JCP市原時夫です

千葉県房総の睦沢町から、政治・経済・歴史・オペラ・うたごえを考えるgabuku@m12.alpha-net.ne.jp

芸術家の自由な創造性を奪ったソ連社会 「ショスタコービッチある生涯」

2014年02月14日 | Weblog


 
 津田沼駅前の「丸善書店」で見つけたのが「ショスタコービッチ ある生涯」アルファベータ社 3200円 ローレル・Eファーイ著 です。
 
 三橋美智也で育った私が
 私は、子どもの頃近所の映画館から毎日流れてくる、三橋美智也の「赤い夕陽の故郷」や父が買ってきた、三門博だと思いましたが「唄入り観音経」78回転レコードの「雨だ雨だ」を聞いて育ったので、クラッシックは全くだめですが、ソ連社会とはなんだったのかを、ショスタコービッチの作品と生涯を通じて知る問題意識で読みました。

 あまりに重い音楽作品で
 この本を読んではじめて、ショスタコービッチのい一部の作品を聞きましたが、好きにはなれません。人間への信頼というものがない。暖かくない、やさしくない、真正面から自分を出していない。だんだ気が滅入ってくるという感じだからです。

 事実を追及した書
  本の作者は、ショスタコービッチの自身や周りの矛盾する文献などを細かく精査して、事実と思われることを時系列にそって、記述しています。非常に淡々と書かれているだけに、いつ自分が粛正されないか、神経を張りつめながら、スターリンなどに迎合しながら、作品は、その恐怖を描きどの作品も聴衆には支持されていくその恐怖の社会が浮かび上がってきます。
 
 スターリンに迎合しながら、作品はその本質を描き、市民に支持される
 ピアニストの母のもと、家庭で音楽会を開くほどの環境と完璧な絶対音感・記憶力という才能にめぐまれた物静かなこどもが、父の死による生活とのたたかい。オペラ「マクベス夫人」を途中まで見たスターリン、その後の死の恐怖の中での、交響曲第4番。一方では、ソ連党の方針にそって、反省を繰り返し生き延びる姿が描かれます。
 ちなみに「マクベス夫人」をユーチューブで見ましたが、演出方法でさまざまですが、ソ連の批評家達の批判と反対に聴衆の大変な支持を受けたようですか、私には理解できませんでした。当時の市民の気分・感情がこの作品に現れているのでしょう。
 
  個性・芸術・人間の自由を抑圧する社会
 ショスタコービッチは、矛盾に満ちた人生だったのではないでしょうか。本音を語れない、しかし、作品には本音が現れてしまう。市民は支持する。ソ連にとどまり、作品を作り続けた姿勢に、彼の勇気と良心・芸術への思いがあったのではないでしょうか。
 それとともに、読みながら、安倍政権の進めている今の日本の政治の危険性を感じました。