それでも僕はテレビを見る

社会‐人間‐テレビ‐間主観的構造

世界の壁なのか

2011-01-31 17:59:52 | 日記
今日は知り合いの研究者(日本人)の発表があった。

しかし厳しい試合展開だった。

僕の嫌いなサッカーで例えると、前半日本代表は何とか相手からの猛攻をしのぐが、前半終了間際で一点決められる。

後半に入り、突如、相手の戦略が変わるとともに、全く相手の陣地までボールを運べない日本代表。

結局、後半で何点か入ってしまい、試合に負けたような感じ。

「これが世界の壁なのか・・・」という気分。

見ていて辛かった。非常に辛かった。単なる一視聴者に過ぎなかったが、他人ごとではないという気持ち。練習試合(事前のペーパー)は良かったのに・・・。



どういうわけか、まだ寒い日が続いていて、隣のジャニンは風邪ひきに。

彼氏のダンが教えてくれた。彼は一生懸命看病している様子。見ていて気分がいい。

他のフラットメイトも風邪には気を付けてほしい。

僕も結構疲れている。しかし少しずつ回復しつつある。

今日は大量に煮込みハンバーグを作った。良い出来。

生まれ変わり2

2011-01-30 19:17:00 | ツクリバナシ
僕がもらわれたのは、エミちゃんと、おばあちゃんの二人暮らしのお家でした。

まだ子犬だった僕とエミちゃんは、大の仲良しでした。

僕は毛がふさふさの真白で、おばあちゃんはよく「こういうまっ白い犬はね、次に生まれ変わるとき、人間になるんだよ」と言っていました。

エミちゃんは寝るとき、いつも僕と一緒でした。泣きべそをかいて帰ってきたときも、上機嫌で帰ってきたときも、さびしい夜もいつでも。



エミちゃんが成長するより早く、僕は大きくなりました。とても大きい犬で、近所からは「クマさんみたいだねえ」と言われるくらいでした。

自分で言うのもなんですが、僕はすごく利口な方で、近所の人にも可愛がられていました。

エミちゃんが大学生のとき、僕はもうかなりの歳をとってしまいました。

でも、エミちゃんはいつでも僕を散歩に連れて行ってくれました。

エミちゃんのお家は裕福ではなかったから、彼女は高校生の時も一生懸命アルバイトしていました。

勉強とアルバイトととても忙しかったのに、それでもエミちゃんが僕を構ってくれない日はありませんでした。

一生懸命勉強して入った大学で、エミちゃんは法律の勉強をしていて、将来は弁護士になるつもりだったみたいです。



大学生になってから、エミちゃんは初めて男の人と付き合い始めました。

ゼミの先輩だったそうです。

家に来た人はとても優しそうな人でした。

その人、最初は僕を見て怖がっていたけれど、段々慣れてきたみたいで、僕とふたりでいても大丈夫になって、よく撫でてくれました。

でも、その男の人とエミちゃんが仲良くなってから、少しずつ僕と過ごす時間が少なくなって、それでおばあちゃんと過ごす時間も少なくなって。

僕とおばあちゃんは、なんだか寂しい気持ちでした。




でもある日、おばあちゃんが急に倒れてしまったのです。

エミちゃんがいなかったから僕はワンワン吠えて人を呼んで、それでおばあちゃんは助かったのだけど、もうおばあちゃんにはそれほど時間が残されていなくて。

エミちゃん、とっても悲しそうでした。

「私、ひとりぼっちになっちゃったらどうしよう」っていつも言っていました。

とてもとても残念なことに、僕にもそれほど時間が残されていなかったのです。

僕は徐々に起きていられなくなり、日に日に弱っていきました。

おばあちゃんが亡くなった翌日、僕もとうとう神様に召される日が来ました。

その日、エミちゃんと彼氏がずっと僕の傍にいてくれました。

意識が朦朧とするなかで、僕は彼氏に「エミちゃんをどうぞよろしく・・・」と伝えました。

たぶん、彼氏には届かなかったと思います。人間だから。

それに彼氏もまだ若くて、降ってわいたような責任の重さに戸惑っているような様子でした。



僕が神様のところに行く直前、小さい頃のエミちゃんと、子犬の僕が遊んでいる姿が見えました。

僕を抱っこして眠るエミちゃん。僕を撫でながら学校であったことを話してくれたエミちゃん。一緒に散歩して僕がいつも守ってあげたエミちゃん。

僕はエミちゃんのことが大好きでした。

一人にしてごめんね、エミちゃん。どうぞ彼氏と仲良くね。僕も見守っているからね。忘れないでくれたら、いつでも。

もし、おばあちゃんの言うとおり、僕が、白い犬の僕が人間に生まれ変われるのなら、もう一度エミちゃんに会いたいです、と最後に神様にお願いして、僕は眠りにつきました。



「で、そういうわけで、今回生まれ変わって、またあなたの元に帰ってきたわけなんです。」

彼はそう言って話をまとめた。

彼女はその異常に具体的な話に驚くと同時に、少し感動して目に涙をためていた。

しかし、である。

「確かに話は興味深いけど、それが本当だとは、私到底思えないんだよなあ・・・。私、エミちゃんじゃなくて、サオリだし・・・。どうして私がそのエミちゃんだって思うの?」

