保健福祉の現場から

感じるままに

市町村と保健所の連携・協働による在宅医療・介護連携

2014年05月01日 | Weblog
以前の厚労省資料(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001oxhm-att/2r9852000001oxlr.pdf)p17~19の地域包括ケアに関する保険者の評価項目では、「地域連携パスの作成」「地域の急性期病院との連携のための会議」「地域連携パスを協議する場」「地域の回復期病院、維持期リハ関連施設との連携のための会議」など、医療に関連した項目の実施率が非常に低い。また、「在宅医療・介護連携の体制構築に関するアンケート調査 報告書 平成26年3月」(http://chcm.umin.jp/education/ipw/enquete/140331iryokaigo_report.pdf)の市区町村調査では、p4「担当者の配置のみ(独立した課・室・係は存在しない)」50.9%、「部門も担当者も存在しない」35.5%、p15地域連携パスの活用;「病院・施設・在宅ともほとんど使用されていない」67.9%、入退院時の情報提供に関する共通フォーマットの有無;「全く作成されていない」74.8%、p16ケアマネタイムを設定している病院、診療所の有無;「ない」92.3%、地域ケア会議へ医療関係者が出席するよう促す活動の有無;「行われていない」52.6%、p21在宅医療・介護連携を進めていくうえでの障害「担当者が介護保険など他の業務で手いっぱいで余裕がない」59.4%、「市区町村の担当職員に在宅医療・介護連携専任職員がいない」58.1%、「市区町村担当職員に在宅医療・介護連携に関する基礎知識が不足している」48.7%、等となっている。調査の有効回答率が12.2%に留まっていることも注目される。厚労省資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000039685.pdf)p18に示されているように、在宅医療・介護連携は、介護保険法の地域支援事業に位置づけ、市町村が主体となり、地区医師会等と連携しつつ、取り組み、①地域の医療・福祉資源の把握及び活用(地域の医療機関等の分布を把握し、地図又はリスト化し、関係者に配布)、②在宅医療・介護連携に関する会議への参加又は関係者の出席の仲介(関係者が集まる会議を開催し、地域の在宅医療・介護の課題を抽出し、解決策を検討、③在宅医療・介護連携に関する研修の実施(グループワーク等の多職種参加型の研修の実施)、④24時間365日の在宅医療・介護提供体制の構築(主治医・副主治医による相互補完的な訪問診療の提供等の調整、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の推進)、⑤地域包括支援センター・介護支援専門員等への支援(介護支援専門員等からの在宅医療・介護に係る総合的な問い合わせへの対応)が想定され、さらに、⑥退院支援ルールの策定(病院・居宅介護支援事業所・地域包括支援センターなどの関係者が集まる情報共有のための様式・方法の統一等を検討し合意形成を図る、地域連携クリティカルパスの作成等)、⑦地域住民への普及啓発(地域住民を対象にしたシンポジウムの開催、パンフレット・チラシ・区報・HP等を活用し在宅医療・介護サービスに関する普及啓発等)が加わる。果たして、市町村主体・市町村中心だけで、在宅医療・介護連携は大丈夫なのであろうか。国立長寿医療研究センター「在宅医療・介護連携のための市町村ハンドブック」(http://www.ncgg.go.jp/zaitaku1/pdf/handbook/handbook2013.pdf)だけでは弱い感じがする。医療計画に関する厚労省医政局通知(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/dl/tsuuchi_iryou_keikaku.pdf)p36では「圏域連携会議は、各医療機能を担う関係者が、相互の信頼を醸成し、円滑な連携が推進されるよう実施するものである。その際保健所は、地域医師会等と連携して当会議を主催し、医療機関相互または医療機関と介護サービス事業所との調整を行うなど、積極的な役割を果たすものとする。」とある。昨年12月27日の社会保障審議会医療部会の「医療法等改正に関する意見」(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000033983.html)(http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000033981.pdf)p9では、医療と介護の連携の推進で、「都道府県は広域的に対応する必要がある調整等について保健所を通じて市町村の支援を行うことも重要である。」とされ、昨年10月発行された厚労省「平成24年度 在宅医療連携拠点事業 総括報告書」(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/zaitaku/seika/dl/h24soukatsu.pdf)p60で、「保健所は、これまでに医療計画を通じた在宅医療の推進に留まらず、難病対策、地域リハビリテーション対策、がん緩和ケア対策、認知症対策、介護予防対策等の実績があり、地域の関係機関・団体に働きかけやすく、これらの技術的なノウハウがある等の強みがある。これまで取り組みの経験がない市町村に対して市町村どうしの情報交換を促し、市町村を越えた広域での調整を行うなど、積極的な支援が期待される。」と記述されていることは理解したい。やはり、市町村と保健所の連携・協働による在宅医療・介護連携が不可欠であろう。全国保健所長会から「在宅医療・地域包括ケアシステムの推進に関する見解」(http://www.phcd.jp/02/soukai/pdf/iinkai_chihokenjyu_H25_tmp01.pdf)(http://www.phcd.jp/02/soukai/pdf/iinkai_chihokenjyu_H25_tmp02.pdf)が出ている。医師会の報告書(http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20140319_3.pdf)では行政との連携について述べられているが、在宅医療を医療計画の一環として推進する際、圏域医療計画の事務局を持つ保健所に期待される役割も大きいであろう。圏域の医療計画を直接所管していない保健所であっても、1)保健所の専門職(医師、歯科医師、薬剤師、保健師等)の存在や医事・薬事業務を考慮し、在宅医療・医療介護連携を推進する部局横断的な組織に参画する、2)管内の関係機関・団体の取り組みに支援・協力する、3)難病患者・障害者(児)支援ネットワークを推進する、4)健康増進計画の「高齢者の健康」を推進する一環として、KDBや医療介護情報見える化(http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/khf/ki/ki_v364.pdf)の分析・活用を推進する、などいろいろ期待されるであろう。「都道府県在宅医療・介護連携担当者・アドバイザー合同会議」資料(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000044980.html)も参考にしたい。
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自治体で異なる妊婦健診

