風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

日本の科学力

2015-12-27 01:55:26 | 時事放談
 世の中には不思議な数字があって、大部分(80%)は一部(20%)によって生み出されるという理論は「パレートの法則(あるいは80:20の法則、ばらつきの法則)」として知られる。ビジネスでも売上を構成する品目を大きい順に並べると、何故か売上の8割は商品の上位2割から(顧客別でも上位2割から)生み出されるなど、経験則としても広く認められるところだし、最近はロングテールの文脈で、上位20%がヘッドと呼ばれ、下位80%がテールと呼ばれることがある。また上・下ともに適用して、優秀な上位層2割と中間層6割と下位層2割に分けること(一種の正規分布)も感覚的に思い描くところだ(ボーナスの査定も、もう少し細かいが、そのように分布させられる)。GEのジャック・ウェルチは、各組織で社員のランク付けを行って、上位20%、中位70%、下位10%に振り分けたうちの下位10%を常に入れ替えていたという厳しい人事の話が伝わっているが、一つの派生形だろう。また、どんなものでも90%はカス(あるいはガラクタ、crud)という、なんとも大胆な「スタージョンの法則」もある。私たちも9割方(あるいは8割方)などと、十把一からげを心もち和らげて日常的に表現するマジック?ナンバーだ。
 他方、私の通った高校の試験では40点未満が欠点とされ、大学では60点未満が落第(60以上70未満が可で、70以上85未満が良で、85以上が優)とされて、試験と名のつくものではこのあたり(60:40の法則!?)がなんとなく目安になって、つい無意識のうちに拘るせいか、そのちょっと上のぎりぎりのあたりを器用に泳ぐことになる。中でも受験科目ではなかった物理と化学と地理は、高校1年の時から常に40点台で、上回ったことも下回ったこともなく、一度、化学でクラスの三分の二が欠点・再試験になったときでも40点台をクリアして生き残ったことがあって、ここまでくれば芸術的だと自画自賛したくなる。
 と、まあ、科学の話になると、苦手意識(飽くまで受験勉強についてであって、興味はある)とともに懐かしさもこみあげて来て、つい前置きが長くなってしまうが、今朝のニュースによると、理化学研究所が合成した原子番号113番の元素が新元素と国際的に認定される見通しのようだ。新元素の名称と元素記号を提案する権利は発見チームに与えられるらしく、産経Webによると、名称の方は日本にちなんだ「ジャポニウム」が有力だそうだ。あの(スイ・ヘイ・リー・ベ・・・などと、暗記するのに苦労した)元素の周期表に、この名称が載るのである。画期的なことだ。
 ウランより重い新元素については、これまで米国、旧ソ連、ドイツが発見を激しく競ってきたらしい(産経Web)。先ず米国が1940年に原子番号93(ネプツニウム)を見つけてから103番まで連続で発見し、その後、米・ソが熾烈な争いを展開し、80~90年代になるとドイツが107番以降を6連続で発見して一時代を築いたという。冷戦終結後は、米・ロは共同研究に移行し、今回の113番ではドイツも再現実験に協力し、日本は孤軍奮闘の様相だったという。米・ロ・独による独占に風穴を開け、アジア初の栄誉を勝ち取る意義は大きいと、産経Webは述べる。他方、日本は、理研の仁科芳雄博士が昭和15年、93番が存在する可能性を加速器実験で示したが検出できず(直後に米国が発見)、その加速器は戦後、原爆製造用と誤認した連合国軍総司令部(GHQ)によって破壊されてしまったらしい。言わば113番は仁科博士の研究を受け継ぐチームが発見し、雪辱を果たした形とも言う。
 STAP細胞騒動でちょっとイメージ・ダウンした理研にとってはまたとない汚名挽回であり、ノーベル賞に続き日本の科学の実力を示したと言えるのだろう。
コメント
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