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癌と生きる 依存症と生きる

命がある限り希望を持つということ

依存症治療のシステムの必要性

2015-12-13 16:32:23 | 依存症

私が最初に、箒木蓬生先生の「ギャンブル依存とたたかう」などで
ギャンブル依存症という病気について勉強を始めた頃は
「ギャンブル依存症は治らない」「治癒ではなく回復をめざす」
「そのためにはGAなどの自助グループに参加することが最善」
というのが定説でした。

なぜGAかというと、アメリカで80年以上前に設立された
アルコール依存症者の自助グループAAの活動が、一定の成果を挙げていて
後から出てきた薬物やギャンブルの依存症に対しても
AAで提唱されている12ステッププログラムの考え方や方法を踏襲する形で
NAやGAといった自助グループが設立され
様々な依存症からの回復に向けての活動を行なっているからです。

正直に書きますが、最初にGAというものに参加して
「ミーティングハンドブック」を読んだ私の頭には
「?」マークがいっぱい点滅していました。

「無力」「自分を超えた大きな力」「(自分の理解している)神」
「祈りと黙想」「ハイヤーパワー」…って、何??

これらの自助グループが、特定の宗教に所属するものでないことや
もともとAA自体が、欧米ではわりと一般的なキリスト教的思想を
ベースにしたものなのだということはすぐに理解しましたが
それでは、明けても暮れても、隙あらばパチンコに行くことばっかり考えていて
あの電飾ギラギラで、人を催眠状態にするトランス系の大音量と
充満するタバコの煙にまみれ、何かに憑かれたように
目だけギラつかせて、パチンコの台に5時間でも6時間でも座っている
脳の中はただ金のことだけという、生きたゾンビのような人間に
12ステッププログラムが示している、形而上学的な言葉の数々が
たとえ一行でも理解できるとは、とても思えなかったのです。

その時点で、ダンナにGAの話をした時も
ダンナは全く無反応でした。
現在でも、還暦を過ぎた年での、介護というハードワークでは
毎日の仕事をつつがなく終えるだけでもう手いっぱいという感じで
仕事が終わってからとか、数少ない休みの日にGAに参加することなど
まったく思ってもみないようで
私が指示をしても、本人が納得しない限りあまり意味はないので
ギャンブル依存症についての情報は話しつつも、見守るしかありません。

私は「ジャパンマック福岡を支える会」というのに参加させていただいているので
年に何回か、セミナーの案内や会の活動報告を送っていただけます。
先日送られてきた活動報告で、現在ジャパンマック福岡で行なわれている
ミーティングへの通所者が、あと少しで50名になることを知りました。
昨年までは一ケタでしたから、少しづつ増えてはきていますが
福岡のような大都市圏でも参加者がこれくらいという現状なのです。

もちろん未だ依存症というものが、社会に全然認知されていないことが
一番大きな問題です。
病気それ自体もですが、どこに相談すればいいのか分からないという人も
多いのだろうと思います。相談できる機関や施設も絶対的に不足しています。
それに加えて「依存症の回復」=「12ステッププログラム」という道筋が
もうひとつ日本人には理解しにくい、無理があるようにも思えるのです。

こんなことを書くと、プログラムによって回復されている方や
回復を目指して日々努力されている方には激怒されるかもしれません。
私は最初にプログラムを知った時から、6年近くあれやこれや見聞きして
最近ようやくプログラムの本質みたいなものが理解できました。

たとえばギャンブル依存症であれば、ギャンブルをやめたこと
やらないことが回復ではなく、ギャンブルをせずに
しかもよりよく生きることができるようになることが回復なのだということ。

そのためにミーティングを重ね
12ステップをひとつひとつ理解して実行し
最終的には、他のギャンブル依存症で苦しんでいる仲間も
そういう生き方ができるように手助けをすること。

プログラムに書かれている言葉を、頭でただ「理解」するだけではなく
ミーティングに参加をし、仲間と助け合うという「行動」によって
自分も仲間たちもともに回復し続けること
プログラムによって目指す回復とは、そういうことなのだろうと思います。

