娘たちが帰っていった部屋は寒々としている。今朝はまた一段と冷えていた。ご近所に、ひとりで井戸を掘っている元学校の先生がいる。その方から、「掘った穴に水が溜まっているが、井戸が掘れたということでしょうか」と電話をもらったので、「水を汲み出してみましょう」と返事をし、今朝、出かけて行った。
通販で購入したという井戸掘り道具を使い、7メートルほど掘ってある。よくひとりでここまで掘ったと感心した。以前、お会いした時に「ひとりは危険ですから」と申し上げたが、土壌が柔らかいためなのか、他人の力を借りなくても済んでしまったようだ。けれど、ここは難しい土壌で、3メートルくらいから下は泥土の層が続いている。
どこまで掘れば水脈の辿り着けるのかと不安になる。とにかく、水を汲み上げてみようと25ミリの塩ビ管を入れ、エンジンポンプで吸い上げようとしてみたが、やはり泥がつまるのか水は上がって来ない。仲間のひとりが昼から用事があるというので、今日の作業はここまでにした。
さて次はどう掘るか、また思案の時が来た。先生に「どうして井戸を掘ろうと思ったのですか」と聞いてみた。「庭の樹木に水をやるためです。温暖化のせいか枯れてしまう樹があったので、水撒きをするのですが、これが大変なんです」と言われる。確かに建物の南と北にたくさんの樹木があり、南には芝生もある。
「それにしてもなぜご自分で掘ろうと思ったのですか」と尋ねると、「やりますよと、言ってくれる業者もいるんですが、やっていたら最後までやり遂げたくなってきて」と照れ臭そうに話す。私たちも一緒だ。土に穴を掘り、それで水を汲み上げた時の喜びが何とも言えず、老骨に鞭打って続けている。春まで待てるのかなあー。