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社会‐人間‐テレビ‐間主観的構造

「赤い公園に石野理子が加入」のニュースのことばかり考えている

2018-05-07 10:34:48 | テレビとラジオ
 仕事が忙しくて、書くエネルギーを全部そっちにもっていかれていた。

 GWは遊んだり休養したりできたので、ようやくエネルギーがまた、たまってきた。

 そんななかで聞こえてきたのが「赤い公園に石野理子が加入」のニュースだった。

 それからしばらく、僕はそのことばかり考えている。



 「赤い公園」は公園の名前ではなく、バンド名である。

 元々は女性4人のロックバンドだったのだが、昨年末、ボーカルの佐藤千明が脱退し、3人になっていた。

 赤い公園の楽曲は、独特の熱量がある。

 歌詞はかわいらしい一方で、情念に満ちていて、

 曲はポップである一方、どこか捻じれている。

 誤解を与えそうなイメージで言うと、ある意味で「エヴァンゲリオン」みたいな感じ。

 つまり、外見はロボットっぽいんだけど、実質的には、よく分からないグロテスクな生命体に、それらしいフォームを与えたみたいなこと。

 ひとつひとつの楽曲は凄まじい衝動や情念が基礎になっているものの、巧みなポップスの方法論で、きっちりと仕上がっている。



 絶妙なバランスなのは、楽曲だけではない。

 赤い公園の世界観は、ギターの津野米咲による作詞・作曲と、佐藤のゴージャスかつキュートなボーカルが混ぜ合わさることで、絶妙なバランスで成り立っていた。

 佐藤のボーカルの技術は凄まじい。キャリアを積むごとに、年々パワーアップし、現在、最高地点を更新している最中だ。

 彼女の声や歌唱は、時にイノセントな少女のようでもあり、時に妖艶な女性のようでもある。

 歌いあげ過ぎない一方で、過不足なく楽曲の情念も体現する。

 そのボーカルをギター、ベース、ドラムが有機的に混ざり、支える。

 特に津野のギターは変幻自在で、動きが複雑だ。

 正確には「津野文法」みたいなものがあって、それに沿ってコードなりリフなりを鳴らしている。

 それが年々拡張し、ますます自由になっている。



 こうしてメンバーが全員著しく成長して完成したのが、2017年のアルバム『熱唱サマー』だった。

 まさに名盤としか言いようがない、恐ろしいアルバムで、技術も情念もポップセンスも、すべてが過剰なのだ。 

 この過剰さゆえに、アルバムの香りを「良い匂い!」と言うのか、それとも「臭ッ!」と言うのかは、人それぞれだと思うが、

 僕は、誰にとっても聴けば聴くほど、味わいがあるアルバムだと思っている。



 この『熱唱サマー』の発表と同時に、ボーカルの佐藤の脱退が明らかになった。

 多くのJロックのリスナーたちが一体、赤い公園はどうなるのか興味津々で見ていた。

 そして、先日のロックフェスで、まさかの新ボーカル加入のニュースである。



 新ボーカルは石野理子。

 この間、惜しまれながら解散したばかりのアイドルネッサンスのメンバーだった人物だ。

 アイドルネッサンスは、アイドルのなかでも異彩を放っていた。

 何と言うか、青春のイノセンスを徹底追求したようなグループだった。

 だから、早期の解散は、すごく理に適っているのだが、ファンに与えた衝撃も凄まじいものだった。

 何せ、これから数年の間に大ブレイクしても、おかしくなかったからだ。



 そのなかで、一際力強い、芯のある、エッジの効いたボーカルで目立っていたのが、石野だった。

 石野は、普段の言動も思春期特有の危うさをはらんだ人物で、

 それは彼女の衝動や情念の強さをよく示していると、僕は解釈していた。

 石野の歌も表情も、危なっかしい言動も、すべてを含めてスター性があった。

 グループが解散すると知ったとき、多くのファンが石野の何らかのかたちでの音楽活動の継続を望んだ。

 彼女の才能は、埋もれさせるにはあまりにも惜しい!と。



 で、まさかの赤い公園への加入である。

 おそらく、日本のポップスをよく聴く人たちは、どちらの文脈もある程度知っていただろう。

 だからこそ、めちゃくちゃ衝撃だったのだ。

 そこがそういうふうにつながるのか!?という驚き。



 赤い公園のメンバーは20代後半で、石野は若干17歳だ。

 ある意味で、すごく良いバランスである。

 石野の可能性は、すさまじい。

 赤い公園の古参のファンのなかには、離れる人たちもいるだろう。

 その一方、新しいファンがどんどん増えるのも、明らかだ。

 石野の声は、赤い公園を敬遠していた層にも、一定程度届くだろう。

 そして、それが逆に佐藤千明の評価にもつながるだろうから、みんな得である。

 本当、小説よりも奇なり。

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