このあたりのことが、自助グループや、カウンセリングやセラピーといったものが
まったく一般的ではない日本人が
なんの予備知識もなく自助グループに参加した場合
いきなり「言いっぱなしの聞きっぱなし」というスタイルでは
「何だかよく分からない」「これで良くなるとは思えない」という印象になり
持続しない、定着しない一つの原因になっているように思えるのです。

偉そうなこと言って、お前はギャマノンにも参加してないじゃないかと
怒られそうですが、あちこちちょっとづつ顔を出して経験した印象でも
たとえば、ジャパンマックのような回復施設の施設長さんやスタッフさん
GAやギャマノンで、参加者の相談に乗ったり、運営のお世話をされているような方たちは
確実に回復のレールに乗られているのだなということが分かります。
12ステップによる行動をつづけてこられた結果としての回復です、

ジャパンマック福岡の会報によると、依存症からの回復をめざしておられる
通所者の半分くらいは、病院や福祉関係からの紹介によるもののようです。
自助グループやミーティングは
誰かが誰かに指導をしたり、教えたり、命令したりする場ではありません。
普通の人が考える「治療」というイメージとはずいぶん違います。
けれど、最初に医療機関の専門家によって
自助グループの意味や効果をていねいに説明してもらえていれば
戸惑いや拒否反応はいくらか少なくなるのではないでしょうか。

医療機関にも、自助グループを推奨されるところもあれば
「認知行動療法」などで対応されるところもあります。
ただ何回も書いていますが、自助グループにいけば
あるいは医学的な治療を受ければ
すぐに治るとかなんとかなるというものではありません。

近年依存症の種類もどんどん増えつつあり
青少年のスマホ依存、ネット依存の問題も日々深刻になっています。
個別の依存症が、それぞれバラバラに対応する次元はとっくに超えていると思います。
まずは「依存症」という大きなまとまりで
医療関係の人たちや、相談機関、自助グループなどの相互の連携や協力が
絶対必要な段階に来ていると思います。

依存症のメカニズム自体完全に解明されているわけではないので
現時点で100%効果のある治療法が確立されているわけでもありません。
ですからガンの話でもありがちな
「あれはだめ」「これしか効かない」というような批判や対立ではなく
当事者や家族に、可能な限りの有効と思える情報を提供し
それぞれが、自分たちに最善の方法を選択できるようにしていただきたいです。

自助グループや12ステッププログラムとはどういうものなのか
なぜ依存症からの回復にそれらが有効とされているのか
自助グループやプログラムで対応するのは難しいと思われる
スマホ依存などについては、どういう方法があるのか
そのあたりを本人や家族に、医療機関やカウンセラーさんを介して
もう少し分かりやすく丁寧に説明してもらえるようなシステムが
一日も早くできることを心から願っています。





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珍しくアクティブ

2015-12-03 18:10:18 | 社会・生活
10月の下旬から11月にかけて
珍しく幾つかイベントが入って
PCから遠ざかっていました。

まず10月の後半に、FM主催のライブがあって
娘に誘われて、聴きに行きました。
1996年に公開された映画「スワロウテイル」
「リリイ・シュシュのすべて」や「花とアリス」など
多くの作品がある岩井俊二監督の初期の映画です。

その映画で、CHARAさんがボーカルの
イェンタウンバンドという架空のバンドが登場したのですが
その幻のバンドが今年復活し、福岡でライブがあるというので
これこそ、生きている間に聴けるのは
これが最後のチャンスだろうと、聴きにいくことにしました。
生で聴いたCHARAさんの「あいのうた」や「MY WAY」
素晴らしい音楽に触れた瞬間というのは
「ああ、もうこれで思い残すことはないわ」というくらいの勢いです。
あの、全身の細胞が震えるような感じというのは
やはりCDでは味わえない、ライブならではの感動です。

そして、待ちに待った「ハーモニー」の公開。
こちらも、娘が付き合ってくれました。
家庭も仕事もあって忙しい娘を何回も駆り出すのは気が引けるのですが
なにしろアニメ映画なので
還暦のおばさん(おばあさん?)が一人で観るよりは
アニメ好きの娘に、仕方なく母親が付き合ってるという構図のほうが
まだしも絵になるような気がしたもので。

