風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

朝鮮半島の小国意識

2017-03-09 23:50:20 | 時事放談
 世界で最も謎に包まれた国の一つである北朝鮮が、金正男氏殺害疑惑(2/13)に続き、弾道ミサイル発射(2/12 日米首脳会談中、及び3/6 米韓合同軍事演習中)で報道を賑わせている。
 昨日、国連・安全保障理事会は緊急会合を開き、ミサイル発射の非難で一致し、制裁の履行強化などを話し合った。会合後に日・米・韓の国連大使が共同で記者会見し、米国の大使は「あらゆる選択肢がテーブルの上にある」と、北朝鮮政策を見直す考えを示すとともに、北朝鮮の挑発行為は「尋常ではない」と強調し、「国際社会はすべての国が危険に晒されていることを理解し、すべての国は北朝鮮の行動に対応しなければならない」と訴えたという(日経電子版)。日本人にもよく分かるストーリーだ。
 他方、脱北した元駐英公使テ・ヨンホ氏は、日本のメディアのインタビューに答えて、「金正恩の統治スタイルが世界にどう見られているかは関係ない。金正恩が恐れるのは内部の住民やエリート層にどう見られるか。うまくコントロールできれば祖父や父のように長期政権を実現できる(と考えている)」との見方を示した(これも日経電子版)。こうした(脱北者の言い分が正しいとすれば)北朝鮮の自己認識と、欧米や私たち日本をはじめとする国際社会の見方との間には、大きなギャップがある。
 このギャップの説明を、木村幹・神戸大大学院教授は「小国意識」に求められる。朝鮮半島の国家には歴史的な影響から自らを小国だと規定する「小国意識」が抜き難くあり、「どうせ我が国なんて大した存在じゃないから、多少の事を言ったりやったりしても、大ごとにはならないはずだ、というのは南北に共通している」という。例えば金正男氏殺害にあたっても、金正男氏の国際的な知名度と注目度を誤認したのだろうし、こうした意識は南の韓国でも同様で、慰安婦問題を象徴する少女像を巡っての議論や、日韓合意を覆そうとする韓国内の議論を見ていると、まさに頷けるのではないだろうか。
 それはともかくとして、先の脱北者の発言では、「金正恩」を「習近平」に置き換えても(祖父や父=中国共産党の指導者、と置き換えれば)、意味が通じるところが、なんとなくコワイ。北朝鮮、韓国、中国はこの点では似た者同士というわけだ。勿論、そこには大きな違いも存在する。いくら国内事情を優先する中国や韓国であっても、国際社会や国際経済にがっちり組み込まれており、国際社会と断絶しては生きて行けないため、多少なりとも自制心が働き、無茶なことが出来ずに控えることになる。ところが北朝鮮は国際的に孤立しているため(実際には161の国と国交があり、裏では繋がっているのだが)、暴発するリスクは否定できない。そこに北朝鮮の怖さがあると思うのだ。
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