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日本のギャンブル依存症の現状について

2016-12-14 17:16:14 | 依存症
ここ数日IR法案成立に関連して
「ギャンブル依存症」の問題がたびたびテレビでも取り上げられていましたが
ニュースの中で報道されるのはごくごく限られた
それも、何かと差支えがあるところには絶対に触れないように配慮された
断片的な報道ばかりで、これでは全体像がまったく分かりません。

コメンテーターの女性も「なんだか自分たちと縁遠い話のようで」
とコメントされていましたが
家族のギャンブル依存症の問題を経験されていない方にとっては
それが正直な感想なのだろうと思います。

そこで、現在の日本のギャンブル依存症の現状を理解できる
信頼のおける資料はないかと探していたら
北海道立精神保健福祉センター所長で「ギャンブル依存症(2002)」の著者でもある
田辺等先生による「ギャンブル依存症の現状」という報告書がネットにあがっていました。

その中に「諸外国におけるギャンブル依存症の有病率」という項目があって
調査数にばらつきはあるのですが、大体次のような結果です。

アメリカ 1.4% イギリス 0.8% スペイン 1.7%
スイス  0.8% スウェーデン 1.2% オーストラリア 2.1%

これに対して日本は2008年度の厚生労働省の調査で
男性 9.6% 女性 1.6% 推計値 536万人 という結果が出ています。

そして「なぜ日本にギャンブル依存症が多いのか」つまり成立要因として
 
 ・我が国のギャンブルの射幸性の上昇
 ・資金獲得(借金)のしやすさと、市街・郊外に遊技場が普及したことで
  日常的にいける
 ・娯楽・ストレス解消にギャンブルを使う人の増加  の3点があげられ

「わが国のギャンブル依存の現状と課題」は

 ・海外と桁違いのギャンブル依存症の有病率
  (市民社会の日常に根付いたギャンブル)
 ・ギャンブル依存症への理解不足
  (本人・社会・専門家の否認)
 ・治療対応できる機関の人材の圧倒的不足
 ・当事者グループ(GA)や家族会(ギヤマノン)支援のマンパワー不足

というようにまとめられています。

またこの報告書では「ギャンブル行動も、脳の病的な機能は、薬物依存と同じ
であり、薬物依存症と同様の症状を有している」ということ、さらに
脳画像研究の分野でも薬物依存患者との共通点があることが指摘されていて
これはかなり画期的な見解のように思います。

日本の依存症への認識や理解や対応が、欧米に比べて半世紀以上遅れていることは
このブログでも何回も何回も書いてきました。
アルコール・薬物・ギャンブルに加えて、この数年はネット依存の問題も
急速に増加し、深刻になりつつあります。

ネット依存の中でも、オンラインゲーム依存は、課金の問題が加わるので
ギャンブル依存症との類似が指摘されていますし
市民生活の日常に根付いているという点では、ネットは、ギャンブルよりも
さらに幅広い年齢の人々の、さらに身近にあり
娯楽・ストレス解消がネットというところも似ています。
しかもネットの依存については、相談にのってもらえる機関や家族会といったものもなく
精神保健福祉センターでも「国の診断基準がないので」と言われるような現状で
私が、ダンナのパチンコ依存の原因も対処の方法もさっぱり分からず
まさに途方に暮れていた10年前とほとんど同じような状況なのだと思います。

薬物にしても、松本先生などが、欧米ではとっくの昔に主流となっている
「処罰よりも治療を」という考え方をなんとか普及させたいと腐心されていますが
そもそも依存症というものへの認知や理解がまったく進んでいないために
相変わらず「薬物使用者は重大な犯罪者」的な風潮は変わりません。

専門家の方でも、アルコール・薬物・ギャンブルあるいはネットの依存は
厳密に言えばそれぞれ違うというような見解はあるのでしょう。
けれど学問的な定義よりも、今現在とてもたくさんの国民が依存の問題に苦しみ
失業や学業放棄、離婚や家庭崩壊や貧困、さらには借金や自殺や犯罪といった
数々の悲劇に見舞われている現状と
それによって将来国が抱えることになる膨大なリスクを考えれば
たとえ身動きできないほどのしがらみや利権利得があるのだとしても
今回のIR法案成立を契機に、純粋に医療という観点から
厚労省が管轄する精神医療の現場だけでよいので
依存症全般に対応するプロジェクトチームを作って
あらゆる依存症に対応できる体制を
(特にマンパワーの不足は、松本先生なども繰り返し提言されているところで
必要な人材の育成は、一朝一夕にはできません)
一日も早く作ってもらえたらと願わずにはいられません。
ジャパンマックなどのNPOや自助グループだけが受け皿になるには
資金面なども含めて多くの限界があり
昨今の多様化する依存症の現実からしても、すでに限界を超えているように思えるのです。

まさか、まさか「パチンコやスロットは遊戯であってギャンブルではないので
国のギャンブル依存症対策には含みません」なんていうトンデモな結末にはならないだろうという
かすかな希望的観測をしていますが、今までが今までですから何とも言えません。
あ~あ、厚労省に白鳥さんみたいな人(海堂尊さんのバチスタシリーズ)
が10人くらいいてくれたらなあ。ちょっとは何とかなるかもしれないのにと
最後はお決まりの妄想に浸るしかありません。


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