保健福祉の現場から

感じるままに

生活習慣病管理料と糖尿病性腎症重症化予防

2017年11月02日 | Weblog
メディウォッチ「生活習慣病管理料、エビデンスに基づく診療支援の促進を目指した見直し―中医協総会(2)」(http://www.medwatch.jp/?p=16619)。<以下引用>
<高血圧症や糖尿病といった生活習慣病の重症化を予防するために、B001-3【生活習慣病管理料】について、▼療養計画書に血圧の目標設定や特定健診などの受診勧奨情報などを記載する欄を設ける▼ガイドラインやデータに基づく診療支援を促す―といった見直しを行ってはどうか―。11月1日に開催された中央社会保険医療協議会の総会では、こういった方向が了承されています。生活習慣病管理料の療養計画書にも、特定健診受診勧奨などの記載欄設ける 入院医療費の37%(およそ5兆7000億円)、入院外医療費の32%(およそ4兆5000億円)が生活習慣病(ただし、大腸・肺以外のがん患者も含む)で占められており、(1)生活習慣病のそもそもの予防(生活習慣の改善)(2)重症化予防(3)治療—の総合的な推進が重要テーマの1つとなっています。このうち(2)の重症化予防については、糖尿病腎症から腎不全、透析という経過を防止するために、昨年(2016年)4月に日本医師会・日本糖尿病対策推進会議・厚労省が協働して「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を策定したほか、市町村と地域医師会とが連携した重症化予防への取り組みが重要との報告書がまとめられています。また診療報酬上は、(3)の治療と併せて、▼B001-3【生活習慣病管理料】(治療計画を策定し、それに基づく総合的な治療管理を評価)▼B001の20【糖尿病合併症管理料】(糖尿病足病変ハイリスク要因を有する患者に対する、看護師による総合的な管理指導を評価)▼B001の27【糖尿病透析予防指導管理料】(透析に向かいつつある糖尿病患者に対する、チームでの指導管理を評価)―などが準備されています。しかし、現在の重症化予防への取り組みには、例えば次のような課題もあると指摘されています。▼生活習慣病対策では「医療機関・行政・保険者の連携」が極めて重要だが、糖尿病透析予防指導管理料などの算定患者について、保険者から医療機関に情報提供の協力を求めるケースは極めて少なく、医療機関から保険者へ情報提供が行われたケースも少ない ▼糖尿病透析予防指導管理料などの算定患者について、医療機関が「当該患者が特定健診・特定保健指導を受けたかどうか」を把握しているケースは1割程度にとどまっている 厚生労働省保険局医療課の迫井正深課長は、この遠因として「生活習慣病管理料の算定要件である療養計画書の書式に、▽血圧の目標▽特定健診・特定保健指導の受診勧奨―などに関する記載欄がない」ことがあるのではないかと指摘しています。また、迫井医療課長は、▽高血圧治療では降圧剤を用いるが、薬価が比較的高く設定されているARBの使用割合が比較的高い▽標準的な薬剤選択方針に基づく医薬品リスト(フォーミュラリー)を定めている病院は7.5%にとどまり、大規模病院に偏っている▽医薬品の適正使用に当たっては、正確な情報が製薬メーカーなどから提供される必要がある▽糖尿病治療に関しては、日本医師会や日本糖尿病学会などが構築しているデータベース「J-DREAMS」をもとに、クリニックに向けて情報提供が提供されている(日本医師会の「かかりつけ医糖尿病データベース研究事業:J-DOME」)―といった点にも言及。エビデンスに基づく、適切な治療・重症化予防の重要性を強調しました。これらを総合して迫井医療課長は、2018年度の次期診療報酬改定に向けて、B001-3【生活習慣病管理料】について▼療養計画書に血圧の目標設定や特定健診などの受診勧奨情報などを記載する欄を設ける▼ガイドラインやデータに基づく診療支援を促す―といった見直しを行ってはどうかと提案しています。具体的な要件見直しなどは今後の議論を待たなければいけませんが、診療側・支払側とも「保険者と医療機関の連携が重要」など積極的な支持を表明しており、見直し方針は了承されたと言えるでしょう。高血圧治療薬の選択にあたり「費用対効果の視点」を持たせたガイドラインを なお、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、高血圧症治療の薬剤で高額なARBが多く使用されている(健保連の分析では、金額ベースで1分類処方では6割、2分類処方では9割がARB)点に着目し、「高血圧治療薬の選択において、費用対効果も踏まえた優先順位を付けるよう、厚労省から関係学会に指導してほしい」との要望を行いました。ARBを安価なCa拮抗薬に置き換えた場合、医療費が830億円縮減できる、との推計結果も幸野委員は紹介しています。診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)や今村聡委員(日本医師会副会長)は、「費用対効果の視点も重要」と幸野委員の要望に一定の理解を示しましたが、治療薬選択では医学的な判断が最重視されるべき旨の見解を述べています。腎不全期に至る前の患者でも、運動指導による腎機能の維持・改善効果あり 迫井医療課長は、糖尿病腎症の重症化予防について「B001の27【糖尿病透析予防指導管理料】における【腎不全期患者指導加算】の対象患者拡大」も提案しました。この加算は、eGFRという腎機能を示す指標の値が「30未満」(小さいほど腎機能が低下している)の腎不全期患者に対して、専任の医師が腎機能維持の観点で必要と考える運動指導を行うことを評価するものです。もっとも長浜赤十字病院(滋賀県長浜市)の研究によれば、加算の対象とならない患者(eGFRの値が30-44)であっても運動療法によって腎機能を維持・改善する効果があることが分かり、迫井医療課長は「加算対象患者の拡大」を検討してはどうかと提案しているのです。この点、診療側の松本純一委員・今村委員は「末期の腎不全になる、もっと前から介入して重症化を予防することは重要」と迫井医療課長提案に理解を示しましたが、「1病院において、わずか247名を対象にした研究では、十分なエビデンスとは言えないのではないか」と態度を保留しています。保険給付対象とすれば算定患者も増え、その効果を検証することが「エビデンス構築」につながるとも考えられ、積極的な検討に期待が集まります。>
 
