労務管理・安全対策向田社会保険労務士in札幌

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最低賃金引き上げに伴う賃金格差

2017-07-29 18:36:16 | ビジネス
「2017年度の最低賃金(時給)の引き上げ額について、厚生労働省の中央最低賃金審議会の小委員会は25日夜、全国の加重平均で25円上げるべきだとの目安をまとめた。目安額としては比較できる02年度以降で最大の引き上げで、実現すれば全国平均は848円になる。引き上げ率は「3%」。2年連続で安倍政権の目標通りに決着した。」という記事が新聞各紙を賑わせた。

最低賃金は、会社が従業員に支払う最低金額である。
最低賃金が上がると在籍している従業員の賃金が下から押し上げられ玉突き状態で会社全体の賃金が上がる。
最低賃金ぎりぎりの会社は、大変でも賃金を引き上げなければ法令違反となる。
引き上げられた従業員は個人消費をしてもらえれば会社もめぐりめぐって経営がよくなる。
しかし、将来への不安から消費ではなく貯蓄に回れば経済効果は見込めない。

もうひとつ、最低賃金が上がるとハローワークに求人をする際に必然的に賃金が高くなります。
採用すると現在在籍する従業員との賃金格差が縮まる。
新規採用者は、経験的には劣るが採用を優先するため賃金格差が不適切になっている。
本来、最低賃金が3%上がれば在籍従業員も3%以上上がると問題がないが実際には困難な会社も多い。
率で昇給すると昇給線はたつが、額にすると昇給線はねかせることができる。
この組み合わせで昇給するので最低賃金も「率と額」とで答申してもらいたい。
たとえば、「額(ゲタ)3円、率2%」という考え方を提案したい。

労働災害が最も多い転倒災害

2017-01-29 11:23:58 | ビジネス
労働災害がもっとも多い転倒災害は労災保険の対象となります。
労働災害が最も多いのが転倒災害であることをご存知でしょうか。

平成26年の厚生労働省調査では、
1位 転倒災害
2位 墜落・転落
3位 はさまれ・巻き込まれ

墜落・転落、はさまれ・巻き込まれ災害は年々減少しています。
しかし、転倒災害は年々増加傾向にあり、長期の休業につながることもあり深刻な問題になっています。

転倒災害の主な原因に、
1 つまずき
2 すべり
3 踏み外し
があります。
特に、冬場は降雪による転倒災害が増加します。
そのため、天気予報に気を配り、降雪が予想される際には滑りにくい靴の着用を指示(会社)する。
特に、凍った雪の上に新雪のときは滑りやすく注意が必要となります。
ポケットに手を入れた歩行も危険ですよ。
車の運転においても、乗降の際に足元がすべり転倒災害につながります。

短い冬ですが災害に留意して過ごしましょう。

月額変更届(所定労働時間変動)の取り扱い

2017-01-26 22:25:51 | ビジネス
月額変更届(所定労働時間変動)の取り扱い

時給制の従業員の所定労働時間の変更に伴う月額変更届について
たとえば、時給900円は変わらないが所定労働時間が6時間から8時間に変更になった場合に月額変更届の必要があるか。
月額変更届は、
「固定的賃金に変動+従来の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた+3カ月とも支払い基礎日数が17日以上」 が条件となります。
一見、固定的賃金である時給には変更がないため月額変更の対象にならない。
しかし、所定労働時間が変更したことにより固定的賃金が「標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた」場合には月額変更が必要になります。
つまり、直接的に固定的賃金(時給)に変動がない場合でも、間接的に所定労働時間が変更になり「標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた」場合には月額変更が必要。
固定的賃金を拡大解釈することになります。

介護休業制度の改正

2017-01-07 10:24:02 | ビジネス
あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。

介護休業制度の改正に伴う就業規則の改正

さて、平成29年1月1日から介護休業制度が改正されます。主な改正点は、

1 対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として、介護休業を分割して取得可能になった

2 介護休業(介護家族1人あたり1年間に5日、2人以上で1年間に10日)について半日(所定労働時間の2分の1)単位での取得が可能になった

3 介護のための所定労働時間の短縮措置(始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げなど)について、介護休業とは別に、利用開始から3年の間で2回以上の利用が可能になった

4 介護のための所定外労働の制限(残業の免除)について、対象家族1人につき、介護終了まで利用できる

5 有期契約労働者の介護休業の取得要件が緩和された

このため、就業規則の変更が必要になります。

接待ゴルフは、労働時間か

2016-12-26 19:29:00 | ビジネス
接待ゴルフは、労働時間か

営業にとって「接待」は、つきものです。

会社の経費持ち、上司同行のもと「接待ゴルフ」を行うケースがあります。

この接待ゴルフが労働時間になるかになります。

結論から申し上げると、「原則、労働時間にならない」。ゴルフや酒席自体が仕事(業務)ではない。

例外として、裏方としてゴルフコンペの運営業務に従事する場合などが労働時間とみる場合があります。

最近の判例として、最高裁第2小法廷 28.7.8判決

社長への資料の提出期限が翌日に迫っていることを理由に上げ中国人研修生の歓送迎会の出席を断ったが、上司から「今日が最後だから」などと参加を求められた。

そのため、残業を中断して歓送迎会に参加した。男性は社用車で研修生を自宅に送った後、会社の戻る途中で交通事故で亡くなった。男子は飲酒をしていなかった。

判決は「資料の提出期限は延長されず、歓送迎会後に職場に戻ることを余儀なくされた」と認めた。

この判決からも、労働時間と認定されるためのハードルが高いことが伺われます。

同一労働同一賃金(定年後再雇用)判決に思う

2016-11-26 09:30:55 | ビジネス
東京高裁は、長沢運輸(横浜市)の定年後に再雇用されたトラック運転手の賃金引下げは違法という訴えに対し、「同じ仕事でも、再雇用後の賃金減額は一般的」という事実を重視して格差を認めた。

