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アブラハムとダイエット

2012年01月22日 19時46分52秒 | Weblog

 『天声人語』にこんな書き出しの記事があった。「アブラハムなる名を聞いて、『おなかの廻りにポテンと脂肪のついた男』を想像したのは作家の向田邦子だ」。それがいったいどうつながっていくかと言うと、肥満からダイエットとなり、「国会と減量は英語で同じつづり(Diet)である」と述べ、「比例80減、小選挙区5減という民主党の減量プランは、大政党を利するお手盛りにみえる。面倒でも、1票が重すぎる選挙区をとことん統廃合すれば、格差の解消と減量の一石二鳥だろう」と展開していた。

 

 新約聖書を読んだことのある人は覚えていると思うけれど、最初に出てくる『マタイによる書』は「アブラハムの子、ダビデの子、イエス・キリスト」とあり、「アブラハムはイサクの父、イサクはヤコブの父」と系図が書かれている。14代目のダビデはイスラエル建国の王であり、キリストの父であるヨセフへとつながっていく。キリストはヨセフの婚約者であったマリアから生まれているので、血のつながりはない。神がマリアのお腹を借りただけなのだから当然だけけれど、あくまでもアブラハムの血を受け継いでいることが重要なのだ。

 

 それくらい、旧約聖書の中ではアブラハムは重要な人である。キリストを神とは認めていないユダヤ教もキリスト教の後から生まれたイスラム教もアブラハムを聖人と称えているという。「初めに神は天と地を創造された」で始まる旧約聖書の『創世の書』は、アブラハム一族の書ともいえる。神はアブラハムに「父の家を去って、私が示す地に行け」と言われる。アブラハムは一族を連れてユーフラテス川の下流の町ウルを発ち、川沿いに北上し高地メソポタミアのハランを経て、今のシリア・ヨルダンを通りエジプトまで行く。そして再びパレスチナに戻り、そこに住み着いた。

 

 神がなぜアブラハムのこのような旅をさせたのか分からないが、アブラハムの一族は大いに栄えたようだ。確かに、アブラハムは神の命じられることを守る人である。息子のイサクを連れて山に登り、いけにえに捧げることも厭わなかった。神がもっとも信頼したのも当然である。彼の妻は長い間子どもができなかった。そこで彼女は奴隷であるエジプト人の女にアブラハムの子を産ませている。アブラハムは一族の長であったから、他の女にも子どもを産ませたのか分からないが、神が約束したとおりに「空の星」のように増えた。

 

 古代人の男女の関係は、旧約聖書を読む限りでは鷹揚というか、産むことに重点を置いている。アブラハムと一緒に旅をしていた甥のロト一家は、四海近くのソドムに定住するが、しかし、この町は性的に乱れていたので神は焼き払うことにした。そこでロトに町を出るように言われ、ロトとふたりの娘は助かった。けれど、「この地のならわしでは、私たちとめおとになる男はいない。お父さんにぶどう酒を飲ませ、彼といっしょに寝ましょう。そうすれば、お父さんに子孫を残すことができるでしょう」。こうしてロトのふたりの娘は、父の子を身ごもったとある。近親相姦は性の乱れとは考えていないのだ。

 

 民主党の提案も確かに身勝手だ。それで消費税増税への取引にしようというのも姑息だ。ダイエットの前に根本から考え直して欲しいと思う。

コメント
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