息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

彼女の血が溶けていく

2014-11-14 10:07:57 | 著者名 あ行
浦賀和宏 著

フリーライター・銀次郎が、元妻の医師・聡美を医療ミス訴訟から
救うために調査する。

ただの貧血かと思われた患者・愛は、溶血性貧血であることがわかり、
内科的治療では改善が認められなかったため、脾臓摘出をした。
適切な治療だったはずなのに、その後副作用の血栓症で死亡する。
聡美は手を尽くした。しかし愛の夫は訴訟を起こす。

フットワークの軽さ、事件をさまざまな角度から見る取り組み方など、
銀次郎の仕事ぶりを見るだけでもなかなか面白い。
そしてそのデキるがゆえに足を踏み外し、仕事を失った過程も想像できるのだ。

一見ごくまじめな会社員に見えた愛が抱える闇。
そして夫や家族とのあやうい関係。
小さなずれが次々と雪崩を起こすように大きくなって、
引き返せない状況にまで追い込まれていく愛。
それは聡美がいかに優秀な医師であっても、どうにもできるものではなかった。

痴呆は怖い。
自分が自分でなくなるから。
その怖さをつきつけ、考えさせる物語でもある。
しかし、最後はやや拍子抜け。
それほど意外性のある結末でもないのに、トンデモ感があるという。
せっかく医療現場が丁寧に描かれているのに残念さがあった。