僕のなかで妙に邦画ブームがきていて、観たけどここに感想を書いていなかった2本の良質な映画についての感想をまとめて書こうと思う。
僕はつくづく映画素人だ。知識ゼロだ。ひどい。
だからこそ、ここで映画を考える練習をしたい。
1、天然コケッコー:みんな大好きなファンタジーの田舎
マンガ原作だそうであるが、僕は全く読んだことが無い。割合に高いこの映画の評判は前から聞いていた。
山下監督の他の作品では「リンダ・リンダ・リンダ」を見たことがある。大学生になったばかりのときに、映画館に友達と観に行った。僕の大好きな作品のひとつ。
「リンダ×3」は同時期に公開された「スウィング・ガールズ」とストーリーはすごく似ているのに、僕の心には「リンダ×3」だけが残っている。映画の良し悪しとはそういうものかもしれない。
脚本の渡辺さんの作品は「メゾン・ド・ヒミコ」を観たことがある。これは僕にとっては最も好きな映画のひとつ。マイノリティの老後をこんなに上手に物語にできることに衝撃を受けた。
渡辺さんは2010年にかなり話題になった「その街のこども」でも脚本をつとめられており、その映画も「何としても観なくては」と思っている。
「天然・・・」は過疎化した田舎の小・中学校(一緒になっている)の子供たちの生活を描いた物語。ストーリーの中心は、中学三年生の男女。女の子はその町で成長してきた子であり、男の子は東京から引っ越してきた子である。
このふたりの甘酸っぱい関係は魅力的。キャストも素晴らしい。
中学生くらいの男の子の嫌なところも、かわいらしいところもたっぷり描かれている。
嫌なところをしっかり描いたところに非常に好感がもてた。
この物語は田舎をとても純粋なものと捉えており、そこで育ったという設定のヒロインは必然的に純粋なものとして描かれる。
田舎のほのぼのとした感じと、ヒロインの天然ぶりが、この映画の重要な魅力だ(ファンタジックな魅力)。
ほかの子供たちも生き生きしている。子役の使い方が上手な監督さんは一流という説もあるが、本当にそう思う。
レイ・ハラカミの音楽もさすが。これぞ映画音楽。くるりの主題歌も最高。
気になったことはほんの少しだけ。
田舎の描き方だ。
田舎ってそんなに良いものかな、と思った。
僕の知っている田舎はこんなんじゃないよ。
郵便屋さん(しげちゃん)のあのねっとりした気持ちの悪さ。あれが田舎。
あそこは非常に良かった。あれこそ田舎。
田舎の嫌な部分をすべて背負っているのが、あの郵便屋さんだった。
田舎でも普通に殺人事件が起きるし、性的にはむしろ無秩序だったりもする。
おせっかいなおばさんや、おじいさんが本当に結構いるし、そこの政治を動かしている人たちの不合理さは都会のエリートでは考えもつかないほどだ。
分かっている。この映画はそんなものを描く映画ではないと。あれはあくまでファンタジーなんだと。
そして、あの郵便屋さんを登場させた以上、田舎の嫌な感じはもう十分描いただろうと。
そうだね、そうだと思う。そういう意味でこの映画は非常に気配りの行き届いたものだったと思う。
2、歩いても歩いても:どこにでもいる家族のリアルなホラー映画。
この映画は多くの人が思ったとおり、ある種のホラー映画である(笑)
物語は、老夫婦の大きな家が舞台。大きな事件は何も起きない。しかし、とにかく怖い。
久し振りに帰ってくる、娘夫婦と息子夫婦。
親や兄弟が抱える葛藤、すれ違い、強烈すぎる愛情が静かな物語のなかでギシギシ音を立てて、観客に人間の怖さを伝えてくる。
特に怖いのが、樹木希林。
昔死んだ長男への愛情が、その死の原因をつくった人間への強烈な復讐心に変わっている。
同時に次男への愛情によって、彼女はその妻(と連れ子)を「やんわり」と排除しようとする。
未だに忘れていない旦那の浮気への怒り。あてつけのように昔話を語る優しいおばあちゃん(笑)
これらは優しくて、おっとりしたおばあちゃんの端々に見える(観客から見ると)狂気の部分だ。
しかしこれは現実にある人間の狂気だ。
僕も目にするし、あなたも目にしたことがあるはずだ(女性の二重性と憎悪をはじめて知ったときの僕の記憶がいくつか蘇ってきた)。
愛情がある限り、人は誰かを憎むのだろうか?
