問題は、躁なんです 正常と異常のあいだ (光文社新書) 価格:¥ 735(税込) 発売日:2008-02-15 |
問題は、「そう」なんです。
「そうなんですか 川崎さん・・・。」
(じゃなくて、春日武彦さん。 ←著者 )
題名に反応してしまい、
なかなか本題にたどり着けませんが、
きわめて真面目な本です。
常識では理解しがたい奇妙な言動や不可解な事件は、
「躁」という視点を取り入れることで
全体の構図が見えてくる場合があるそうです。
●躁を構成する三大要素は、
「全能感・衝動性・自滅指向」。
●うつ病が心の風邪で、
躁病は心の脱臼。
●光はあっても影のない世界、
騒がしく休むことを知らない世界が、躁病の世界。
●躁はきわめて人間くさい成分である。
それは香水に似ている。
成分が濃すぎると悪臭となる。
微量ならば、そして時と場所を選べは
きわめて魅力的な香り。
●うつの底が抜けて躁へと突入し、その結果
理解し難い振る舞いに及ぶパターンは、
存外に世間に多く転がっていると思われる。
この本には、「躁」に関する症例がたくさん出てきます。
著者が診た患者だけでなく、
犯罪者や作家や政治家などの言動が分析されていますが、
「いつか自分もそうなるかも・・・」という不安を覚えます。
「躁について語っていくと、その語り手は『うつ』になっていく」
と著者は最後に述べていますが、
読んでいる方も、しっかり『うつ』になりました・・・。
(でも、むしろ「うつ」が、自然ではないかとのこと。)
近頃、テレビをつければ「うつ病」の話題が多いですよね。でも、なかなか「躁」の話は出てきません。
私が「躁鬱病」について知ったのは、だいぶ前。北杜夫さんの本を読んだときです。「躁」状態の北さんの様子が(傍から見れば)、おかしくておもしろくて。
「躁はきわめて人間くさい成分である。」という行が、とても興味深かったです。
有吉佐和子、中島らもさんも「躁」だったようです。幸田文さんも少し。
政治家には、軽躁的な資質が必要で、でもそれを上回る腹黒さも必要とのこと。
人はさまざまな側面やさまざまな人格を備えていて、それを場面や状況で使い分けられるから、奥行きがあるそうです。(躁には奥行きがないそう。)