それでも僕はテレビを見る

社会‐人間‐テレビ‐間主観的構造

District Nagatacho:どんな映画やドラマよりも!

2017-03-24 09:44:13 | テレビとラジオ
 昨日の国会、正直言って、最近のどのテレビ番組よりも面白かった。

 排外主義的なナショナリズムに心酔した狂信的おじさんが、国会で並み居る政治家たちと対決する舞台。

 何が面白いって、その筋書きだ。

 誰よりも自民党、何よりも首相が大好きだった、あのおじさん。

 多くの人に全体主義的精神を訴え、自己犠牲の美しさを唱えていた、あのおじさん。

 そのおじさんが、政府、与党、首相、大阪府に斬られた瞬間、国家権力と戦うおじさんに変身したのだ。

 似ているなあ、と思ったのが、映画District Nine。

 宇宙から飛来して難民となったエイリアンを徹底して弾圧し、攻撃していたお兄さんが、ひょんなことから攻撃対象のエイリアンになってしまい、他のエイリアンたちと協力して戦う羽目になる物語。

 本当に政権を守りたいなら、与党を守りたいなら、自分が犠牲になれば良かったわけで、でも結局、自分なりの正義と生活を守るために戦っているおじさん。



 当初、まともな答弁ができるのか疑問視する声もあったが、いざ国会で証人となるや否や、政治家を圧倒する弁論力。

 そのおじさんの信用を破壊するべく襲い掛かる与党の政治家たち。 

 焦った政治家たちの死に物狂いの攻撃!

 特に元警察出身の自民党政治家がすごい。まるで容疑者の取り調べのごとく、厳しい追及。

 これが国家権力の怖さなのか!

 偽証罪に問われることを武器に、おじさんを追い詰めようとする。

 しかし、おじさんにはもう失うものはない。愛する人に裏切られた悲しみ。愛する国家から追い詰められる恨み。

 おじさんは全力を振り絞って、政治家たちへ反撃していく。



 そのおじさんを取り巻く人々がまた趣き深い。 

 まず、首相夫人。彼女が素晴らしい。

 盤石な政権を混乱させるために存在するキャラクター。もしこれが脚本なら、「脚本のためのキャラクターかよ」と言われてしまうほど、適切な行動で物語の推進力になっている。

 最大の権力者の夫人でありながら、自由奔放に振る舞い、社会の福祉のために、みんなの幸せのために、極右のおじさんと会って応援してみたり、ヒッピーみたいな音楽家の政治活動家と対話してみたり、とにかく自分を犠牲にして、そして夫を犠牲にして頑張っている。

 その首相夫人に振り回されるのが、有能なキャリア官僚の女性。

 ものすごく有能な人物で、夫人のお目付け役を担わされる。

 ところが、首相夫人の奔放さはその想像をはるかに超え、遂には彼女のキャリアを破壊する事件まで起こすのだった。



 登場人物はまだまだいる。

 主人公であるおじさんのお連れ合い。

 おじさんよりも狂信的な人物で、自分の正義を疑わず、裁判にまでかけられてしまった過去がある。

 優しさと強さと狂気を兼ね備えた、影の主人公。

 この人が首相夫人と結びつくことで、ある事件が起きてしまうのだった!



 おじさんを助ける、ある「ジャーナリスト」。

 左翼運動家として知られていた、とあるジャーナリストが、皮肉にも極右であるおじさんを一番助けてくれる人物になってしまう。

 彼の本当の目的とは?

 その「ジャーナリスト」と戦う、極右活動家の女A。

 女Aはこのジャーナリストを長年恨んでおり、「騙されないでーーー!」と叫ぶが、誰も聞いてくれない。



 おじさんを裏切った登場人物として、もうひとり重要なのが弁護士S。

 彼は土地の売買に関して、裏のノウハウを持ったグレイゾーンの弁護士だった。

 いつものように建設会社に頼まれ、いつものグレイゾーンの仕事をこなしただけ。

 ところが、まさかそのグレイゾーンの仕事に世間の注目が集まるなんて!

 焦った弁護士Sはすぐに雲隠れして、おじさんを裏切るのだった!

 真実を知る弁護士Sを野党議員たちは懸命に追う!



 あとは、大阪の有象無象の政治家。

 いつものように仕事をしていただけなのに、なぜこんなことに!

 「口利き」とは言い方が悪いけれど、みんなの陳情を聞いて、忖度してもらいながら行うのが政治だったはず。

 実際、全然違法じゃないわけで。でも、すべてが世間の目にさらされたら、やっぱりまずいわけで。

 そこは、みんな忖度してよねーー、とと頭を抱えながら、世間の関心が全部首相夫人に集中すればいいと、夜な夜な星に祈るのだった。



 はたして、おじさんの運命は!

 首相夫人はどこまで奔放でいられるのか!

 つづく!!