それでも僕はテレビを見る

社会‐人間‐テレビ‐間主観的構造

はろうぃん

2011-10-31 19:25:34 | イギリス生活事件簿
新しいギリシャ人がとても真面目で今のところありがたい。

気になることといったら、イタリア人の彼女にすごく沢山電話していることくらい。

なんて彼女想いなんでしょう。

どんな彼女かは来週分かるそうです。

さっきそろそろ暖房を入れるかどうか、入れるとするといつ入れるかで相談。

男だけの空気を初めて知る。

思っていたより気楽。驚く。

生活圏に女性がいなかったことはなかったので、実は新鮮なのだと気がつく。

話している途中でドアをノックする音。

今日はやたら訪問者が多いと思ったら、ハロウィンの子供だった。

ここは一般の家屋が多い。つまり子供が普通にいる。

大学のなかだと子供が生活している場所はごくごく限られた場所しかない。

あれ?去年来たっけ?

まったく記憶にないし、この日記に何か書いた覚えもない。



今日はある件でひとつ前に進んだというニュースが来て、それは嬉しいニュースだったが色々な重圧もかかっている。

忙しいのだ、本当に忙しいのだ。

でも、そんなことも無いかのようにちょっとだけ疲れた笑顔を見せながら生活することを、僕はちょっとかっこいいと思っている。



日記のついでというわけではないが、昨日、あるアフリカの国出身の女性と会って話した。

Tさんの知り合いの知り合いらしい。

とても刺激になった出会いだった。面白い話が聞けたし、その人自身のパーソナリティがとても魅力的だった。

その結果、色々なことが頭に浮かんだのだけれど(研究の話)、それは不安と好奇心がない交ぜの独特の色合い。

誰かと一緒にコーヒーをゆっくり飲みながら、ほっとしたい。もうすぐ冬なんだから。

子守話「リンゴの木」

2011-10-29 18:37:55 | ツクリバナシ
僕の家の庭にはリンゴの木がある。

僕の家と言っても1年間、間借りしているだけだ。

近くの大学に通う学生が毎年毎年入れ替わり立ち替わりでこの家に住む。

いわゆるシェアハウスというやつで、メンバーの出自も様々だ。

間借りとはいえ、庭付き一戸建てというのは嬉しい。

その庭の片隅にリンゴの木がひっそりと生えている。



この家に住み始めてすぐの頃、リンゴの木に実がつきはじめたとき、はじめて木の存在を知り、なんだかとても嬉しかった。

実のなる木が家にあるなんて僕にとっては初めて経験だった。

僕は果物のなかでもかなりのリンゴ好きで、リンゴ狩りが家でし放題なんて、なんだか夢のようだった。

そういうわけで青いリンゴの実が赤くなるのをずっと首を長くして待っていた。

けれど、リンゴは一向に赤くならず、結局、赤くなる前に落ち始めてしまった。

「そうか!これは青リンゴの木か!」と気がついたときにはもう収穫期も終わりごろ。

急いで実を収穫しはじめた。