それから一日置いて
去年一緒に原鶴温泉に行った子育て仲間。
今年は、熊本と宮崎から福岡に来てくれての博多女子会になりました。
よく晴れて、あったかで
ちょうどホークスの優勝パレードの日だったので
博多駅からキャナルシティ、天神と、博多の街は大賑わい。

博多駅の屋上にある「つばめの杜広場」からスタートして
のんびりおしゃべりを楽しみながら
櫛田神社からキャナルシティ界隈を散策しました。

子育てをしていた頃は、出かけても
子どもたちに気を配りながら
(というか、くもの子を散らす状態の子どもらを
怒鳴り、叫び、おっかけるというドタバタ騒ぎ)だったので
本当に長い付き合いなのですが
四人で、こんなに優雅に散策を楽しんだのは、おそらく初めてのことです。

私を除いた三人は、それぞれ親御さんの介護を抱えていて
つくづく人生はいくつになっても楽になるわけではなく大変だなと
心から思います。
ダンナのギャンブル依存症の問題を抱えた
私だけが特別に大変というわけではなく
誰もが、いくつになっても厳しい現実と向き合って
それでも一生懸命に生きています。
若いうちは分からないのですが
この年になると、それがつまりは生きるということなのだろうと思います。

ずいぶん前に、一度ブログに書いたような気がしますが
斉藤史という歌人の

「おいとまをいただきますと戸をしめて
   出ていくやうにゆかぬなり生は」 という歌を

また改めて思い出しました。

こんな具合で、先月は、私にしては
珍しくアクティブな時間を過ごしていました。
でもブログが滞っているのは、それだけではなく
原因は、先日導入した録画のできる新しいテレビ。

「これちょっと観てもいいかな。でもレンタルのはもったいないな」
と保留にしていた映画を、次から次へと録画しまくり
ヒマさえあれば映画を観ているという。

スズシロさんの「ほんとねこ」という漫画で
無印に「人間をだめにするソファー」というのがあることを知りましたが
まさに「人間をだめにするテレビ」の恐ろしさを痛感しています。


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我が家の新世紀とアナログな生き方

2015-11-17 15:40:32 | 社会・生活
ケーブルTVを導入して
20年以上になります。
ものすごく貧乏だったのに
せっせとケーブルの利用料を払い続けたのには理由があって

1 家にPCを導入した1990年頃
  プロバイダーをNTTにしたら電話料が凄い上に、接続の速度が遅かった

2 子どもたちが、小学校から高校まで音楽漬けだった

3 映画がいろいろ見れた からです。

当時はケーブルの音楽チャンネルはかなり充実していて
メジャーやインディーズを問わず
洋邦のたくさんのミュージシャンのライブが生放送されていて
しょっちゅうお金がかかるライブに行ったり
映画館に気楽に映画を見に行けるような状況ではなかったので
ケーブルTVというのは、私としては最善の選択だったわけです。

何度も見たいと思う映画やライブはその都度ビデオに録画していました。
だから去年引っ越す時には、本も多かったのですが
ビデオも200本くらいはありました。
ただし肝心のTVは、ケーブルでアナログ変換ができたこともあって、ブラウン管TVのまま。

今年9月になって、やっとこさ液晶TVに替えることを決断し
ちょうどケーブルTVからチューナーの切り替えのお勧めがきて
録画機能付きのチューナーというのがあったので
これだと録画用の機器を購入する必要がありません。
というわけで、もはや20世紀の遺物ともいえる
ブラウン管TVとビデオにお別れして
我が家にも遅まきながら21世紀がやってきたというわけです。

裏番組でも録画ができるので
録画リストはあっという間に
「エイリアン」シリーズ4作、「プロメテウス」
「ダークナイト」「凶悪」「女優霊」
「ブラックホークダウン」などの
泣く泣くビデオを処分したお気に入りの映画や
「清須会議」「MOZUのスピンオフドラマ」
「メンタリスト」「スコーピオン」といった
未見の映画と視聴中のドラマで埋まりました。

さすがに自分の観たいものばかり撮るのは後ろめたいので
ダンナのシフトが夜の時は、後で観れるように
野球の「日本シリーズ」とかラグビーの決勝なんかもとりました。
でもスポーツは基本見終わったら即消去しますが(笑)

