冬(ふゆ)になると、こたつを使う家庭(かてい)もあると思うのですが…。なぜか、そこに入ってしまうと、誰(だれ)も出たがらなくなってしまうのはどうしてなのか? 手の届(とど)くところに必要(ひつよう)な物(もの)をそろえたりするのは当たり前で…。外(そと)にいる人には、それを取ってとか、あれが欲(ほ)しいとか、わがまま放題(ほうだい)になってしまう。
こたつの弊害(へいがい)については、誰もが思い当たることがあるのでは?
ここにも一人、こたつのとりこになってしまった娘(こ)が――。彼女は一人暮(ぐ)らしなのだが、通販(つうはん)で見つけたこたつを思わず購入(こうにゅう)してしまった。それが届くと、彼女の生活(せいかつ)はガラリと変わった。こたつの周(まわ)りには雑誌(ざっし)が積(つ)まれ、いろんなリモコンやお菓子(かし)の類(たぐ)いなどが集(あつ)められている。休みの日には、友達(ともだち)から誘(さそ)われても出かけようとはしなかった。
寒波(かんぱ)に襲(おそ)われたある休日のこと。彼女はいつものように朝からこたつで丸くなっていた。一日中ごろごろと過(す)ごすつもりのようだ。昼食後(ちゅうしょくご)、彼女はこたつの中で昼寝(ひるね)をしてしまった。目が覚(さ)めた彼女は、トイレに行こうとこたつから出ようとした。だが、どういう訳(わけ)か、足が動かない。彼女はこたつの中を覗(のぞ)いて、思わず叫(さけ)び声をあげた。赤い光の中に見えたものは、根(ね)っ子のようなものだった。彼女は必死(ひっし)にもがいてみた。その時、手につかんだ物があった。それは、こたつの取扱説明書(とりあつかいせつめいしょ)。その注意書(ちゅういがき)にこうあった。
<こたつの中で眠(ねむ)ってしまうと、根が生(は)えることがまれにあります>
<つぶやき>あなたも注意してね。根が生えたら、ますます出られなくなっちゃうから。
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とある地域(ちいき)で、人が突然(とつぜん)いなくなる事件(じけん)が続いていた。警察(けいさつ)は事件に関連性(かんれんせい)はないとして、進んで捜査(そうさ)をすることはなかった。しかし、一人の記者(きしゃ)が地道(じみち)に取材(しゅざい)を始めていた。
記者は一人の人物(じんぶつ)に目をつけた。その人物は、失踪(しっそう)した人たちと何らかの接点(せってん)があった。記者はその人物に取材を申(もう)し込(こ)んだ。その人物は、<一人でなら>という注文(ちゅうもん)をつけた。
約束(やくそく)の場所(ばしょ)は閑静(かんせい)な住宅地(じゅうたくち)。どうやら自宅(じたく)のようだ。家の中に入った記者は驚(おどろ)いた。そこはまるで引っ越ししたあとのように、家財道具(かざいどうぐ)など何も置かれていなかった。通された部屋(へや)にだけ小さなテーブルと椅子(いす)が置かれていた。それと、なぜか姿見(すがたみ)が――。
進められた椅子に座(すわ)ると、ちょうど姿見に相手(あいて)の姿が映(うつ)って見えた。記者は切り出した。
「あなたの周(まわ)りで何人も人間(にんげん)が消(き)えています。そのことについて何か思い当たることは?」
相手は無表情(むひょうじょう)に答(こた)えた。「そうなんですか…。それは、知りませんでした」
「知らない? そんなはずはないでしょ。あなたが拉致(らち)したんじゃないんですか?」
相手は何も答えず、記者を睨(にら)みつけた。記者は身(み)を守(まも)るために言った。
「私に何かあったら、今まで取材したことが記事(きじ)になりますよ。手は打(う)ってあるんです」
相手が握(にぎ)った左手を広げると、そこにはUSBがあった。それを見た記者は目を丸(まる)くした。それは編集長(へんしゅうちょう)に渡(わた)しておいたものだった。記者は思わず、「どうして…それを…」
何の前触(まえぶ)れもなく、記者の身体(からだ)が姿見に勢(いきお)いよく吸(す)い込まれていった。
<つぶやき>こ、これは異星人(いせいじん)の侵略(しんりゃく)でしょうか? 消えた人たちはいったいどこへ…。
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今朝(けさ)は台風(たいふう)の影響(えいきょう)でひどい天候(てんこう)になっていた。テレビ局(きょく)の前では、クルーたちが屋外中継(おくがいちゅうけい)をするために慌(あわ)ただしく準備(じゅんび)をしていた。そこへ中継担当(たんとう)のお天気姉(てんきねえ)さんが、挨拶(あいさつ)をしながらやって来た。彼女を見たディレクターは驚(おどろ)いて駆(か)け寄ってきて言った。
「どうしたの? その衣装(いしょう)……」
彼女は短(みじか)めのワンピースを着ていた。外(そと)は、横殴(よこなぐ)りの雨が降(ふ)っている。
彼女は、ちょっと恥(は)ずかしそうに、「ちょっと、攻(せ)めすぎですかねぇ?」
