かたつむり・つれづれ

アズワンコミュニテイ暮らし みやちまさゆき

満タン

2017-06-14 10:34:54 | 鈴鹿カルチャーステーション企画に参加して

6月10日午後、鈴鹿カルチャーセンターで「叱らない子育て」という

セミナーがありました。

講演者は、愛知県の小学校で子どもたちとかかわって暮している現役

の先生です。

新間(あらま)草海先生。

若い感じですが、もう40歳越えているかな。

本名は伏せておきたいと言っていました。

30歳から学校の先生になることを目指し、今は学級担任を任せて

もらえるまでなったそうです。

どんなこと聞けるか、楽しみでした。この先生の20代のころを

少しだけ知っていました。

講演会の始まる時間に出かけたら、大広間に人がぎっしり。

70人ぐらい、入っていたんじゃないかな。

地域の若いお母さんも結構来ていて、関心の高さを目の当たりに

しました。


「叱らない子育て」というのが、気に入らないという”ぼやき”から

入りました。

こういう講演会ははじめてで、緊張していると言っていましたが、

なかなかどうして聞いている人の気持ちを引き付けていました。

「なにも、叱らないことがしたくて、子どもたちとともに暮して

いるわけじゃないんです」・・どんなことがしたいんだろう?


学級担当は、学期末、校長さんが来期担当するクラス名が書いて

ある封筒を先生方の前において、それぞれの先生に選んでもらう

のだそうです。どの学校もそうかどうかは、分かりません。

ある年、新間先生が行ってみると、一つの封筒だけに新間先生の

名前が書かれてありました。

この封筒を見てみると、前学期、学級崩壊をしていたと見られて

いたクラスだったそうです。

同僚の先生方から、「たいへんねえ」とか「頑張って」とか声を

かけられて、戸惑った言います。

「どうなるかな?」と言う気持ちもあって、新学期がはじまり

ましたが、子どもたちは一人ひとり、とても元気に勉強をして、

よく遊び、学期末には「先生ありがとう」というメッセージを

たくさんもらいました。

なんで、こんなことになったのか、いまでもよく分かりません、

と振り返っていました。


おもしろいですね。

そんな1年を過ごした先生が、なぜそんなふうになったか、首を

傾げているんです。気がついてみると叱ったことがなかった。

 

たしかに、講演のはじめに「子どもにはこころがある」って、かなり

大きくスクリーンに映していました。キーワードではあるのでしょう。

見ていた人はどう、うけとったでしょうか?

ぼくは、なんとなく「そうだよな」と思いました。

こういうことは、結構いろいろなところで言われているんじゃないで

しょうか?

でも、実際の場面ではどんな現れをするかとなると、こころもとないです。

 


あらま先生は、子どもと過ごした日々のやりとりを、ありのまま、率直に

語ってくれました。

算数の時間、ある子がお腹が痛いと訴えてきました。なんでも、教壇の

前まで出てくるようです。当然、授業はストップします。

「どんなふうなの?」と聞いたりしていると、10分ぐらいはかかって

しまいます。

そこで、思いついたのが、笑っている顔が1、しかめつらのような顔が3、

もう痛くてたまらないとような顔を5にして、、この3つを絵を描き、

1から5まで番号をつけました。

お腹が痛くなった子には、「どの辺?」と聞くと、「4と5の間」とか

指差します。5だったら、保健室に行くことになります。

その子は、算数が分からないので、お腹が痛くなるみたいでした。


(「そうか、そういうこともあるのかもしれない」と思いました。)


それが、展開して、その表を使って、子どものこころの状態を、

「いまどの辺?」と子どもに指差してもらう関係ができたようです。

おもしろいです。

子ども自身が、「いまのぼくの状態は?」と難しいことばでいえば

観察する方向なんですね。

 

それから、聞いていて面白いとおもったのは、朝の出発にあたって、挨拶

をするとか、先生の話とか順番にしていくのですが、最後に「まんたん」と

コーナーがあるというのです。

あらま先生、突然、聴いている参加者に、「まんたん」ってどんなことだ

と思いますかと振ってきました。

「ちょっと、隣の人と考えてみてくれますか?」

軽い調子で声かけました。

(あらま先生、こんな感じで子どもたちとやっているのかなあ・・・)

 

聞いている人たちが、「???」でいるところで、解説。

「まんたん、っていうのは、いま、こころが満タンかどうか。いま、

満タンにしてみよう、ってやるんです」

これを2分ぐらい、子どもたちにやってもらうんです」

(なるほど・・・)

「もちろん、その朝、いろいろあって、満タンになっていないことが

あってもいいんです。満タンがこころの中で、浮かんできていたら」

「いやあ、この満タンって、わが身を振り返るのに、うまいコトバだ

なあ」と響きました。

 

子どもたちが、案外、先のことや、こうやろうということが分かって

いないんだなあと気がついたそうです。子供たちは、つねに不安な

気持ちですごしているんじゃないか。

あらま先生、そこで朝とかクラスの終わりに、これから何があるのか、

どこがポイントか、何をしたらいいかなど、何日もかけて説明したという

のです。先のことが分かってくると、それぞれの子は自分でその準備を

するということでした。

なんか、おまけにあらま先生のクラスの学力も、まあまあ良かったとか。

 

あらま先生が一貫してこころを傾けていたことがあったんだな、と

伝わってきました。


あらま先生のお話のあと、今回のセミナーを企画しておふくろさん弁当」

の社長係の岸浪龍さんから、お弁当屋さんの会社経営の話がありました。

人と人の間で、責めたり、やらせたり、やらされたりの関係が気がついて

みると、無くなっているということでした。

あらま先生のクラス運営、学級経営とも響き合って、世界が広がりました。

龍さんが最近、各地から招待されて、講演会をしていますが、ぼくは聞くのが

はじめてで、あった話をしていくので、聞きやすかったです。

 

講演会のあと、質問コーナーがありました。

あるお母さんはあらま先生が「学級崩壊したっていい」と発言したことに、

「なぜそう思うのか聞かせてほしい」と訪ねました。

あらま先生「学級崩壊といっても、たんなるイメージだとおもっています。

実際は、クラスの一人ひとりの子どもたちがいるだけなんでよね」

なにか、はっとするものがありました。

 

「叱らないとか、責めないという話はきいたんですが、褒めるというのが

出てこなかったのですが、そのへんはどう考えていらしゃいますか?」

あらま先生「そうですね、子どもらが何かやったり、考えたりしている

ことを見たり、聞いたりしたとき、ああ!とかおお!とか、感嘆符は

でてきますが、褒めようとおもったことはないですね。その子は、その子

として、”満タン”なっているかどうか、じぶんもその一人として、やって

いきたいとはおもっています」


あらま先生の子どもたちとの日々の体験談から、先生がこころしている

辺が伝わってきて、そこから新しい自分や学校や社会への出会いが

ありました。

こういう体験が、学校、父母、教育の関係者、そうですね、直接かかわっ

ている人でなくとも、伝わったら、いろいろ顧みて、検討するキッカケに

なるかも知れません。



そうそう、このセミナーに地元のケーブルテレビの方が取材に

来られていました。

よかったら、見てください。

 https://www.youtube.com/watch?v=hX53F_LDtLg&feature=youtu.be