彼女の名前はサオリであって、エミではなかった。だが、自称「犬の生まれ変わり」の彼はなかなかひかない。

「思い出したんです。本当なんです。嘘じゃないんです。匂いで分かるんです。エミちゃんの匂いなんだもん。だからきっと・・・たぶん。」

「たぶん、でしょう?でも、まあどっちでもいいわ・・・。最初に言ったように、私、彼氏がいるの。」

「またかぁ、あの時もそうだったんだよなあ・・・。先輩ですか?」

「だから、私、エミちゃんじゃないからね。」

彼女は笑ってそう言った。ここまで来ると、逆に面白い。笑うしかない。ネタだろ、本当はネタだろ。口説くためのウソだろ。彼女はそう思ったが、しかし猫の夢のこともあって無下にはできなかった。

サオリの彼氏は先輩だが、ゼミの先輩ではなく、バイト先の先輩だった。

万が一、自分がエミちゃんの生まれ変わりだとしても、今の自分は猫の生まれ変わりの自分を優先したい。だって、彼氏はその飼い主かもしれないわけだし、今のままで十分幸せなのだから。

それに飼い犬だったと主張されて、「はい、そうですか」と付き合うわけにもいかないから、結局、友達として連絡を取り合うのが妥当だろう。

「・・・そうですよね。僕もあなたとは付き合うっていう感じじゃないんですよねぇ。なんていうか、ファンというか。いや、元飼い犬というか・・・。」

「そうだよ。あなたはあなたで、自分の幸せを探しなさいよ。犬の生まれ変わりの女性とか、なんかいるはずじゃない?」

「いや、もう僕は人間ですから、犬の生まれ変わりにこだわる必要はないんで。」

生まれ変わりの話にこだわっていたのはお前だろ!とサオリは突っ込んだ。

それにしても、一体猿の彼はどんな話をしてくるのだろうか。

そして、キジはいつか出てくるのだろうか。

そんなことを思いながら、それがあまりにもバカバカしいと思いながらも、サオリは何となく、この数日のことを楽しんでいた。



おしまい

生まれ変わり

2011-01-29 10:42:55 | ツクリバナシ
「ええと、僕が今から言うことは、とても奇妙なことなんだけど、でも最後まで聞いてほしいのです。いいでしょうか?」

