それでも僕はテレビを見る

社会‐人間‐テレビ‐間主観的構造

映画「intouchable」を見る

2012-06-30 00:11:04 | コラム的な何か
今日はみんなで映画を見た。

「intouchable」という映画だ。アレックスが持ってきた。

後から調べたところによると、邦題は「最強のふたり」というそうだ。

(この原題は「最強」の意味と「障害者=タブー」のダブルミーニングなのだろうか?)

映画がフランス語だったので、字幕が英語だった。

ラケルはもちろんのこと、ラテン系の人々は多少フランス語が聴き取れる様子。羨ましい。

英語の字幕は僕にはとてもありがたく、ほぼ完全に理解できた。

完全にリスニングだけだと、ジョークをちょくちょく聞き逃してしまう。



詳細は書かないが、ストーリーは事故で障害を負った富豪の(フランス白人)男性と、その介護をすることになったアフリカ系のフランス人男性の話。

出自も何もかも違うふたりが、階級を超えて(もちろん現代の話)分かり合い助け合う様はとても心動かす。

好感が持てたのは、アフリカ系の男性の描き方。

男性それ自体というより、彼の家族との関係や彼が生活する地域の雰囲気を最低限、ちゃんと描いていたように思った。

パリ郊外のスラム感、その閉塞的な雰囲気と、フランス上流階級の洗練されているが、同時にひどくスノビスティックな雰囲気の対比がとても素晴らしい。

主人公ふたりの演技がまたとても良い。

また音楽の使い方がピカイチ。ファンク音楽からクラシックまで上手に物語上に配置されている。とりわけアース・ウィンド・アンド・ファイヤーの楽曲でこれほど感動できるとは思わなかった。



ストーリーには後半、正直起伏があまりない。

もう一波乱あると思っていたが、そのままストーリーが終わった。

脚本として見るなら、少し物足りない。

また、それぞれの登場人物が抱えるドラマ(娘の件、弟の件、お母さんの件・・・)がもう少しダイナミックに描かれても良かったようにも思う。

ただ、物語に感情移入した側からすると、平穏に終わってくれて心底ほっとしている。

また、そもそも実話が元らしいので、そんなに極端に描くのもどうかという意見もあるだろう。

ともかく良い映画だった。

サッカー、サッカー、サッカー

2012-06-27 23:34:28 | イギリス生活事件簿
しつこいようだが、僕の家ではとにかくヨーロッパのサッカー大会が(この表現もどうかと思うけど)盛り上がっている。

昨日は、スペイン 対 ポルトガル

今日は、イタリア 対 ドイツ

無論、応援するのはスペイン、イタリアだ。

ドイツに至っては憎き敵として認識されており、非常に可哀そうでもある。

とにかく、財政改革などなどの件でドイツは恨まれているわけだが、そもそもイタリアもスペインもギリシャも身から出たサビなのであって、むしろドイツは彼らを支えてきたと言ってもいいのであって、なんとも不条理としか言いようがない。

だからこそ、なんだか笑えてしまう。



僕はサッカーには暗く、どちらかと言うと避けてきたと言ってもよく、日本代表のいかなる試合もほとんど興味がなかった。

しかし、このフラットでヨーロッパのこの大会を見ないというのは、まったく市民権はく奪に相当するような扱いで(そもそも外国人ですけど)、さすがの僕も見ないわけにはいかないのである。

このフラットで唯一、サッカーにそれほど興味を示してこなかったのがイタリア人のバレンティーナで、その点において僕はとても親近感を覚えていた。

ほか3人は完全にサッカー狂であって、全くもって、ついていけないのである。

しかし、イタリア対ドイツの試合に関しては然(さ)にあらず。バレは熱狂に熱狂を重ねる応援ぶりで、歌うは叫ぶは、とても大忙しの様子であった。

確かにこの試合はど素人の僕にとってすらも面白く、見ていて楽しかった。

村上龍は『悪魔のパス 天使のゴール』のなかでこう書いている。

「あんなに広い場所で、しかも足で、ディフェンスもたくさんいる中で、ボールが狭いゴールが入るなんてことは、そもそもが奇跡なんだ。

選手は奇跡を起こすために練習するし、観客はそのたった一回の奇跡に感動するためにサッカーを見るんだ。」



ゴールがあまりにも奇跡的であるため、そのプレイは本当に美しいものが多い。

パスからシュートに至るまでのほんの数秒の間、オフェンスもディフェンスも含め、どの選手もきわめて合理的に動きながら、しかし、ある瞬間、誰かがその合理性を超越する神がかり的なプレイを実現してしまうことによって、ボールはゴールに吸い込まれていく。

