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今年人類を襲ったのはコロナだけではない。
東アフリカ、インドやパキスタンなどの中央アジアでは、バッタの大群が飛来し、農作物を手当たり次第に食い荒らすという深刻な事態が発生。国連食糧農業機関によると、こうした被害により、今年東アフリカでは2500万人以上の食料が不足すると懸念されている。
日本政府は8月中にも中央アジアなど6カ国へバッタ駆除の殺虫剤や噴霧器、発生場所のデータを収集・共有するための全地球測位システム(GPS)の受信機を提供する支援を始めるという。
今年人類を襲ったのはコロナだけではない。
東アフリカ、インドやパキスタンなどの中央アジアでは、バッタの大群が飛来し、農作物を手当たり次第に食い荒らすという深刻な事態が発生。国連食糧農業機関によると、こうした被害により、今年東アフリカでは2500万人以上の食料が不足すると懸念されている。
日本政府は8月中にも中央アジアなど6カ国へバッタ駆除の殺虫剤や噴霧器、発生場所のデータを収集・共有するための全地球測位システム(GPS)の受信機を提供する支援を始めるという。
古来から人類を悩ませてきた「蝗害(こうがい」だが、なぜバッタは大量発生し群生化してしまうのだろう?
バッタの大群による「蝗害(こうがい)」は、古来より人類を苦しめてきており、さまざまな文献にその記録が見られる。
たとえば紀元前13世紀ごろの記録とされる『出エジプト記』には、「イナゴが全地をおおい、太陽の光がさえぎられ薄暗くなった――エジプト中の木や草が食い尽くされ、緑は何一つ残らなかった」と記されている。
また、アッカドに伝わる風と熱風の悪霊パズスや、『ヨハネの黙示録』に記されるバッタの大群を率いる奈落の王アバドンなど、ときに神格化されることもあった。
「トノサマバッタ」は、地球上でもっとも広く分布するバッタだ。一般的には成長すると単独で生きる(孤独相)が、中には大群で移動(群生相)し蝗害を引き起こす仲間もいる。
これまでトノサマバッタが大群を組むようになるきっかけは、仲間が出すフェロモンだと推測されてきたが、それがどの化学物質なのか具体的には分かっていなかった。
しかし、このほど中国科学院の研究グループによって、そのフェロモンが「4-ビニルアニソール(4VA)」であることが特定され、『Nature』(8月12日付)で発表された。トノサマバッタはこの集合フェロモンに反応して、孤独相から群生相へと行動パターンを変化させるのだという。
Fighting a locust plague amid Covid-19 in east Africa
4VAは、オスもメスも、若い個体も成虫も同じように惹きつける。こうしてバッタが集まるほどに空気中の4VAはいっそう濃くなる。だからこそ、一度群れが形成される際限なく拡大していってしまうと考えられる。
また孤独相のトノサマバッタが4、5匹集まると、4VAを分泌し出すことも突き止められたという。ちなみに人間にも4VAの甘いニオイが感じられるそうだ。
これまで蝗害の対策としては、広範囲に大量の殺虫剤をまくしかなかった。そうした殺虫剤は、無関係な動植物や、場合によっては人間にとっても有害なものだ。
だが、今回の発見により、4VAに惹きつけられるバッタの習性を逆手に取ることができるようになった。4VAを合成し、大群を一か所におびき寄せて駆除すればいいのだ。
研究グループが、4VAを塗布したネバネバの捕虫器でこれを実験してみたところ、十数匹のバッタを捕獲することができたという。
もう1つの方法として、バッタの嗅覚を破壊してしまうやり方が考えられる。バッタはフェロモンを触角で感知しているので、遺伝的に改変して触覚の嗅覚受容体を消してしまうのだ。これを野生に放てば、フェロモンを感じにくい個体が広まる。
あるいは抗フェロモン物質のようなものを開発して、それを散布することでバッタがフェロモンを嗅ぎにくくすることもできるかもしれない。
なお、今年東アフリカを襲ったバッタは「サバクトビバッタ」という種で、トノサマバッタとは別種だが、おそらくは今回明らかになったことを応用できるだろうとのこと。
仮に4VAがサバクトビバッタを惹きつけなかったとしても、別の集合フェロモンを発見する手がかりにはなるそうだ。
References:sci-news / sciencenews/
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バッタの巨大な群れはフェロモンに誘発されていた/iStock
今年人類を襲ったのはコロナだけではない。
東アフリカ、インドやパキスタンなどの中央アジアでは、バッタの大群が飛来し、農作物を手当たり次第に食い荒らすという深刻な事態が発生。国連食糧農業機関によると、こうした被害により、今年東アフリカでは2500万人以上の食料が不足すると懸念されている。
日本政府は8月中にも中央アジアなど6カ国へバッタ駆除の殺虫剤や噴霧器、発生場所のデータを収集・共有するための全地球測位システム(GPS)の受信機を提供する支援を始めるという。
バッタの巨大な群れはフェロモンに誘発されていた/iStock
今年人類を襲ったのはコロナだけではない。
東アフリカ、インドやパキスタンなどの中央アジアでは、バッタの大群が飛来し、農作物を手当たり次第に食い荒らすという深刻な事態が発生。国連食糧農業機関によると、こうした被害により、今年東アフリカでは2500万人以上の食料が不足すると懸念されている。
日本政府は8月中にも中央アジアなど6カ国へバッタ駆除の殺虫剤や噴霧器、発生場所のデータを収集・共有するための全地球測位システム(GPS)の受信機を提供する支援を始めるという。
古来から人類を悩ませてきた「蝗害(こうがい」だが、なぜバッタは大量発生し群生化してしまうのだろう?
