友々素敵

人はなぜ生きるのか。それは生きているから。生きていることは素敵なことなのです。

中国革命の現実

2014年01月15日 18時55分46秒 | Weblog

 『ワイルド・スワン』を読み終えて、重い気持ちになっている。400ページ近くある上下2巻の長編だったけれど、読み出したらあっという間に終わった。この本が話題になったのはいつ頃だっただろう。おそらく20年くらい前になると思う。中国人一家の百年ほどの歴史を綴ったものだ。清朝が滅亡して中華民国が成立、毛沢東の共産党支配へと変わる。その毛沢東が死去するまでの歴史が舞台の物語である。

 中華民国は戦国時代のように軍閥が割拠し、外国が進出した。著者の祖母の父親は、満州の軍閥政府の将軍の妾として娘を売り込む。そんな時代だった。ところが満州は日本が支配し、満州国を作ってしまう。著者の母親はそんな混乱時に生まれた。その頃、毛沢東が率いる中国共産党は延安を拠点に活動を始める。軍閥の無法ぶりに対して共産軍は規律正しかったし、地主から土地を取り上げ農民に分け与えたので、共産党は農村部に支配地域を広げていった。正義感の塊のような著者の父親は共産党員となり、共産軍に参加する。

 著者の母親は女学校へ進み、正義感から共産党を支援する。誰もが人間らしく生きられる社会を目指すふたりは、国民党と共産党の内戦が激しくなる頃に結婚し、四川省で役人として国家建設に取り組む。ところが国民党との戦いが終ると、国民党につながる人々のあぶり出しが始まる。そしてさらに党内の走資派狩りが行なわれ、続いて文化大革命となり反対派を弾劾することが日常的に行なわれる。

 文化大革命が進むと2つの派に分かれて暴力的な対立になる。こんな中国の革命の中で信念を貫く父親は精神を病む。自分よりも党を大事にする夫に不満を抱いていた母親は、夫の正しさを認めながら現実的な方策を選択する。父よりも母よりも毛沢東が好きだった少女は、憎しみ合い傷つけ合い殺すことも厭わない革命に疑問を持つようになるが決して表に出さない。やがて毛沢東が死に、文革の首謀者が失脚し、著者はイギリスへ留学、中国が大きく変貌した様子を描写して物語は終る。

 凄まじい対立と抗争、拷問と弾劾、両親はよく生きてこられたと思う。思想など持たなければ、苦悩することもないし、理想の実現に向かっていくこともないのに、現実の社会は殺し合うほどの恐怖に満ちている。革命に関心のない人々までも嬉々として弾劾に参加する。革命はいつもどこでも殺し合いである。何という不条理、何という理不尽なのだろう。

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