みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1032「新婚みたいに」

2021-02-18 17:47:37 | ブログ短編

 息子(むすこ)が両親(りょうしん)に結婚(けっこん)することを打(う)ち明けた。息子は反対(はんたい)されないかドキドキだった。でも、両親は大喜(おおよろこ)びで、特(とく)に父親は上機嫌(じょうきげん)で言った。
「じゃあ、住(す)むところを探(さが)さないとなぁ。職場(しょくば)の近くがいいか…、それとも…。おい、どうなんだ? そこんところは…」
 息子は拍子抜(ひょうしぬ)けして、「反対(はんたい)とかしないの? 姉(ねえ)ちゃんの時は大反対だったのに」
「あのな、娘(むすめ)と息子は違(ちが)うんだよ。お前も、娘をもてば分かるさ。で、どうなんだ?」
「えっ、僕(ぼく)はここでもいいかなって…。彼女も、同居(どうきょ)してもいいみたいだし」
「何を言ってるの?」母親が口を挟(はさ)んだ。「ダメよ、そんなのは。ねぇ、お父さん」
「そうだぞ。新婚早々(しんこんそうそう)、わしらと暮(く)らすことはない。嫁(よめ)さんのことも考えてやれ。――そうだ。ちゃんと挨拶(あいさつ)しないといけないなぁ。今度(こんど)の休(やす)みにでも…。なぁ、母さん」
「分かったよ。じゃあ、彼女に訊(き)いてみるから…」
「それとだ…」父親は改(あらた)まって言った。「実(じつ)は、この家をリフォームしようと思うんだ。お前が、家を出るなら好都合(こうつごう)だ。なぁ、母さん。あの計画(けいかく)をすすめようか?」
「そうですねぇ。なんだか、ワクワクしてきました。いつから始めます?」
「ちょっと待ってよ。僕、家を出るかどうか決(き)めてないから。勝手(かって)に話を進(すす)めないでよ」
 両親は息子のことなどそっちのけで、「そうだなぁ。結婚式(けっこんしき)が終わったら、すぐに始めることにしよう。これで、わしの念願(ねんがん)の書斎(しょさい)と、母さんの趣味(しゅみ)の部屋(へや)がもてるぞぉ」
<つぶやき>子供が片(かた)づけば夫婦(ふうふ)だけの生活(せいかつ)。昔みたいに…。でも一人の時間も大切(たいせつ)よ。
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1031「食い違い」

2021-02-16 17:45:21 | ブログ短編

 勤(つと)めていた会社(かいしゃ)がいきなり倒産(とうさん)して、彼女は無職(むしょく)になってしまった。でも、彼女は寿退社(ことぶきたいしゃ)するつもりだったので、その時期(じき)が早まっただけだと思っていた。しかし、付き合っていた彼から、思いも寄(よ)らない言葉(ことば)が返(かえ)ってきた。
「倒産って…、これからどうするんだよ。転職先(てんしょくさき)は決(き)まってるのか?」
「なに言ってるの? 結婚(けっこん)したら会社を辞(や)めるって言ったでしょ」
「結婚はまだ先(さき)だろ。これから金もかかるし、二人で貯金(ちょきん)しようって決めたじゃないか」
「それは大丈夫(だいじょうぶ)よ。ちゃんと貯蓄(ちょちく)あるし…。あたし、結婚したら専業主婦(せんぎょうしゅふ)に――」
「それはダメだ。結婚しても仕事(しごと)は続(つづ)けてもらわないと。僕(ぼく)の給料(きゅうりょう)だけじゃ無理(むり)だから」
「でも…。結婚したら、仕事辞めてもいいって言ったじゃない。あなた、言ったでしょ?」
「それは…、子供(こども)ができたらの話だよ。それまでは、ちゃんと働(はたら)いてもらわないと」
「子供は、すぐにできるわよ。あたし、がんばるから」
「ちょっと待ってよ。僕は、子供はまだいいかなぁ。だって、しばらくは二人だけで過(す)ごしたいじゃないか。二人で、旅行(りょこう)とかも行きたいし…。君(きみ)だって、そう思うだろ?」
「そりゃ、そうだけど…。でもね、子供は――」
「3年はいいかな。それまでは仕事して、子供のために貯金を増(ふ)やそうよ。その方がいいと思わないか? だから、仕事探(さが)そう。結婚は仕事が見つかるまで伸(の)ばしてもいいから…」
<つぶやき>何と不甲斐(ふがい)ない男でしょう。〈俺に任せとけ〉とか、言ってくれないのかなぁ。
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1030「しずく121~おとなり」

