【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

知識と自由

2019-08-24 09:07:01 | Weblog

 無知は人を不便にしますが、ある意味自由にもしています。何も考えずにすみますから。中途半端な知識は人を不自由にします。正解があるのはわかっているのに、その正解が見つかりませんから。十分な知識は人を自由にします。そして過剰な知識は人を不自由にします。

【ただいま読書中】『三蔵法師の歩いた道 ──巡歴の地図をたどる旅』長澤和俊 著、 青春出版社、2004年、730円(税別)

 隋の文帝はそれまで弾圧されていた仏教復活の詔を出し仏教は興隆しました。そこで学ぶ若い(というより幼い)僧の一人が玄奘でした。のちにインドから持ち帰った仏典を元に中国法相宗(日本だと、奈良の薬師寺や京都の清水寺の宗派)の開祖となりますが、それは後のお話。
 27歳の秋、玄奘は西域を目指して出発します。しかし唐には出国禁止令があります。そこで人目を避けての旅となりました。はじめは同行してくれる弟子や協力者がいましたが、砂漠に入ると単身です。写真がありますが、荒涼とした風景で、自分だったら一日でも耐えられるだろうか、と思います。盗賊、水不足、王に引き留められる、などの妨害が次から次へと登場。いや、これは『西遊記』のリアル版だわ、と私は感じます。著者はジープで移動していますが、それでも大変だったようです(さすがに盗賊や王は出てきませんが)。
 旅路の途中にバーミヤンが出てきます。2001年に破壊された石仏の、バーミヤンです。なるほど、ヒマラヤを迂回するために、シルクロードに沿ってまず西に行きそこから南下してから東に向かっていたんですね。
 玄奘は、熱心な宗教家としての側面だけではなくて、インドまで往復する冒険心、多国の人とコミュニケーションが取れる国際的な感覚と語学力、唐の皇帝と交渉して国家事業として経典の翻訳を行う政治力など、実に様々な優秀さを持っていました。なにより大切だったのは「生き残る力」でしょう。途中で死んでいたら歴史にはその業績が残せなかったでしょうから。となると、世界に貢献しそうな優秀な人には、サバイバル教育もした方が良いことに?