チューリップが随分伸びてきた。花の下が長い茎のチューリップは、助平なオジさんと同じように「花の下がなが~い」と言われることを快く思っていないだろう。そのせいなのか、今年のチューリップは背丈が揃っていない。桜がもうすっかり咲く準備が整っているのに、チューリップの方はぐんぐん伸びたものもあればまだ葉の中に隠れているものもある。
「あなたは競争社会で生きたことがないのよ」とカミさんに言われた。そんなことはない。子どもの頃から社会は競い合いであった。小学校では成績が公表されることはなかったけれど、中学に入ったらいきなり1番から順番に張り出されたり、体育館に集められて成績順に並ばされたりした。高校は進学校だったから、試験が終われば成績が公表された。運動会だって、写生大会だって、学芸会だって、みんな競い合いだった。
しかし、よく考えてみると、そんな社会が嫌いでいかにも関心がないふりをしていたように思う。順位の発表を見ないようにしていた。これは大人が仕組んだ悪だと考えるようになった。自分は出来るだけそれから遠くに身を置くように努めるようになっていた。そんなことをいうといかにも奇麗事のように聞こえる。恋愛だって、異性を取り合う競い合いだ。ああ、確かにそんな気がする。
私が好きになった彼女の周りには男たちがいた。だから、それは取り合いの競争社会であったはずだ。そんな時だけはなぜか、自分は勝てると思っていた。どんな男たちよりも自分は彼女を愛している。それに気が付かない彼女ではないはずだと勝手に思っていた。そう思っていたのに振られたこともあるけれど、基本的には競争社会であることを心のうちでは認めていたが、生き方としては無視するように生きてきたのだろう。それでカミさんは「競争社会で生きたことがない」と言うのだろう。
いや、そうではなくて、「競争することからいつも逃げてきたのよ」と見抜いているのかもしれない。自分では地域新聞を立ち上げ、毎年広告収入を伸ばし、事業を拡大してきたつもりでいたが、それは教員という社会で生きられなかったために、逃げた道だったのだと言いたいのだろうか。生活が安定してきたのに、首長選挙に立候補したのも、挑戦ではなく逃げだったのよという指摘だったのか。
もっとも難しい道を選んでいるようで、実は競争社会の現実から回避していることを押し隠しているとカミさんの洞察力が言わしているのかもしれない。確かに、考えてみれば私も私の兄と同じ類で、競争が苦手なのかもしれない。兄は足が速いのに優しかったから、後から来る友だちが気になったのだろうけれど、私は負けることが嫌だったから競争せずに過ごしただけかもしれない。
「あなたは競争社会で生きたことがないのよ」とカミさんに言われた。そんなことはない。子どもの頃から社会は競い合いであった。小学校では成績が公表されることはなかったけれど、中学に入ったらいきなり1番から順番に張り出されたり、体育館に集められて成績順に並ばされたりした。高校は進学校だったから、試験が終われば成績が公表された。運動会だって、写生大会だって、学芸会だって、みんな競い合いだった。
しかし、よく考えてみると、そんな社会が嫌いでいかにも関心がないふりをしていたように思う。順位の発表を見ないようにしていた。これは大人が仕組んだ悪だと考えるようになった。自分は出来るだけそれから遠くに身を置くように努めるようになっていた。そんなことをいうといかにも奇麗事のように聞こえる。恋愛だって、異性を取り合う競い合いだ。ああ、確かにそんな気がする。
私が好きになった彼女の周りには男たちがいた。だから、それは取り合いの競争社会であったはずだ。そんな時だけはなぜか、自分は勝てると思っていた。どんな男たちよりも自分は彼女を愛している。それに気が付かない彼女ではないはずだと勝手に思っていた。そう思っていたのに振られたこともあるけれど、基本的には競争社会であることを心のうちでは認めていたが、生き方としては無視するように生きてきたのだろう。それでカミさんは「競争社会で生きたことがない」と言うのだろう。
いや、そうではなくて、「競争することからいつも逃げてきたのよ」と見抜いているのかもしれない。自分では地域新聞を立ち上げ、毎年広告収入を伸ばし、事業を拡大してきたつもりでいたが、それは教員という社会で生きられなかったために、逃げた道だったのだと言いたいのだろうか。生活が安定してきたのに、首長選挙に立候補したのも、挑戦ではなく逃げだったのよという指摘だったのか。
もっとも難しい道を選んでいるようで、実は競争社会の現実から回避していることを押し隠しているとカミさんの洞察力が言わしているのかもしれない。確かに、考えてみれば私も私の兄と同じ類で、競争が苦手なのかもしれない。兄は足が速いのに優しかったから、後から来る友だちが気になったのだろうけれど、私は負けることが嫌だったから競争せずに過ごしただけかもしれない。