2021-02-14 17:45:47 | ブログ連載~しずく

 水木涼(みずきりょう)は、烏杜(からすもり)高校の近くにあるアパートに住(す)むことにした。ここなら、朝寝坊(あさねぼう)しても学校(がっこう)に遅刻(ちこく)しなくてすむからだ。
 朝、涼は余裕(よゆう)で部屋(へや)を出た。その時、隣(となり)の部屋のドアが開いた。中から出てきた人を見て、涼は思わず呟(つぶや)いた。「初音(はつね)…? な、なんで…」
 それは、川相(かわい)初音だった。初音はいつもと変わらず返事(へんじ)を返した。
「今日は寝坊しなかったのね。良かったわ。起こしに行こうかと思ってたのよ」
「何で隣にいるんだよ? 昨日(きのう)、そんなこと一言(ひとこと)も言ってなかっただろ」
「さぁ、行きましょ。せっかく早く起きたのに、遅刻したら何にもならないわ」
 初音はさっさと歩き出した。涼は、慌(あわ)てて部屋の鍵(かぎ)をかけると、初音を追(お)いかけた。
「ちょっと…待てよ。あっ、まさか…。先生(せんせい)に住むとこ探(さが)してもらったのか?」
「そうよ。先生から、あなたのこと頼(たの)まれたのよ。ちゃんと見てあげるようにって――」
 二人は何だかんだと言い合いながら、いつの間(ま)にか仲良(なかよ)しに戻(もど)ったようだ。校門(こうもん)の前まで来ると、初音は立ち止まった。初音にとっては久(ひさ)しぶりの学校だ。初音は、ここに戻(もど)るつもりはなかった。でも、しずくから学校に登校(とうこう)するように言われたのだ。
 教室に入ると、人だかりができていた。その中心(ちゅうしん)にいた生徒(せいと)を見て、二人は目を見張(みは)った。そこにいたのは、神崎(かんざき)つくねだったのだ。
<つぶやき>つくねが戻って来ました。でも、どうして…。あの父親から逃(に)げ出したのか?
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1029「進路希望」

2021-02-12 17:55:32 | ブログ短編

 学校の進路指導(しんろしどう)で個別面談(こべつめんだん)をしている先生(せんせい)。何だか難(むずか)しい顔で生徒(せいと)に言った。
「何だ、これは? 何でこんなことを進路希望(きぼう)に書いたんだ。お前で5人目だぞ。自分のことなんだから、もっと真面目(まじめ)に考(かんが)えろよ」
「先生ってそんなに人気(にんき)あったの? 知らなかったぁ。じゃあ今から頑張(がんば)らないと、だね」
「何を頑張るんだ? いいか、こんなふざけた…先生と付き合うとか、結婚(けっこん)するとか…」
「いいじゃん。先生、若(わか)いし、独身(どくしん)だし…。あたし、年上(としうえ)がいいのよねぇ」
「ふざけるんじゃない。先生と生徒が付き合えるわけないだろ。いいか、山田(やまだ)。お前の将来(しょうらい)のことなんだぞ。お前には、やりたいこととか、夢(ゆめ)とかないのか? 何か、あるだろ?」
「そんなこと言われても…。あたし、勉強(べんきょう)できないし…。別(べつ)にやりたいことも…」
「じゃぁ、何か好(す)きなこととか…、興味(きょうみ)のあることとか…。ないのか?」
「あたし、就職(しゅうしょく)するなら、専業主婦(せんぎょうしゅふ)がいいと思うのよ。だって、会社(かいしゃ)を見つけるのも、男を見つけるのも、同じじゃない? だったら、男を優先(ゆうせん)した方が…」
「あのなぁ……。そりゃ、確(たし)かに、それもアリかもしれんが…。でもな、進学(しんがく)や就職をすれば、いろんな人と出会(であ)えて、見識(けんしき)が広(ひろ)がると、先生は思うぞ」
「先生、好きな食べ物ってなに? 来年、卒業(そつぎょう)だし、今のうちに料理(りょうり)習(なら)おうと思うの」
「おい、山田。何で、結婚を前提(ぜんてい)に話を進(すす)めるんだ? 先生は、お前とは――」
<つぶやき>今どきの娘(こ)は何を考えているのか…。このままだと押(お)し切られてしまうかも。
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1028「結婚前夜」

2021-02-10 17:51:13 | ブログ短編

 明日は娘(むすめ)の結婚式(けっこんしき)。娘は両親(りょうしん)を前にして感謝(かんしゃ)の言葉(ことば)を――。
「お母さん、今までありがとうね。あたし、ちゃんと幸(しあわ)せになるから…。これからは一緒(いっしょ)にいられなくなっちゃうけど、あたしは、いつまでもお母さんの子供(こども)だからね。これからも、ずっと元気(げんき)でいてよ」
「ありがとう。あなたは、あたしの自慢(じまん)の娘よ。しっかりやりなさい。ふたり、仲良(なかよ)くするのよ。さぁ、もう寝(ね)なさい。明日は早いんだから…。寝坊(ねぼう)しちゃダメよ」
「そんなこと分かってるわよ。じゃあ、お休(やす)みなさい」
 娘は自分(じぶん)の部屋(へや)へ行ってしまった。父親は不満(ふまん)そうに母親に愚痴(ぐち)をこぼした。
「何でだよ。俺(おれ)には何もないのか? 父親にも、何か一言(ひとこと)あっても――」
「ひがまないの。あの娘(こ)、きっと恥(は)ずかしいのよ。そういう娘(こ)だったじゃない」
 その時、娘が戻(もど)ってきて父親に言った。「忘(わす)れてたけど、お父さんさ…」
 父親は座(すわ)り直(なお)して、「何だ? 何でも言ってみなさい。恥ずかしいことなんか――」
「なに言ってるの? あのさ、お母さんに面倒(めんどう)かけさせないでよ。あたし、手伝(てつだ)えないんだから…。自分のことは自分でしないと。分かってる? 家事(かじ)もちゃんとやってよね」
「そ、そんなことは…分かってるよ。いや…、そういうことじゃなくて、もっと他(ほか)に…」
 娘はスッキリしたように、「じゃあ、もう寝るね。お休みなさい。お父さん、明日はちゃんとしてよ。披露宴(ひろうえん)で酔(よ)っ払(ぱら)ったりしたら許(ゆる)さないから」
<つぶやき>やはり、これは恥ずかしがっているのでは…。きっとそうだと信じたいです。
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