保健福祉の現場から

感じるままに

乳がん検診としての超音波検査

2009年10月04日 | Weblog
昨日、乳房超音波検査に関する講演会に行ってきた。講師のS先生はこの領域で第一人者といわれるような方である(http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/%8D%B2%8Bv%8A%D4%81@%8D_/list.html)。非常にわかりやすく解説されていた。死亡率減少のためには、2cm未満の乳がんを発見する必要があり、超音波検査の役割が大きいことが理解された。しかし、厚生労働省の指針(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/gan_kenshin02.pdf)では、乳がん検診は、40歳以上に対して、問診+視触診+マンモグラフィの「隔年受診」である。この点について、S先生に質問したところ、「それはお金のためにそうなっているのではないか」といわれてしまった。S先生は、「毎年超音波検査を実施し、3年に1回マンモグラフィを行うのがよいのではないか」、とのことであった。また、最近では60代でも充実性乳房の方がおり、高齢者だから超音波検査は無効とはいえないとのことである。そういえば、千葉県ではガイドライン(http://www.pref.chiba.lg.jp/syozoku/c_kenzou/kenpro/nyuuganguideline.html)に基づき、独自に超音波検査を組み入れた乳がん検診が実施されている。超音波検査でも要精検率は高くならないそうである。
なお、平成16年の厚生労働省の報告書(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/04/s0426-3.html)では、「超音波検査は、乳がんの臨床において有用な検査であるが、現在のところ検診における乳がんの死亡率減少効果について根拠となる報告はなされていない。このようなことから、超音波による検診について、今後その有効性の検証を行うとともに、機器や撮影技術及び読影の技術の標準化、検診における診断基準の確立が課題である。超音波検査については、今後、マンモグラフィで病変が描出されにくい、乳腺密度が高い受診者に対しての活用を検討すべきである。」とされ、現在、全国的な研究(http://www.j-start.org/)が継続中である(http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/health/CK2009073102000103.html)。この研究結果が早く待たれるところであるが、医療現場では超音波検査による乳がん検診が普遍的に実施されている。たとえば、乳がん検診info(http://www.nyugan-kenshin.jp/)によると、乳がん検診は、40歳未満は、超音波検診(毎年)+マンモグラフィ検診(初回+3年毎) 、40歳代は、超音波検診(毎年)+マンモグラフィ検診(隔年)、50歳以上は、超音波検診(毎年)+マンモグラフィ検診(毎年) とされている(http://www.nyugan-kenshin.jp/nyugan/kenshin.html)。
民間の経済研究所の「乳がん検診に関する調査結果 2009」(http://www.yano.co.jp/press/pdf/501.pdf)ではマンモグラフィの充足度に課題がある。乳がんは基本的に外科であり、マンモグラフィ機器が設置されている診療所は多くないであろう。乳がん検診としての超音波検査について、もっと前向きに取り組まれても良いのではないか、と感じる。超音波検査では、マンモグラフィのような痛みがない、マンモグラフィで病変が描出されにくい充実性乳房の病変がわかる等のメリットがある一方で、検査実施者による影響が非常に大きく、「結果的に不必要な治療や検査を招く可能性があること」のデメリット(http://ganjoho.ncc.go.jp/public/pre_scr/screening/about_scr.html)がある。こうした情報を受診者に伝え、「受診者が選択するのが最も良いのではないか」、とS先生は強調されていた。
しかし、現実は、あまりにかけ離れているように感じる。厚生労働省指針(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/gan_kenshin02.pdf)p3では、「前年度受診しなかった者に対しては、積極的に受診勧奨を行うものとする。また、受診機会は、乳がん検診及び子宮がん検診についても、必ず毎年度設けること。」とされ、隔年「受診」であって、隔年「実施」ではないのである。しかし、国会議資料(http://www.wam.go.jp/wamappl/bb14GS50.nsf/0/791917b16a2abe09492575ec000b9d2f/$FILE/20090707_3shiryou2~3.pdf)p35では、「同一人にとって受診機会、勧奨ともに隔年(誕生年、誕生月、居住地区で選定等)」としている市区町村は、乳がん検診で21.5%、また、「定員を設け先着順」としている市区町村は、乳がん検診で23.5%に上っている。マンモグラフィの隔年受診でさえも覚束ない状況であることは、どれほど知られているであろうか。
本日はこれからピンクリボンキャンペーンである。
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