまず「絶対的貧困」(生きていくことさえ困難な状態)と「相対的貧困」(主に先進国の中で、生活に苦しみそれを向上させる機会に恵まれていない状態)についてきちんと認識する必要があります。それをごっちゃにしたら「貧困」が見えなくなります。
発展途上国では絶対的貧困が問題となっています。取りあえずの定義として「1日の生活費が1.90ドル未満」がありますが、世界中でそういった状態の人は約8億人。
日本で問題なのは、相対的貧困、しかもその状態の人がどんどん増加していることです。日本には「絶対的貧困者」がごく少数であることをもって「日本は豊かな国で貧困問題は存在しない」なんて主張をする人もいますが、そういった人は世代を超える相対的貧困の負のスパイラルを実際に体験したら現実がわかるかな、なんてことを私は思っています。
経済格差を表現する「ジニ係数」は有名ですが、本書では「人間開発指数(HDI)」も紹介されています。これは「健康で長生きか」「よい教育を受けているか」「人間らしい生活ができる収入があるか」の3つの基準を総合して数字で表現されますが、上位は欧米、下位はアフリカに集中しています。ちなみに日本は20位。上位グループの下位、といった位置づけです。
貧困の原因として「戦争」「病気」「借金(個人の借金と国の借金)」「異常気象」が挙げられています。そのどれも「日本とは無縁の問題」ではありません。さらに「偏見(差別)」も貧困と密接に関係しています。
本書は「子供向けの本」という位置づけです。しかし、大人でも読み応えがあります。それは本書が「事実」を根拠としているからでしょう。この「事実」から何を読み取り、何を考えるかは、読者が自力ですればよいことで、それには「読者が子供か大人か」は無関係なのです。