息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

クチュール仕立ての刺繍バッグ

2014-11-16 10:41:24 | 著者名 ら行
Lemmikko (レンミッコ)

ため息がでるほど繊細でゴージャス。
素晴らしい手仕事の集大成ともいうべきバッグは見るだけでもうっとりする。
その技法を丁寧に細かく解説してあるという、出会えてよかった一冊。

磨きぬかれたセンスと高い技術が前提なのだが、じゃあ手が届かないもの
ばかりなのかというとそうでもないのだ。
ごく普通の手芸店でも手に入る材料であったり、懐かしのリリアン編みであったり、
こんな使い方もあるんだ!
こんなふうにつくるんだ!
とにかく目からうろこがどんどん落ちる。
デザイナーは何を見る時も、常にアンテナを張り巡らせているんだろうなあ。

実際やってみたら、こんなにはできないんだろう。
その辺にある材料といっても、あれこれそろえるうちに高価になって
きっと買うほうがはるかに安いってことになるんだろう。
でも、でも、絶対作ってみたい!

まずはこれ借りた本なので、自分用に買うことにする。
そしていつも身近に置いておこう。

ひとりかくれんぼ~真夜中の鬼ごっこ~

2014-11-15 10:26:37 | 著者名 た行
TAKAKO 著

ネットで拡散された降霊あそび「ひとりかくれんぼ」。
まさかと思いながら、高校生たちは午前3時にそれをスタートした。

やがて、行方不明者や異様な行動をとるものが現れ始める。
次はだれの番なのか。
恐怖は次第に増していく。

ありがちな都市伝説を小説仕立てにしたものなのだが、もともとが
ケータイ小説だけあって、リズムが違う。
面白くないこともないし、テーマ自体嫌いではないのだが、
どうも乗れないのだ。

じゃあ文句なしに怖くて、眠れないくらいなのかというと、
それも違うなあ。

きっとこのネタは2ちゃんねるで盛り上がった時点がピークだったのだな。
あとはwikiにまとめられ、解説され、やがて小説やドラマになって
フェードアウト……みたいな。

文章や構成はそんなに悪いと思わないのだが、世代の違いもあるかも。

彼女の血が溶けていく

2014-11-14 10:07:57 | 著者名 あ行
浦賀和宏 著

フリーライター・銀次郎が、元妻の医師・聡美を医療ミス訴訟から
救うために調査する。

ただの貧血かと思われた患者・愛は、溶血性貧血であることがわかり、
内科的治療では改善が認められなかったため、脾臓摘出をした。
適切な治療だったはずなのに、その後副作用の血栓症で死亡する。
聡美は手を尽くした。しかし愛の夫は訴訟を起こす。

フットワークの軽さ、事件をさまざまな角度から見る取り組み方など、
銀次郎の仕事ぶりを見るだけでもなかなか面白い。
そしてそのデキるがゆえに足を踏み外し、仕事を失った過程も想像できるのだ。

一見ごくまじめな会社員に見えた愛が抱える闇。
そして夫や家族とのあやうい関係。
小さなずれが次々と雪崩を起こすように大きくなって、
引き返せない状況にまで追い込まれていく愛。
それは聡美がいかに優秀な医師であっても、どうにもできるものではなかった。

痴呆は怖い。
自分が自分でなくなるから。
その怖さをつきつけ、考えさせる物語でもある。
しかし、最後はやや拍子抜け。
それほど意外性のある結末でもないのに、トンデモ感があるという。
せっかく医療現場が丁寧に描かれているのに残念さがあった。

沈黙博物館

2014-11-05 10:18:04 | 著者名 あ行
小川洋子 著

“僕”は博物館技師として、ある村に赴いた。
迎えたのは少女で、彼女の養母である気難しい老婆が依頼者だった。

展示されるのは死者の遺品。
これまで老婆が収集してきた多数の品は、“僕”によって分類・整理され、
老婆に語られた来歴がつけられる。
そして、これから死ぬ人の遺品収集は“僕”によってなされることになる。

村では連続殺人事件が続いていた。
“僕”は警察から疑われ始める。

何かと世話をしてくれる庭師。
シロイワバイソンの皮を身にまとった沈黙の行者。
沼を渡る小舟。
卵細工。
見渡す限り続く墓地。

モチーフが神秘的で不思議に満ちて、なんともいえない世界観が展開していく。

最後は曖昧だ。
“僕”はなんだったのか。
なぜ帰れなくなったのか。
手紙はどうして届かないのか。
それは現実のものだったのか。

そんなことはどうでもいいのだろう。

からくりからくさ

2014-11-04 10:23:15 | 著者名 な行
梨木香歩 著

祖母が亡くなり、蓉子には人形の「りかさん」が残された。
蓉子はりかさんとともに祖母の残した家にうつり、3人の女性とともに
新しい暮らしを始めた。

4人に共通するのは、ものをつくる人であること。
紡ぎ、染め、織り、そして食べながら、季節は移り変わっていく。
のどかでありながら、ぴんとした緊張感や厳しさを秘め、
美しいものを生み出していく暮らしは、とてもうらやましい。

りかさんの存在も独特だ。
意思をもち、それを伝えることができる人形。
おとぎ話のようで、これでちゃんと物語が進むのかと思ったけれど、
きちんと舞台を彩り、役割を果たす。

染料や織物を専門的に語る場面があったり、面に関する考察があったり、
結構ドラマティックな展開なのに、心に残るのはやはり生活の場面。
静かに流れる時間をともに過ごしたような気持ちになった。
その家がなくなってしまったから、なおのことだ。