キャリアブレイン「【中医協】生活習慣病管理料の療養計画を見直しへ  支払側はアウトカム評価を主張」(https://www.cbnews.jp/news/entry/20171101214522)。<以下一部引用>
<中央社会保険医療協議会が1日に開いた総会では、厚生労働省が、「生活習慣病管理料」の算定医療機関が作成する「療養計画書」を2018年度の診療報酬改定で見直すことを提案した。医療機関から患者への働き掛けを強めるため、これまでの血糖値(HbA1c)に加え、血圧の検査値の改善度合いを示す目標値や、特定健診の受診勧奨の記載を新たに求めるなどの内容だ。これらへの反対意見は出なかった。1日の会合で厚労省は、「糖尿病透析予防指導管理料」の「腎不全期患者指導加算」の対象患者を拡大することも提案したが、有効性を示すデータを1病院の患者247人分しか出せなかった。このため診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)は、「根拠として弱い」と述べ、引き続き経過を見守ることを提案した。ただ、厚労省では、18年度の改定に向けて引き続き検討することにしている。>
 
中医協総会(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-chuo.html?tid=128154)の「外来医療(その3)」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000183042.pdf)p43「生活習慣病の重症化予防の推進のため、効果的・効率的な指導管理の取組みを促す観点から、①療養計画の内容(検査値の目標、特定健診・特定保健指導の受診勧奨等)や、②ガイドラインやデータに基づく診療支援等といった視点から、生活習慣病管理料の見直しを検討してはどうか。」とあるが、p41「日本医師会かかりつけ医糖尿病データベース研究事業(J-DOME:Japan medical association Diabetes database Of clinical Medicine)」とセットで、生活習慣病管理料の見直しを図っても良いように感じる。「日本医師会かかりつけ医糖尿病データベース研究事業(J-DOME:Japan medical association Diabetes database Of clinical Medicine)」は非専門医での取り組みがポイントかもしれない。そういえば、「外来医療(その2)」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000158415.pdf)では「予防から治療まで一貫したサービス提供・システム連携の推進」がテーマとされ、p70「今後、生活習慣病の増加が見込まれるとともに、より質の高い医学管理や重症化予防の取り組みが求められる中で、・かかりつけ医機能と専門医療機関等との連携の推進や、・かかりつけ医を中心とした多職種との連携による効果的な医学管理等の推進、・医療機関と保険者・自治体等の予防事業との情報共有の推進、に資する評価のあり方について、どのように考えるか。」とあったが、保険者とかかりつけ医との連携による「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000121935.html)を診療報酬面からの後押しはどうなるであろうか。平成29年1月17日国民健康保険課事務連絡「平成28年度保険者努力支援制度前倒し分に係るQ&Aの送付について その2」の問3では「(答)「かかりつけ医との連携」とは・事業実施にあたり、事業内容について医師会に情報提供すること。・事業実施過程で、事業内容について医師会から助言を受けること。・事業実施にあたり、個々の取組についてかかりつけ医に情報提供すること。・事業実施過程で、個々の取組についてかかりつけ医から助言を受けること等を指す」とされたことは認識したい。もはや生活習慣病対策は大病院の専門医中心の時代ではない。「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」(http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000121902.pdf)p7「特定健診では尿蛋白が必須項目であり、糖尿病に加えて尿蛋白(+)以上であれば第3期と考えられる。(±)は微量アルブミン尿の可能性が高いため、医療機関では積極的に尿アルブミン測定を行うことが推奨されている。尿アルブミンは健診項目にはないが、糖尿病で受診勧奨判定値以上の場合、医療機関への受診勧奨がなされ医療機関において尿アルブミンが測定され、第2期の把握が可能となる。」とある。社会保険診療報酬支払基金「157 アルブミン定量(尿)(糖尿病性早期腎症)」(http://www.ssk.or.jp/shinryohoshu/teikyojirei/ika/kensa/jirei157.html)の「糖尿病性早期腎症(第1期又は第2期の記載がないもの。)に対してのアルブミン定量(尿)の算定を認める。」の取り扱いは周知したい。気になるのは、医療機関において糖尿病患者に「157 アルブミン定量(尿)(糖尿病性早期腎症)」(http://www.ssk.or.jp/shinryohoshu/teikyojirei/ika/kensa/jirei157.html)が積極的になされるようになり、各医療保険者に対して、「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000121935.html)が依頼できる状況になっているかどうか、である。重症化予防(国保・後期広域)ワ-キンググループ(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-hoken.html?tid=318630)のとりまとめ(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000170308.html)を参考に、戦略的に「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000121935.html)を進める必要がある。
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