「エイリアン」は1作目を観たのは…35年も前なんですね。
その後「未知との遭遇」を観ていて
不覚にも居眠りしてしまい、SFは合わないのかと
長年敬遠していたのですが
伊藤計劃さんとの、人生を大きく変える出会いがあり
(今さら変えてどうする、と突っ込まないで)
更に「第九地区」「チャッピー」の、ニール・ブロムカンプ監督が
「エイリアン」の続編を撮るというニュースが出て
ここへきてあわてて「エイリアン」シリーズを制覇したのですが
もしかしたら製作中止かも。

第1作目の「エイリアン」を撮ったリドリー・スコット監督が
「プロメテウス」の続編を撮るらしいという情報との関連も
取り沙汰されていますが、真相はよく分かりません。

アメリカでは、映画を公開する前に
試写会でアンケートを取って、例えばお客さんがエンディングに不満だったら
そこだけ撮り直すといったことが行なわれているとは聞いていましたが
先日「ひるおび」で「アメリカでは、映画にも保険がかかっている」
という話を耳にしました。
もしもその映画が当たらなかったら、保険で費用を払い戻すのだそうです。

12月の映画界は10年ぶりに続編が作られた
実写版の「スターウォーズ」一色になりそうですが
今のアメリカ映画界が過去のヒット作の続編に依存しているのは
どうやらそのあたりの事情もありそうです。
これはTVドラマや漫画の人気だけに依存して
映画を作ってはコケる日本の映画界も似たり寄ったりのような。

ホラーとSFばっかり観ているような私でも
ダンナとご飯食べながら観る時は、普通の映画も観ます。
「鍵泥棒のメソッド」とか「超高速参勤交代」なんかは
コンパクトにとてもよくできていて
上質の笑いがあって面白かったですが
どちらもTVドラマの映画版でも漫画原作でもありません。
地道に探していると、そういう良品に出会えることがあります。

自分の実感として、病気が少しづつ少しづつ進行しているということは
自覚しています。
それでも科学の力を借りて、がんと闘おうという気持ちは
今でもあまりありません。
(家族の希望があれば、許容できるものは受け入れるつもりです)
その代わりに、可能な限りぎりぎりまで普通の生活を続けようという
強い意志はあります。
毎日自分で買い物に行って、自分が食べれそうなものを作って
とにかく「おいしくご飯を食べる」が、毎日の健康のバロメーターです。
そして観たい映画を観て、読みたい本を読んで、好きな音楽を聴いて
メンタル面で免疫力を補強します。
とてもアナログなのですが、これだけ科学や医学が進化した時代に
あえてアナログに生きて死ぬこと、それも一つの選択なのです。



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「ハーモニー」来週公開です

2015-11-07 09:11:06 | 伊藤計劃
このブログで、伊藤計劃さんについて
書いた記事へのアクセスが案外多いことにちょっと驚いています。

当初の予定では「屍者の帝国」が10月公開
「虐殺器官」が11月、「ハーモニー」が12月と
年内に三作品すべてが公開されるはずだったのですが
製作会社の事情により「虐殺」の公開が延期になり
来週11月13日(金)から「ハーモニー」が繰り上げて公開されます。

実は私が、伊藤計劃という作家さんを心から「これはすごい」と思ったのは
この「ハーモニー」を読んだ時でした。
とても、簡単な要約で説明できるようなお話ではないのですが
小説の表現をお借りして要約します。

「半世紀昔<大災禍>によって、世界中に核弾頭が落ち
放射能によって、癌や未知のウイルスが蔓延し
人類が生存の危機に直面したことで
世界は、政府を単位とする資本主義的消費社会から
構成員の健康を第一に気づかう生府を基本単位とした
医療福祉社会へと移行した。

すべての人間は大人になるとWatchMeという個人用医薬情報システムを
体に埋め込み、体内の病原をやっつけるメディモル(医療分子)を
精製し、どんな病気でもたちどころに治すことができる。
肉体や精神の健康を維持するのに有害とみなされたものはすべて排除され
人々はお互いを慈しみ、支えあって
完全に調和のとれた理想の社会を実現させていた」