「いやいや、こんな天気にそれはないだろ。外は嵐(あらし)なんだぞ。踏(ふ)ん張(ば)って立ってないと飛(と)ばされちゃうくらいの…。君(きみ)だって、分かるだろ。それくらい…」
ディレクターは、最悪(さいあく)の事態(じたい)を考(かんが)えていた。これは、間違(まちが)いなく放送事故(ほうそうじこ)になるだろう。クルーたちも加(くわ)わって、彼女を何とか止(と)めようとした。でも彼女は、
「だって、あたし今日が初日(しょにち)なんですよ。可愛(かわい)くいきたいんですけど…」
ディレクターは説得(せっとく)するように、「だから、ね。合羽(かっぱ)を着てもらわないと、濡(ぬ)れちゃうから。傘(かさ)なんか、とてもさせないんだよ」
彼女は口を尖(とが)らせて、「じゃあ、スタジオでやらせてください」
「君は、中継の担当だろ? 外の様子(ようす)をちゃんと伝えてもらわないと。それが、君の仕事(しごと)なんだよ。さぁ、合羽を用意(ようい)してあるんだから、それを着てくれ」
「でも…。あれ、可愛くないんですけど…。可愛い色の合羽ないんですか?」
<つぶやき>あくまでも、見た目重視(じゅうし)なんですね。可愛い服は天気の良い日にしましょ。
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最近(さいきん)、まったくツイてない男。その男からさんざん愚痴(ぐち)を聞かされている女。女は明(あき)らかにうんざりしていた。女は、さも決(き)まり切ったことのように男に訊(き)いた。
「あんたさ、女の子を泣(な)かせてるでしょ」
男は誤魔化(ごまか)そうとしたが、それを認(みと)めて、「俺(おれ)は、ただ…、他(ほか)に好きな娘(こ)が……」
「最低(さいてい)ね。そんなことやってると、どんどん道を踏(ふ)み外(はず)すわよ」
「そ、そんな大袈裟(おおげさ)な…。俺にツキがないのは、女とは関係(かんけい)ないだろ」
女は呆(あき)れたように、「いやいや、甘(あま)いなぁ。因果応報(いんがおうほう)ってこと知らないの?」
「何だよ、それ…。俺だって、女を泣かせてばかりじゃないからなぁ」
「じゃあ、さ…。ここは欺(だま)されたと思って、女の子に優(やさ)しくしてみなよ。そしたら、きっとツキも戻(もど)ってくるかもしれないよ。どう? 試(ため)してみない?」
納得(なっとく)がいかないと男が首(くび)を傾(かし)げていると、女はここぞとばかりにまくしたてた。
「じゃあ…。ここ、おごってよ。そしたらさ、明日は良いことがあるかもしれないよ」
女はそそくさと席(せき)を立って、「じゃあ、ごちそうさまでした。またねぇ…」
男は突然(とつぜん)のことに言い返(かえ)すこともできず、呆気(あっけ)に取られて女を見送(みおく)ってしまった。我(われ)に返った男は吐(は)き捨(す)てるように呟(つぶや)いた。
「お前は、女の子じゃないだろ。食い逃(に)げすんなよ」
<つぶやき>愚痴を聞いてもらったんだから許(ゆる)してあげて。でも、因果応報ってあるよ。
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川相琴音(かわいことね)は、初音(はつね)のところへ戻(もど)って来ると無愛想(ぶあいそう)に言った。
「お姉(ねえ)ちゃんも、やるじゃない。怪我(けが)は…大丈夫(だいじょうぶ)なの?」
初音は足を動かそうとするが痛(いた)みで顔をゆがめて、「ちょっと、ムリみたい…」
いつの間(ま)にか、男の身体(からだ)は消(き)えていた。そこへ、月島(つきしま)しずくが現(あらわ)れた。しずくは、初音の具合(ぐあい)を見ると言った。「心配(しんぱい)ないわ。アキのところへ飛(と)ばすね。あとは任(まか)せて…」
しずくが手をかざすと、初音の姿(すがた)はかき消えた。しずくは、身構(みがま)えている琴音に言った。
「あなたも一緒(いっしょ)に行きましょ。初音のこと心配なんでしょ」
琴音は強(つよ)がるように、「そ、そんなんじゃないわよ。わたしは、あなたたちとは…」
「気にしないで。あなたのしたいようにすればいいわ。その前に――」
しずくは琴音の頭に手を置(お)いた。すぐに光が現れて、琴音を包(つつ)み込んだ。琴音は、突然(とつぜん)のことに身動(みうご)きすることもできなかった。光が消えると、しずくは微笑(ほほえ)んで、
「あなたの重荷(おもに)を取り除(のぞ)いたわ。もう、黒岩(くろいわ)のところへ戻らなくてもいいのよ」
「何を言ってるの…。そんなこと、できるわけないわ」
「あなたは自由(じゆう)よ。監視(かんし)されることもないし、好きなことをしてもいいの」
「ほんとに……。なんか…信じられない。また、お姉ちゃんと会っても…」
「もちろん。じゃあ、一緒に行きましょ。私の手を取って――」
<つぶやき>姉妹(しまい)を引き離(はな)していたものがなくなったようです。また、仲間(なかま)が加(くわ)わるのか?
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