古来から人類を苦しめてきたバッタによる蝗害
バッタの大群による「蝗害(こうがい)」は、古来より人類を苦しめてきており、さまざまな文献にその記録が見られる。
たとえば紀元前13世紀ごろの記録とされる『出エジプト記』には、「イナゴが全地をおおい、太陽の光がさえぎられ薄暗くなった――エジプト中の木や草が食い尽くされ、緑は何一つ残らなかった」と記されている。
また、アッカドに伝わる風と熱風の悪霊パズスや、『ヨハネの黙示録』に記されるバッタの大群を率いる奈落の王アバドンなど、ときに神格化されることもあった。
ブレーム動物事典(第二版)挿絵 image by:public domain/wikimedia
バッタを惹きつけ大群化させるフェロモンが特定される
「トノサマバッタ」は、地球上でもっとも広く分布するバッタだ。一般的には成長すると単独で生きる(孤独相)が、中には大群で移動(群生相)し蝗害を引き起こす仲間もいる。
これまでトノサマバッタが大群を組むようになるきっかけは、仲間が出すフェロモンだと推測されてきたが、それがどの化学物質なのか具体的には分かっていなかった。
しかし、このほど中国科学院の研究グループによって、そのフェロモンが「4-ビニルアニソール(4VA)」であることが特定され、『Nature』(8月12日付)で発表された。トノサマバッタはこの集合フェロモンに反応して、孤独相から群生相へと行動パターンを変化させるのだという。
Fighting a locust plague amid Covid-19 in east Africa
4VAは、オスもメスも、若い個体も成虫も同じように惹きつける。こうしてバッタが集まるほどに空気中の4VAはいっそう濃くなる。だからこそ、一度群れが形成される際限なく拡大していってしまうと考えられる。
また孤独相のトノサマバッタが4、5匹集まると、4VAを分泌し出すことも突き止められたという。ちなみに人間にも4VAの甘いニオイが感じられるそうだ。
フェロモンを利用したバッタの駆除方法
これまで蝗害の対策としては、広範囲に大量の殺虫剤をまくしかなかった。そうした殺虫剤は、無関係な動植物や、場合によっては人間にとっても有害なものだ。
だが、今回の発見により、4VAに惹きつけられるバッタの習性を逆手に取ることができるようになった。4VAを合成し、大群を一か所におびき寄せて駆除すればいいのだ。
研究グループが、4VAを塗布したネバネバの捕虫器でこれを実験してみたところ、十数匹のバッタを捕獲することができたという。
iStock
もう1つの方法として、バッタの嗅覚を破壊してしまうやり方が考えられる。バッタはフェロモンを触角で感知しているので、遺伝的に改変して触覚の嗅覚受容体を消してしまうのだ。これを野生に放てば、フェロモンを感じにくい個体が広まる。
あるいは抗フェロモン物質のようなものを開発して、それを散布することでバッタがフェロモンを嗅ぎにくくすることもできるかもしれない。
なお、今年東アフリカを襲ったバッタは「サバクトビバッタ」という種で、トノサマバッタとは別種だが、おそらくは今回明らかになったことを応用できるだろうとのこと。
仮に4VAがサバクトビバッタを惹きつけなかったとしても、別の集合フェロモンを発見する手がかりにはなるそうだ。
4-Vinylanisole is an aggregation pheromone in locusts | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-020-2610-4
References:sci-news / sciencenews/
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