男の子は照れくさそうに、しかし神妙ぶってそう言った。

女の子は若干面倒くさいやつに引っかかってしまったという顔をしながらも、最後まで聞いてあげることにした。

男の子は純朴そうだったし、どこか憎めない感じだったから。

「あなたのことが好きです。」

そこまでは普通の告白だったのだが、

「その理由なんですが、」

彼は理由を言い始めた。

「僕はずっと前の前世で、あなたの飼い犬だったみたいなのです。」

女の子はあっけにとられた。好きだ、なぜなら前世で飼い犬だったから。聞いたことがない理由だ。

理由なら他にもあったはずだ。前世で恋人だったとか、前世で結ばれない兄妹だったとか。

なぜ犬なのか。人間ではなく、畜生ではないか。

「私と付き合いたいってこと?」

女の子は男の目をしっかりと見ながら言った。とても強い眼差しで。黒く長い彼女の髪が廊下の窓から入ってきた風でかすかに揺れた。

「いえ、そういうわけじゃないんです。飼い犬だったわけですから。」

大学は夏休みに入る間際で、閑散としている。その日常の空間のなかに、突如、妙な場が出来上がってしまった。

「じゃあ、私にどうしてほしいの?」

彼女の質問はまっとうだ。

「僕もどうしたいわけではないんです。基本的に友達になりたいんですが、何て言うか、それとも違うっていうか。でも、まずは友達からお願いします。」

彼の態度は曖昧だが、自分が飼い犬だったからと言って、今さら人間の関係なわけだからペットになるわけにもいかない。

「友達ねぇ・・・。友達って、ハイ今から友達になりましたってわけにはいかないからねえ。」

「ええ、そうでしょうね。でも、飼い犬だったわけですから。」

彼は確言した。しかし根拠は彼の頭の中にしかない。

「そんなこと言われても・・・。私は飼い主だったという確信、まだ無いからね!」

「とりあえず、今日はこのくらいにして、また今度食事でもどうでしょうか。具体的にどういう犬だったか、とかも話たいので・・・。」

そんなディテイルがあるのか、と彼女は思った。いずれにしても、この場を長引かせたくはない。不承不承、彼の言い分を受け入れ、その場を引き取った。




彼女はその夜、夢を見た。

自分が猫になっていて、飼い主の男性の膝の上でなでられながら眠っていた。

すごく温くて気持ちがいい。

この飼い主の顔はぼんやりしていたが、この人物が今付き合っている年上の彼だということだけははっきり分かった。

その映像はすごく懐かしくて、じんわり涙が出てきた。

しかし、彼女は猫なので「にゃー」しか言えなかった。本当は「ありがとう」と言いたかった。

起きたら涙で顔がぐしゃぐしゃになっていた。今日は彼に会いに行こうと彼女は決めた。




夜、彼女は年上の彼のところに行った。

ベッドのなかで彼に、自分の飼い犬だったと主張する若者の話と、今朝見た夢の話をした。

彼は笑いながら、彼女の髪を撫でた。

「君は猫みたいな人だから、確かに前世は猫だったのかもね。君の言うとおり、僕が飼い主だったとしたら嬉しいな。」

彼女も笑った。そして、もしかしたら、犬の話もあってるのかもなあと思った。

しかしそうだとしたら、猫以前か以後か分からないが、猫の生まれ変わりである自分が人間として犬を飼っていたということになるのか。

変だなあと思った。そして何だか笑えてきた。輪廻転生って本当にあるのだろうか。

いずれにしても、彼氏が自分の飼い主だったらいいのに、そして、ずっと一緒にいられたらいいのに、と思った。




また別の日、彼女はまたよく知らない男の子から告白された。

「あなたのことが好きです。」

彼女が黙っていると、彼は続けた。

「僕、前世、あなたが飼っていた猿だったみたいなんです。」

彼女は呆気にとられた。まさか犬に続いて猿か。

犬、猿、・・・キジ。

そして彼女は思った。

まさか・・・桃太郎だったのか・・・?


おしまい

言葉、記憶、不安

2011-01-29 10:05:07 | 日記
僕は事象も感情も何もかも、言葉にできないことが多すぎることに少し憤っている。

「大切なものはいつも目に見えない」としたら、それはきっと言葉にすらならない。

ただただ、それは「何か」あるいは「X」として刻まれる。

僕が不安なのは、そのことを忘れてしまうのではないかということ。

僕が不安なのは、それが嘘なんじゃないかと思えること。

僕が安心しているのは、そんなことすらきっといつか忘れてしまう、ということ。

文脈が変わるたびに、すべての記憶は皆、座っている場所を変えていく。

その瞬間、僕は僕でいられるのかという不安を、実は幼稚園の頃から抱えている。

言葉だけがその不安から遠ざけてくれるのに、それすら出来ないなんて。

その不安だけはどうしても忘れることがないのは、きっと「大事なことから目をそらさないように」、という神様のメッセージなんじゃないか、僕は思っている。

非日常の終わり、日常の続き

2011-01-28 10:33:09 | 日記
昨日はいわば、この卒業式週間のクライマックスでした。

去年は全く関わりの無かった卒業式ですが、今年は何かと関わりがありまして。間接的に体験したような感じです。

久し振りに、日本人の「元」留学生にたくさん会えましてね。

去年、それほど親しくなかった方たち、一回会っただけの方たちでも、何だかとても懐かしくて話していて嬉しくなったのです。

事実上、それは「一期一会」で、おそらく業界も住んでいる場所も違うから、もう会うことも無いのだろうと思います(もしかすると、ちょっとだけ重なるかもしれないが)。

他方、去年比較的多くの時間を共有した友達にも会えて。そういう人たちが僕の家に遊びに来るという場面もあったのだけど、まあ、大騒ぎでずいぶんと疲れました(・・・良い意味で)。

不思議なもので、そういう時間を過ごすと早くひとりになりたくなって。とても良いことです。この一か月は沢山集中して研究するのであります。

研究する喜びをまた思い出させてくれた一週間であり、同時に去年の思い出に浸った一週間であります。

そんな特別な日々のなかでも、クリスとふたりで行く買物は健在で、それは僕にとってやはり嬉しい日常です。

二年目は、イギリスの良いところも悪いところも体験する、わずかながら何かの「本質」に近づいている気がする年です。

人間を一生懸命観察しながら、僕はそれを研究に反映させていきます。僕の生活はゆっくりと続いて行きます。