地域新聞の記者をしている時、議会を傍聴していたら、「オイ、どこに座っているのだ。ドケよ」と声をかけられた。声の主は大手の新聞記者だった。記者席に座って何がいけないのか分からなかったが、記者席は大手の新聞記者のための席だったのだ。
私よりも若い大手新聞の記者の横柄な態度に腹が立ったが、それが当然だと思い込んでいる男と言い争う気はなかったので席を譲った。傍聴席には私と彼しかいなかったのだから、どこに座ってもいいはずなのに、彼は会社を背負っているプライドがあったのだろう。
県庁には記者クラブがあって、記者クラブに入っていなければ知事会見の席には出られなかった。新聞という表現の自由を代表する仕事の場も中身は極めて封建的だった。国会閉会後の安倍首相の会見を見ても、まるで所信表明を聞かされているようだ。記者の質問にも的外れな答えなのに、食い下がる質問者はいなかった。
『インファクト』編集長の立岩陽一郎氏が、この会見を「総理慰労会」と批判していたがうまい表現だ。前法相の河井克行議員と妻の案里議員が買収容疑で逮捕された。立憲民主党の枝野党首は安倍首相の責任を記者に、「焼きが回った。退陣すべきだ」と語った。
「焼きが回る」とは、切れが悪くなったとか、能力が落ちたという意味なので、枝野さんは安倍さんを評価していたことになる。野党党首なら安倍首相の任命責任を追及し、自民党政治の腐敗の構造に切り込まなくてはならないのに、全く鋭さに欠けている。
記者も政治家も、安定の上に胡坐をかいている。投票した私たち国民も、そんなところを気にしながらも、政治を変える意欲が無いから同罪と言える。