「ハーモニー」はそんな社会を拒絶し、NOを突きつけた三人の少女たちの物語。

核戦争の結果、人類が絶滅の危機に瀕しているという状況は
すでに1968年に刊行された「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」の時代から
たくさんの小説や映画やアニメ、漫画で使われたモチーフです。
テクノロジーが、全ての人間の夢や希望を実現し
あらゆる人間が平和で幸福に暮らせる未来が訪れるという幻想は
おそらく核兵器の登場で、大きく変貌したのだと思います。

一部の人たちは「これは実はとんでもないことだ」ということに気づきました。
核兵器のみならず、すべてのテクノロジーが
人間にとって、実はとんでもないものなのではないかと考えていて
伊藤計劃さんの小説もその延長線上にあります。
けれど例えとんでもないものであるにしても、それがなかった時代や社会に
時間を巻き戻すことはできません。
とても大きな枠組みでのセカイは、まさに
「どうしようもない」ものだということを描いているのがSFなわけです。
「A.I」や「猿の惑星」では、人類は絶滅しちゃいますし
今年私が激ハマりした「チャッピー」では
「もう、みんな人間やめちゃって、メカになって
幸せに暮らそうよ」という、やりっぱなしの結末です。
けれども「人間とはなにか」を問うているという一点では共通しています。


一番最初に「ハーモニー」を読んだ時は
自らが癌という病を得ている状況で、こういう小説が書けるという
その精神力に仰天しました。
けれどそれはとても表面的な理解の仕方で
伊藤さんの小説や、映画について書かれたもろもろの文章を読んでいくにつれて
伊藤さんの思考を構成している、ものすごく大量の要素に愕然としました。

私がお粗末な語彙や薄っぺらな知識で、伊藤さんはこういう人とか
伊藤さんの小説はこういうものなどと書いたら怒られそうです。
それでも私がしつこく伊藤計劃という作家と作品について書いているのは
特に、若い人たちに、こういう人がいる、こういう世界がある
ということを知ってほしい、気づいてほしいからです。

入り口は伊藤計劃という作家でも、彼の周りに広がる世界は広大です。
伊藤さんが何回も読んだと書かれていた「ニューロマンサー」を最近読みました。
SFの世界で、初めて電脳空間を扱った小説で
例えば「攻殻機動隊」や映画「マトリックス」へのつながりが分かります。
今自分たちが生きている世界が、どういう場所なのかを知ること
それを自分の言葉で分析し、どう向き合えばいいかを考えること
それはこれから長い人生を生きていくうえで、必ず何かの役に立ちます。
もちろん、アプローチの仕方はたくさんあります。
SFの世界というのは、その中の一つの選択肢です。イチ押しではありますが。

実は娘に「たぶんこれが一番読みやすいから」と
「ハーモニー」を貸した(押し付けた?)のですが
「難しかった」と返品されてしまいました。
けれどこの前一緒に観にいった「屍者の帝国」は
「時間が経ったら、だんだん良く思えてきた」とコメントされて、小躍りしました。
布教活動は、地道ないばらの道です。
けれど、今日はツイッターで
ジュンク堂に「SFフェア」のコーナーができたというのを見かけて
これまた「よっしゃ」と嬉しくなりました。
来てます、確実に来てます。時代はSFです(笑)

せめてあと三年早く伊藤計劃さんに出会えていたら
映画も本も、もっともっと観たり読んだりすることができたのにと思います。
そういう後悔をする人が、一人でも減るように、めげずに布教活動を続けます。

一つだけ前置きをすると、小説とアニメは別物です。
「屍者の帝国」もそうでしたが
アニメは、原作をまったく知らない人でも
それなりに楽しんで観れるような作りになっています。
それでもし興味が持てれば、小説へ
もっと興味が持てれば、脱出不能なSFの迷路へという重層構造です。

私の年になると、新しい情報を理解することが、日に日に難しくなりますが
若者の脳の機能やキャパは、ほぼ無限大です。
ですから、そういう時期にこそ、
人生が変わるような衝撃的な出会いをたくさんしてほしいと心から思います。



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依存症と脳の話(5)健康な脳を育てるには

2015-10-31 16:13:35 | 依存症

前のブログでは、ドーパミンとノルアドレナリンという
二つの神経系について書きましたが
もう一つ、人間の脳が正常に働くためにとても大切な働きをするのが
セロトニン神経系です。

