昼食をとるために中華料理店に入って注文し、雑談していた時、一番若くてよく働く男が急に、「あっ、イカン」と言い出し、腰の辺りを押さえてうずくまってしまった。ビックリして「どうしたの?」と尋ねると、「やらかしてしまった」と苦痛の顔で答える。
5年前にも腎臓の結石で救急車で運ばれたことがあるが、「その症状が今度は左側に出た」と言う。酒を飲まない彼が、「どうしてなのか分からん」と顔をしかめる。午後からは雨になりそうだし、井戸掘りも相変わらずうまくいかないし、「今日はここまでにしよう」と先輩が言う。
井戸掘りは新しい器具を作り、諦めずに挑戦するけれど、それぞれに思いが違っていて、なかなか進まない。底に石があることは確かだが、勝手に「大きな石だから無理だ」と言ってみたり、「この器具ではダメだ」と諦めたり、進まないとチームワークが悪くなる。
あれほど「根気よく、じっくりやろう」と言い合ってきたのに、苦しくなるともう諦めムードが支配し、投げやりになってしまう。人間はそんなものなのかも知れない。アメリカの大統領選挙はまだ決着がつかないが、両陣営が共に罵倒し合っている。
食事もそこそこに店を出て、作業場を整えてすぐに帰ってきた。彼は歩けないほどではなかったので、カミさんに事情を話して看病をお願いした。大事にならないことを祈るばかりだ。天気予報通りに雨が降ってきた。今日は立冬、パソコンの画面に名古屋は13度と出ている。
これから寒さは厳しくなるだろう。井戸掘り作業はいっそう難しくなる。最後の手段は、スコップで大きく穴を掘っていく方法だが、場所が狭いから困った。もう、9日間も通っているのに、依頼主さんも困っているだろう。