2014年05月01日 | Weblog
キャリアブレイン「妊婦健診の公費負担額、都道府県格差が拡大- 厚労省、昨年調査 」(http://www.cabrain.net/news/article/newsId/42616.html)。<以下引用>
<厚生労働省は、妊婦健康診査の状況(昨年4月1日時点)に関する調査結果を公表した。妊婦一人当たりの公費負担額の全国平均(公費負担額を明示しない2村を除く)は9万7494円で、前年と比べ795円増加。都道府県ごとの平均は21都道府県で増加した一方、和歌山と広島の2県で減少した。都道府県格差は5万4587円で、4553円拡大した。市区町村が実施する妊婦健診は、昨年度から一般財源化されている。調査結果によると、公費負担額の平均が最も高かったのは岐阜(11万8042円)で、前年と比べ5401円増加。以下は山口の11万6315円(前年と変わらず)、長野の11万6214円(前年比594円増)、徳島の11万3880円(110円増)、高知の11万380円(2990円増)、福島の10万9004円(1872円増)なども低かった。一方、公費負担額の平均が最も低かったのは神奈川の6万3455円(848円増)で、愛媛の7万9400円(250円増)、東京の8万690円(192円増)、兵庫の8万1472円(6円増)、山形の8万2790円(前年と変わらず)、大阪の8万4563円(1万6770円増)などがこれに続いた。市区町村ごとの公費負担額の平均は、「9万-9万9999円」(36.6%)と答えた自治体が最も多く、以下は「10万-10万9999円」(25.1%)、「11万-11万9999円」(14.9%)、「8万-8万9999円」(14.7%)、「7万-7万9999円」(5.1%)などの順だった。金額が最多の「12万円以上」は1.2%、最少の「4万-4万9999円」は0.6%だった。4万円未満と答えた市区町村はなかった。■受診券方式の市区町村、標準的な検査「すべてカバー」は6割弱 厚労省は、用途の決まった受診券を配布して妊婦健診の費用を負担している1429市区町村について、国が例示する標準的な検査項目を受診券でカバーしているかどうかも調査。それによると、HTLV-1抗体検査と性器クラミジア検査は全自治体がカバーしていた一方、すべての項目をカバーする自治体の割合は58.9%にとどまった。配布する受診券の対象に子宮頸がん検診を含めていた割合は86.5%だった。また41.5%の自治体では、国が例示していない検査も受診券の対象に入れていると答えた。>

4月23日付で「妊婦健康診査の公費負担の状況にかかる調査結果」(http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11908000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Boshihokenka/kouhifutan_1.pdf)が出ているので目を通しておきたい。住民は自分たちの市区町村の実態についてご存じであろうか。「子ども・子育て関連法における妊婦健診の位置付け」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000035240.pdf)では「課長通知で示している基準相当分は地方交付税措置を講じている」というが、意外に未実施市町村が少なくない。「今後は、市町村子ども・子育て支援事業計画で、事業量の見込み等を盛り込むこととしているほか、改正母子保健法に基づき、これまで通知で示していた健診回数等について、「望ましい基準」として大臣告示で定める予定」とあることは知っておきたい。妊婦健診(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001ylvj-att/2r9852000001ymao.pdf)では、肝炎ウイルス検査、風しん抗体価、子宮頸がん検診、クラミジア検査、血糖検査なども行われており、母親の継続的な健康管理にも活用されるべきと感じる。
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