いつでも奇跡が起こるわけではない。

スペイン対ポルトガルの試合のように、最後の最後までその奇跡が起きず、欲求不満になってしまうことも多い。

けれど、その次の試合のたった一度の奇跡が、まるでそれまでの不満を解消してしまうのだから、とても不思議である。



僕はこんな少しの、ほんのわずかなイギリスでの経験をきっかけに、サッカー好きになろうとする自分を恐れているし、それだけは何としても避けたいと思っている。

そんな安易なかたちでサッカーに傾くなどというのは、サッカーファンに失礼なのであって、断じてそんなことは己に禁じるのである。

そういうわけで、これまでも、そしてこれからも僕はサッカー好きにならないのであるが、ただ、教養として少しずつ勉強するべきではないかと思っている。

ふるどら

2012-06-25 17:41:34 | 日記
昨日、指導教官らにフルドラフトを提出。

イタリア旅行の件を伝えつつ、日程を調整してもらえるかどうか相談。

基本的にヨーロッパは休暇に寛容だ。

勤勉は美徳と言えば美徳なのだが、日本人が考えるかたちとは大いに異なる。

提出したら急に緊張の糸がほどけてしまい、全く何も出来なくなる。

サッカーの英伊戦をフラットメイトと途中まで観戦し、延長線後半で離脱し、就寝。

今朝から重要な文献と思われる本を読み始める。

さらに、後輩が「これ、絶対に読んでください!」と言って置いていった新書を読み始める。

種類が違うので一緒くたにするのもなんだが、両方とも良い本。

日本人3人

2012-06-24 07:53:38 | 日記
昨日は日本人の博士課程の方2人と久々に食事。

Tさんと会うのは1か月ぶりくらいで、Mさんと会うのはもう1年ぶりになる。

おふたりともとても多忙ではあるが、僕ももうすぐイギリスを離れるので、どうしても会っておきたかった。

とにかくアカデミックの話はレベルが高い。

日本ではなかなか出来ない最新の研究をそれぞれやっているわけで、方法論から具体的なトピックまで沢山議論した。

そのあと、日本フェスなるものをちらっと見る。

なぜか会場でとてつもない気恥かしさを感じたのだが、その理由は分からない。

これが日本です!と胸を張りにくい内容だったのか、それとも、日本を紹介すること自体が気恥かしいのか。

その後、Tさんが別の用事で離れられたあと、Mさんとお茶。さらに色々お話をする。

帰宅後、再度博論の修正を行い就寝。ようやくフルドラフト・レビューのために提出できるところまで来た様子。

ちなみに、今日、待ち合わせ前にちょっと行った服屋さんで、マイルス・デイビスTシャツを発見してしまい、いてもたっていられず買う。1000円ちょっとなので良しとする。

ギリシャとドイツ

2012-06-24 07:42:33 | イギリス生活事件簿
ヨーロッパのサッカー大会、などと言うと、何だか子供の遊戯のようになってしまうが、とにかく今、欧州はサッカー(フットボール)の試合の話題一色だ。

ヨーロッパ各国がサッカーで試合を行い、チャンピオンを決める。

言わずもがな、強豪国ばかりの大会だ。



一昨日は、ギリシャとドイツの試合だった。

ギリシャやスペイン、イタリアのフラットメイトたちによれば、ドイツはEUの金融政策を支配しているという。

そして、EUはこれらの国々をいじめているのだという。

(まあ、いじめているかはともかく、ドイツが金融政策の中心にいるのは確かにそうだ。)

そこで今回の試合は、積年の恨みを晴らすものだ!と皆、言っていた。



ギリシャ人が僕らの家に大勢やってきた。

ラケルの友人のスペイン人も大勢やってきた。

僕らはこの日のパーティの準備をするために買い出しに行き、前日から大盛り上がりした。

大量のバーベキュー用のお肉、お酒。



だが、誰も口にはしないが、ドイツが強豪国であることは皆知っており、ギリシャが勝てる見込みはかなり薄いということも分かっていた。

試合当日、リビングはスペイン語とギリシャ語を話す人たちでごった返し、誰も英語を話そうしない。

けれど試合が開始され、ドイツが先制するが誰もうんともすんとも言わない。

しかし、ギリシャが一点返した時の叫びたるや怒号のようで、まるで勝利でも掴んだかのような歓声であった。

そして、ギリシャはドイツに負けた。

ギリシャはちゃんと財政改革してください、と僕は心のなかでつぶやいた。