そしてリンゴが買い物袋いっぱい採れた。


沢山採れたリンゴだったが、やはり家庭菜園の限界。そのまま食べるにはやはり甘さが弱い。

そこでこの大量のリンゴを調理しにかかった。

まず、虫食いのない形の良いものを選ぶ。

それらの上の部分を切って芯をくりぬき、そこにシナモン、砂糖、バター、ラム酒を詰め込む。

オーブンへ入れて焼けば焼きリンゴの完成。

残りは煮リンゴにしてヨーグルトと混ぜたり、ジャムにして瓶詰めにしたりした。

フラットメイトにも食べてもらい、ずいぶんと好評のうちにリンゴの収穫期は幕を閉じた。



ある夜、僕は夢を見た。

気がつくと、リンゴの木の傍に僕は立っていた。

「こんにちは、お礼を言いに来ました。」

とリンゴの木は僕に言った。

「お礼?いや、こちらこそ、美味しいリンゴをありがとうございました。」

僕はリンゴの木にリンゴのお礼を言った。

「いえいえ、お礼を言いたいのはこちらの方です、僕の実をちゃんと食べてくれたのですから!」

リンゴはいやに嬉しそうだった。

「でも毎年、誰かかれか食べていたでしょう?」

「いえ、誰も食べてくれなかったのです!どうしてでしょう。せっかくこっちはリンゴの実をつけているというのに!」

確かに出入りの激しい貸し家で、庭のリンゴの木に気がついて料理するものなんて、なかなかいないかもしれない。

「それは残念でしたね。でも今年は沢山いただきましたよ。」

「そうなのです!だからお礼を言いに来たのです。」

リンゴは寂しかったのかな、と僕は思った。

「美味しくいただいただけで、もうお礼なんてそんな。」

「美味しく食べてもらえたなんて!本当に嬉しくて・・・。だから今日は黄金のリンゴをプレゼントしに来たのです。」

黄金のリンゴ?それは一体何だろう。

リンゴの木に目を凝らした瞬間、風景全体がぼやけていった。

そして目が覚めた。もう朝だった。

いつものように一日が始まり、一日が終わった。

何も特別なことはなく、黄金にもリンゴにも出会わなかった。

きっとただの夢なのだと思った。

リンゴを食べて、さらにお礼をもらうなんて虫がよすぎる。

たとえ誰もずっとリンゴの実を食べていなかったというのが本当だとしても。



それから一か月が経つか経たないかしたある日、僕はパーティに行くことになった。

パーティはひどく苦手でいつもなら行かないのだけれど、親友の誘いもあってその日はなんとなく行く気になった。

パーティには大勢の人がいて目まいを感じたが、それでも親友をつてにして少しずつその輪のなかに溶け込んでいった。

そのなかにひと際、僕の目を引く女性がいた。

笑顔がすごく素敵で、時折長く豊かな髪をゆらしている。

なんとなく知的で、落ち着いた雰囲気がある。

普段はシャイな僕だけれど、なんとなく彼女に惹かれて話しかけに行ってしまった。

なんたることだろう!女性と話すのが不得意な僕だけれど、この彼女とは信じられないほど話が弾んだのだ!