セロトニン神経系は、脳の広い範囲に神経突起が伸びていて
姿勢の維持や四肢の動き、呼吸、睡眠、食欲、自律神経の働き
性ホルモン、そして認知や記憶などの様々な機能をつかさどり
さらに前頭葉へつながって、精神的な安定をもたらすかなめの役割をします。

セロトニン神経系がうまく作られて、きちんと働いている脳では
古い脳で、不安や恐怖などの情動が起きても
そうした様々な刺激による情報が新しい脳につながります。
新しい脳では、前頭葉が、それらの情報を統合して
論理的な解釈を、言語を使って作ることができ
不安を安心に変えて、いろんなストレスを解消することが可能になります。


もちろんこのメカニズムが出来上がるためには
乳幼児期、学齢期、思春期と、幾つかの段階があります。
そこで、まずは乳幼児期。
ここがセロトニン神経系が作られる最初の段階です。
どうすれば、このセロトニン神経系がうまく働く脳になるのか。

成田先生の説によれば、それは意外と
拍子抜けするくらい簡単なことらしいのです。

「朝は明るく、夜は暗く」

つまり赤ちゃんや幼児の脳では
セロトニン神経系を含む脳内神経系は
生まれる前にはまだ作られておらず、生後五年ほどの間に
毎日規則正しく入ってくる刺激によって作られていくのです。

なので、朝は明るく、夜は暗くという刺激を
規則正しく脳に与え続けることで
脳は活発にシナプスを作り
脳全体に広がるネットワークを作るのだそうです。

そしてもう一つは
「子どもに向き合う時は、いつも楽しく笑う」

これは、大人が子どもの前でいつも笑って楽しい気分でいると
子どもの脳は不安を感じることがないので
不安のない脳ではセロトニンが大量に作られる。
そうすれば子どもはいつも楽しい気分でいられるというわけです。
そうはいっても、大人には大人の事情というものがありますから
なかなか理想通りにはいかないのですが
要するに、あまり細かいことを思い悩まず
子どもの前では「取りあえず笑っとけ」ということなのだと思います。

そんな適当なと思われるかもしれませんが
セロトニン神経系の作られ方という、科学的な根拠に基づいた話ですから
決していいかげんな話ではないわけです。

このように、人間の脳の仕組みや働きを、科学的に理解することは
今乳幼児を育てている親御さんはもちろんのこと
学齢期、思春期の子どもさんと向き合っている
たくさんの親御さんにとっても、とても大切なことだと思います。

大人の都合で、昼夜逆転、夜遅くに幼児を連れ回すような親御さんもいます、
虐待とまではいかなくても
子どもに向き合う時は、何かを指示したり命令したりという人も。
そしていつも不安や恐怖を感じ続けると
子どもの脳はセロトニンが不足して、セロトニン神経系が働かなくなり
古い脳で起きる情動から、極めて短絡的で攻撃的になる
いわゆる「キレる」ということになるのです。
私が以前のブログで、青少年が起こす残虐な事件の背景には
多くの場合、幼児期の虐待が関係していると書いたのには
こういう根拠があります。

この、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンという神経伝達物質と
その神経系の働き方は、人間のあらゆる行動に大きな影響を及ぼすものです。
生育環境などの影響で、セロトニンが不足しているから
ストレスに弱い脳になったのか
それとも各種の神経系は正常に発達しているのに
許容の範囲を超える過剰なストレスにさらされたために
ストレスに弱い脳になったのか
これはまさにケースバイケースで
ひとりひとり違っているのではないかと思います。
さらにそこには、学齢期以降に形作られていく
前頭葉の機能が、これまたひとりひとり違っていることも
大きく影響していくものと思われます。

こうしたことが理解できたからどうというわけではないかもしれませんが
乳幼児に限らず、親は子どもにどう向き合うかの
指針の一つにはなるのではないでしょうか。

前回のブログと今回のブログは
成田奈緒子先生の「脳と心の発達メカニズム」を参考にし
それを要約する形で書いています。
専門的な部分も含めて、正確な全文を読まれたい方は
ネットで検索することができますので読んでみてください。




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