それでも僕はテレビを見る

社会‐人間‐テレビ‐間主観的構造

アニメ「SHIROBAKO」:すべての働く人のためのアニメ

2018-02-16 11:02:56 | テレビとラジオ
 このアニメを見て、とても胸が熱くなって、それで仕方なく、今このブログに書いている。

 2014年のアニメだそうなので、完全に今更なのだけれど、それでも本当に素晴らしいので、書いておかなくてはいけない。



 このアニメは、要するにアニメ制作の現場の物語である。

 主人公は、短大を卒業後にアニメの制作会社に入って、「制作進行」というポジションに就いた女性。

 主要な舞台は、主人公が在籍する武蔵野アニメーションという会社。

 アニメ作品をつくる際に起きる様々な問題や障害を克服しながら、主人公たちが成長する姿を描く。



 このアニメは、とにかく脚本がめちゃくちゃよく出来ている。

 何よりそこが凄い。

 基本的にこの作品は群像劇で、沢山の登場人物が主人公と同じくらい重要な役割で登場する。

 主人公の高校時代の部活仲間だった4人の女性たち。

 武蔵野アニメーションの様々な役職の人たち。

 それぞれの設定ががっちりしているだけでなく、わずかな台詞のやりとりで、各人物の心情とその変化が丁寧に描かれている。



 この物語には、あなたも、あなたの周囲の人も何らかのかたちで登場するに違いない。

 仕事をちゃんとしない人。

 必要以上にきっちりしている人。

 能天気な人。

 まじめだけど、仕事ができない人。

 職人気質で融通がきかない人。

 お調子者で、事なかれ主義な人。

 ムードメイカー。

 頼れる人。

 などなど。



 トラブルも「あるある」と頷ける

 要求された期日がめちゃくちゃ。

 納品されたものがぐちゃぐちゃ。

 こっちの言っていることを全然理解してくれない取引先。

 ちょっと優位だからって、強気に出てくる取引先。

 期日間際で、いきなり全部ひっくり返してくる取引先。

 やらかしてくる社内スタッフ。

 やらかしてしまう自分。

 などなど。



 でも、主人公の女性は、朝ドラヒロイン的な直向きさと爽やかさで、

 問題をどんどん解決して、見る者の心を癒してくれる。

 主人公が制作進行だからこそ、この物語は働くことの普遍的意味合いが明確になる。

 制作進行とは、アニメの制作管理を行う人のことで、作業を誰にお願いして、いつまでに回収して、どこに渡して、という細々としたマネージメント作業を一手に行うスタッフだ。

 この人たちがスケジュールを管理していて、とにかく方々に頭を下げて回る、きわめて厳しい作業なのだ。

 この物語では、制作進行が様々な職人気質の面倒くさいスタッフたちに作業を進めてもらいやすい環境をつくったり、つらい締め切りの間際にお尻を叩いたりする情景が何度も出てくる。



 このアニメでは、当然のことながら、アニメ内に制作途中の「アニメ」が登場する。アニメ内のアニメだ。

 それが本筋の物語と見事にパラレルな内容になっており、

 そのパラレル感がよく出来ている。

 視聴者は一緒にアニメ内アニメに感動し、本筋の物語にも感動できる。



 物語のフリも非常に丁寧だ。

 次の展開がよく映えるように、分かりやすくフリを仕掛けている。

 物語のヒールや引っ掻き回す役も、非常に分かりやすい。

 そして、ちゃんと納得できる、カタルシスのある結末に到達する。



 何重にもなっている物語の構造であるにも関わらず、視聴者が混乱したりすることなく、

 すべてすんなり飲み込めるようになっている、このシナリオの完成度は、恐るべきものだ。

 群像劇で、物語内に別の物語があるのに、ちゃんと主人公が輝き、周りの登場人物にも感情移入できる。

 まさに脚本の執筆の教科書にしたい内容。



 このアニメを見たら、エンドロールも丁寧に観察したくなる、というのも良い副次的効果だ。



 ただ、アニメ業界は完全にブラックで、その点にノータッチなのは仕方ないにせよ、

 見ている方で補完しなくてはいけないという点は、一応付け加えておきたい。

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