そして、僕らはパーティ抜け出し、会場になった家のベランダでふたりきりになった。

吸い込まれそうに夜の空には星が光っていて、ガラス窓を隔てて行われているパーティの喧騒がまるで嘘のように静謐さがあたりを包んだ。

このなんとも言えないロマンチックな瞬間が永遠に続けばと思わずにはいられなかった。

そして、ほんの少しだけお互いの生い立ちや人生観を話し合って、そしてまた黙った。

僕は彼女の方をじっと見つめ、そしてキスする心の準備をし、彼女の髪に手をやった。

彼女の耳にかかった髪をゆっくりとかきあげたとき、そこにキラッと光るものが一瞬見えた。

『何だろう?』と思いながら目を凝らして見えてきたのは、金色のリンゴのピアスだった。

そのキスがなんとなくリンゴの味だったのは、パーティで飲んだシードルのせいだけだろうか、それとも・・・。



おしまい

素晴らしい飲み会

2011-10-28 23:35:49 | 日記
今日はあるセミナーに出ようかと思ったが、やめてやはり研究を続ける。

この間の研究会でお世話になった先生に今回の論文を送っておいたら返信がきた。とてもありがたいレビューをいただく。報告前なのですごく助かる。

午後、図書館へ。リーディングに集中。

夜、後輩が小さなパーティ、というか飲み会をセットしてくれたので出る。

Tさんも連れて行きたかったが、すれ違いで都合合わず。

参加メンバーが素晴らしく刺激になる。

僕と奇跡的に同世代男性が2人。とても熱いものをもった素晴らしい男たち。嬉しくなる。

ほかの女の子たちも面白い。みんな、一様に元気になった様子。また絶対一緒に飲む。

こんな気分は本当に久しぶり。

夜はクリスが買い物に誘ってくれていたのだが、飲み会が先約で仕方なく断る。

エースもハロウィンパーティで不在で、クリスはひとり。少し申し訳ない。

今取り組んでいる課題は大詰めの一週間。

ギリシャ人も来るし、なんだか忙しくなるかも。

それが終わるとすぐにトンボ帰りで日本。

精神の調子は良い。前に進んでいれば、気持ちは上がるもの。

ろーりんぐ・すとーん

2011-10-26 19:40:06 | イギリス生活事件簿
カミラが引っ越した。

僕が住んでいる地域はなかなか部屋を見つけるのが難しいと言われているせいで、とにかく見つけたら即決しなくてはいけない。

カミラはこの家を見ないで決めて、そしてやっぱり色々問題を見つけたらしく、引っ越しの準備をすぐに始めた。

僕らは一緒に住みはじめてまだ一か月。

まだ一か月だから修正がきく。

彼女によると、とにかく場所が不便だということ。確かにそうだろう。

彼女が通っている大学は僕がお世話になっている大学とは違う。買い物にも不便だし。

ただ、このフラットは一年契約なので、代わりの住人を見つけるのが引っ越しの条件。

彼女はインターネットで見つけて、家に連れてきた。

次のフラットメイトはギリシャ人の男性。

僕と同じ大学の修士の学生で理系。

大学への道を紹介するべく、話しながら一緒に登校。

特に問題は見つけらなかったが、一緒に住んでみるまで分からないものだ。

ヨーロッパ人にはヨーロッパ人の付き合い方がある。

男性は男性同士の独特のルールがあるというか、日本人とはまた別のルールがあるというか、そのことを僕は少しだけ知っている。

次のフラットメイトを含め、僕ら4人はどういう化学反応を起こすだろうか。

考えてみると、男性だけで住むのは初めて。

初年度は女性ばかりのなかで過ごし、2年目は男性と女性が2対2。

だからといって、どれほど違うものなのかはまだ分からない。

女性がいるとありがたいのは、僕以外にも掃除してくれる人がいる可能性があること。

(ただ、カミラは小まめに掃除するタイプではなかったが。)

次のギリシャ人男性はきれい好きっぽいが、果たして掃除をどれだけするかは未知数である。



そんな今日この頃、このタイミングで隣りのエースがカミラの部屋に移動。

音楽をガンガンかけて、楽器を弾きたいということで移るという。

初めて部屋を見せてもらった。

沢山楽器があって、それを弾かせてもらう!

超楽しい。

そのあと、クリスと3人でなんとなく世間話をした。

僕らがキッチンミーティングをするのは久しぶりだ。

毎年毎年、一緒に住む人が変わることを不安に思っていた初年度とはずいぶん違う自分のメンタリティ。

新しい人と住む面白さのようなものを僕は少しだけ感じている。

自分もまた少しずつ変わるような気がするし、色んな国の色んな生活様式に触れることができる。

それに困ったことが起こっても、自分のなかで大切なエピソードになることを知っているから、実際、それほど嫌ではない。

すぐにそのストレスを忘れてしまうだけかもしれないけどね。

アイラー

2011-10-25 21:02:30 | 日記
アルバート・アイラーのサックスを聴いたとき、「なんじゃ、こりゃ?」と思った。

奇妙に潰れたような音色。

クールやホットという形容詞では言い表し難い、懐かしくどこか牧歌的で原始的な宗教の匂いのする演奏。

夜が更けたときに、お酒を飲みながら研究をしつつアルバート・アイラーの曲を聴けば、そこはほっとする自分の空間。

日曜の夕暮れ、少し早い夕食を少し豪華につくって食べる時に聴いてもいい。

最高の遊び場で、どろどろに溶けだしそうな意識。

ゆるやかに時間が歪曲していくなかで、新しいものを生み出そうとする苦しみが少し和らぐ。