【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

祝祭日

2019-08-02 10:59:10 | Weblog

 「ホリデー」はもともとは「ホーリーデイ(聖なる祝祭日)」だったはずですが、昭和の日本では休めること自体が祝うべきことで、令和では休日はあるのが当たり前、になっています。これはこれで「祝うべきこと」なのかもしれませんが。

【ただいま読書中】『本と鍵の季節』米澤穂信 著、 集英社、2018年、1400円(税別)

目次:「913」「ロックオンロッカー」「金曜に彼は何をしたのか」「ない本」「昔話を聞かせておくれよ」「友よ知るなかれ」

 高校二年生の図書委員(男子二人)が主人公、という変わった設定です。で、彼らがやるのが、謎解き。最初の数ページでその設定がわかった瞬間、これは私が読むべき本だ、と感じました。私自身、謎解きが大好きな図書委員でしたから。
 二人は“名探偵"です。最初から「謎を解いてくれ」という依頼もありますし、何もなさそうなところに二人で謎を見つけてしまってそれを解く場合もあります。高校生二人ですから、動ける範囲は限定されているし、できることに限界もありますが、それでも知性と観察力はそういった「限界」を簡単に突破してしまいます。
 二人の会話のあちこちに「本」の一部がさらりと登場します。いや、本筋とは関係ない場合がほとんどなんですけどね、(「読んでないんだよな」が口癖なのに)さすが図書委員です。
 軽妙な会話に鋭い洞察が加わり、二人はときに“余白"で会話を続けます。そして、どの作品も「解決した、万歳」では終わりません。謎が解けたときに残される余韻、これが本書の魅力です。
 そして、本書は謎を残したまま実に柔らかく終わります。私は気に入りましたが……松倉くんについてはいろんなことがわかりましたが、語り手の「僕」(堀川くん)についてはほとんど何も語られていないではないですか。こんどは堀川くんの「謎」についての本を読みたい、と著者に希望します。強く希望します。