弱虫で卑怯者の行為です。
だって「殴り返さない(殴り返せない)とわかっている相手」だけを選んで殴っているでしょ?
【ただいま読書中】『命の救援電車 ──大阪大空襲の奇跡』坂夏樹 著、 さくら舎、2021年、1700円(税別)
1945年3月10日未明、東京に大空襲がありました。それまで米軍の空襲は主に軍事施設を狙った精密爆撃でしたが、この時から米軍の戦術は市街地に対する無差別大規模破壊大量殺戮を目的とするものに変わります。3月12日未明には名古屋、そして13日23時57分から14日3時25分の間に大阪に274騎のB29から1730トンの焼夷弾が投下されました。大阪市は一面の火の海になります。
「大阪の地下鉄の駅に逃げ込んだ人が、走っていた電車に命を救われた」という噂が一部で囁かれていました。しかしあくまで噂です。現実的には、終電後には地下鉄の第三軌条(電車を動かすため、2本のレールのすぐそばにもう一本敷かれた電源用のレール)の電源は落とされます。それを空襲のさなかにわざわざ再通電させるとは思えませんし、地下鉄駅のシャッターは閉められ職員は自宅か寮に帰っています。それが空襲のさなかにわざわざ「避難電車」を運行させるために戻ってくるとも思えません。
しかし、著者のもとには「私は地下鉄に命を救われた」という証言が続々集まってきました。
大阪大空襲の夜、その地下では一体何が起きていたのか? 具体的な証言がたくさんある以上、それは単なる噂ではありません。しかし、地下鉄のシステム上、最終電車から始発までの間に予定外の電車を動かすことは困難です。
この謎解きは、実にスリリングです。謎解きをしていたお二人は、心が躍動していたことでしょう。