悪人は誰にとっても悪人なのではなく、ある人にとっては最高の愛情を注いでくれる人なのだ。
登場人物がほとんど戯画化されていないがゆえに怖い。
唯一ディフォルメされていたと言えるのは、長男の死に関わった青年くらいだろうか(あのシーンは痛々しかった・・・)。
彼がディフォルメされ、その後のお爺さんの心情吐露がストレートだったために、若干白けそうにもなったが(それまでの抑制の利いた演出とかなり違った印象を受けたため)、しかし踏みとどまった。
人間の嫌な部分が静かに、しかし濃厚に描かれているこの映画において、観客にとっての唯一の救いは、YOUの淡々とした演技だ。
彼女の自然でさっぱりした演技が、静かな物語の背後に潜むどろどろしたものを、若干和らげてくれる。
彼女のセリフをすべて他の女優が演技した場合を脳内でイメージしてみたが、それはそれは恐ろしかった。
脚本には全く無駄がない。
説明的なセリフは最後の最後のナレーションのみ。
メッセージもずっしりと伝わってくる。
音楽は全く記憶にない。あっただろうか。最高。
僕はつくづく映画素人だ。知識ゼロだ。ひどい。
だからこそ、ここで映画を考える練習をしたい。
1、天然コケッコー:みんな大好きなファンタジーの田舎
マンガ原作だそうであるが、僕は全く読んだことが無い。割合に高いこの映画の評判は前から聞いていた。
山下監督の他の作品では「リンダ・リンダ・リンダ」を見たことがある。大学生になったばかりのときに、映画館に友達と観に行った。僕の大好きな作品のひとつ。
「リンダ×3」は同時期に公開された「スウィング・ガールズ」とストーリーはすごく似ているのに、僕の心には「リンダ×3」だけが残っている。映画の良し悪しとはそういうものかもしれない。
脚本の渡辺さんの作品は「メゾン・ド・ヒミコ」を観たことがある。これは僕にとっては最も好きな映画のひとつ。マイノリティの老後をこんなに上手に物語にできることに衝撃を受けた。
渡辺さんは2010年にかなり話題になった「その街のこども」でも脚本をつとめられており、その映画も「何としても観なくては」と思っている。
「天然・・・」は過疎化した田舎の小・中学校(一緒になっている)の子供たちの生活を描いた物語。ストーリーの中心は、中学三年生の男女。女の子はその町で成長してきた子であり、男の子は東京から引っ越してきた子である。
このふたりの甘酸っぱい関係は魅力的。キャストも素晴らしい。
中学生くらいの男の子の嫌なところも、かわいらしいところもたっぷり描かれている。
嫌なところをしっかり描いたところに非常に好感がもてた。
この物語は田舎をとても純粋なものと捉えており、そこで育ったという設定のヒロインは必然的に純粋なものとして描かれる。
田舎のほのぼのとした感じと、ヒロインの天然ぶりが、この映画の重要な魅力だ(ファンタジックな魅力)。
ほかの子供たちも生き生きしている。子役の使い方が上手な監督さんは一流という説もあるが、本当にそう思う。
レイ・ハラカミの音楽もさすが。これぞ映画音楽。くるりの主題歌も最高。
気になったことはほんの少しだけ。
田舎の描き方だ。
田舎ってそんなに良いものかな、と思った。
僕の知っている田舎はこんなんじゃないよ。
郵便屋さん(しげちゃん)のあのねっとりした気持ちの悪さ。あれが田舎。
あそこは非常に良かった。あれこそ田舎。
田舎の嫌な部分をすべて背負っているのが、あの郵便屋さんだった。
田舎でも普通に殺人事件が起きるし、性的にはむしろ無秩序だったりもする。
おせっかいなおばさんや、おじいさんが本当に結構いるし、そこの政治を動かしている人たちの不合理さは都会のエリートでは考えもつかないほどだ。
分かっている。この映画はそんなものを描く映画ではないと。あれはあくまでファンタジーなんだと。
そして、あの郵便屋さんを登場させた以上、田舎の嫌な感じはもう十分描いただろうと。
そうだね、そうだと思う。そういう意味でこの映画は非常に気配りの行き届いたものだったと思う。
2、歩いても歩いても:どこにでもいる家族のリアルなホラー映画。
この映画は多くの人が思ったとおり、ある種のホラー映画である(笑)
物語は、老夫婦の大きな家が舞台。大きな事件は何も起きない。しかし、とにかく怖い。
久し振りに帰ってくる、娘夫婦と息子夫婦。
親や兄弟が抱える葛藤、すれ違い、強烈すぎる愛情が静かな物語のなかでギシギシ音を立てて、観客に人間の怖さを伝えてくる。
特に怖いのが、樹木希林。
昔死んだ長男への愛情が、その死の原因をつくった人間への強烈な復讐心に変わっている。
同時に次男への愛情によって、彼女はその妻(と連れ子)を「やんわり」と排除しようとする。
未だに忘れていない旦那の浮気への怒り。あてつけのように昔話を語る優しいおばあちゃん(笑)
これらは優しくて、おっとりしたおばあちゃんの端々に見える(観客から見ると)狂気の部分だ。
しかしこれは現実にある人間の狂気だ。
僕も目にするし、あなたも目にしたことがあるはずだ(女性の二重性と憎悪をはじめて知ったときの僕の記憶がいくつか蘇ってきた)。
愛情がある限り、人は誰かを憎むのだろうか?
悪人は誰にとっても悪人なのではなく、ある人にとっては最高の愛情を注いでくれる人なのだ。
登場人物がほとんど戯画化されていないがゆえに怖い。
唯一ディフォルメされていたと言えるのは、長男の死に関わった青年くらいだろうか(あのシーンは痛々しかった・・・)。
彼がディフォルメされ、その後のお爺さんの心情吐露がストレートだったために、若干白けそうにもなったが(それまでの抑制の利いた演出とかなり違った印象を受けたため)、しかし踏みとどまった。
人間の嫌な部分が静かに、しかし濃厚に描かれているこの映画において、観客にとっての唯一の救いは、YOUの淡々とした演技だ。
彼女の自然でさっぱりした演技が、静かな物語の背後に潜むどろどろしたものを、若干和らげてくれる。
彼女のセリフをすべて他の女優が演技した場合を脳内でイメージしてみたが、それはそれは恐ろしかった。
脚本には全く無駄がない。
説明的なセリフは最後の最後のナレーションのみ。
メッセージもずっしりと伝わってくる。
音楽は全く記憶にない。あっただろうか。最高。