労働契約法第20条は、正規社員と有期雇用の待遇格差が不合理であるかの判断基準として、
1)仕事の内容や責任
2)配置などの変更の範囲
3)その他の事情
を考慮するとしている。
しかし、年齢的要素(60歳以上、定年後)が欠落しているためにこのような事態が生じたと思う。
まさに、「その他の要素」を明確にする必要がある。

政府は「同一労働同一賃金」を実現するため、正規社員と有期雇用の待遇格差がどのような場合に合理的で、どんな場合に不合理かを示すガイドラインを作る予定である。

同一労働同一賃金は、仕事の内容(質、量)と責任(結果責任)が同じ。表裏には職務遂行能力(知識、知的判断)が同じ。
つまり、同一労働同一賃金を正面からとらえると明確に違反。
しかし、その他の要素として、
1)退職金の支払い
2)賃金の減額が約20~24%
3)再雇用契約を締結している
を顧慮すると東京高裁の判決を支持します。
最も、賃金減額を不服とするなら運転手は「雇用契約締結」すべきではない。

東京地裁の判決は、法律を直視する姿勢はあるが、高裁のような社会的要請を考慮しない短絡的判決としか思えません。

「1年単位の変形労働時間制」は運用できているか

2016-10-23 09:09:42 | ビジネス
多くの企業で、「1年単位の変形労働時間制」、「1ヵ月単位の変形労働時間制」を採用しています。

平成27年就労条件総合調査の概況によると、
変形労働時間制を採用している企業の割合は52.8%あります。
内訳は、1年変形の労働時間制30.6%、1カ月単位の変形労働時間制20.3%、その他4.3%となります。
しかし、変形労働時間制の「対象労働者の範囲」、「労働時間の計算方法」、「割増賃金の計算方法」、「労働日数の限度」など多くの条件を理解して活用しているのか甚だ疑問である。

ただ、「他社が利用しているから」、「役所から勧められたから」などの理由で安直に採用してはいないだろうか。
ケースにもよりますが原則(1週40時間、1日8時間)の労働時間制で運用することが望ましいと思えることがあります。
理由として、
・労働時間や休日にメリハリが必要なのに「一律1日8時間、公休日は日曜日だけ」になっている
・日・週・対象期間の割増計算の仕方を理解していない
・振休、代休、有給の区別ができずに運用している  など。

企業として、あるべき姿を描かなければ「残業の減少」になりません。
もともと、変形労働時間制が誕生したのは多様性ある働き方のなかで労働時間の短縮が目的であったことを銘記したい。

「残業青天井」に歯止め

2016-09-17 19:26:19 | ビジネス
朝日新聞に「残業青天井」に歯止め
という見出しがありました。

「36協定」の抜け穴 見直し議論開始
現在の労働基準法第36条に基づいて、残業時間の上限は労使の合意により定めることができる。
法定労働時間を超える残業には「1カ月45時間まで」という基準はあるが、行政指導の基準で法的な強制力はない。
さらに、仕事が忙しいいといった時に「特別な事情」があれば特別条項が付いた協定を労使で結ぶことで残業時間を事実上青天井にできる『抜け穴』があり、特別条項で過労死の労災認定基準(月80時間)を上回る時間を上限とする企業も少なくない。

現在、大企業は1か月60時間を超える時間外労働については、法定割増賃金率が、現行の25%から50%に引き上げられます。
にもかかわらず、特別条項付の「36協定」があるのは22.4%。特別条項の上限が過労死の基準を上回る事業場も4.8%にのぼり、大企業に絞れば、この比率は14.6%に達する。

この見直しとして、残業時間の上限を労基法に明記して「抜け穴」をつぶす。
上限を超える働き方をした企業に罰則を科す案が浮上している。

過重労働を制限し、健康で文化的な生活を送るためには必要な措置と感じています。
特に、忙しい部門や仕事のできる人に仕事が偏る傾向があります。
業務の平準化を図る工夫が肝要と考えます。

同一労働同一賃金は「定年前」まで。

2016-07-03 11:17:20 | ビジネス
5月13日東京地方裁判所で驚きの判決が出ました。
定年後に再雇用されたトラック運転手の男性3人が、定年前と同じ業務なのに賃金を下げられたのは違法というものです。
会社側は「運転手らは賃下げに同意していた」とも主張したが、判決は、同意しないと再雇用されない恐れがある状況だったことから、この点も特段の事情にはあたらないと判断した。

労働契約法第20条の「不合理な労働条件の禁止」が根拠とされている。
有期雇用労働者と正規雇用労働者との労働条件において労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

これを受けて、定年後は役職を外すなどの責任の軽減が提案されています。
しかし、今回の判決は労働契約法第20条の拡大解釈に映る。
実際の実務でも、定年後の再雇用に当たっては、定年前より賃金が下がった場合に、国の雇用保険から「高年齢雇用継続給付金」が支給される。つまり、定年後に報酬が減ることを前提に制度設計がなされている。
これを考え合わせると有期雇用労働者と正規雇用労働者との不合理な労働条件の禁止(同一労働同一賃金)は「定年前」に限定すべきである。

もし、上級審で定年後も定年前と同じ賃金であることを支持されると「日本的雇用の崩壊」ともなりかねない。

このような主張をしていますが人事制度策定の際には、定年前までは「同一労働同一賃金」を支持しています。
しかし、定年後は「賃金引き下げの同意の有無を考慮すべきである。」と明記する。