僕(ぼく)は、十数年ぶりに故郷(ふるさと)へ戻(もど)ってきた。小学生の頃(ころ)、親(おや)の転勤(てんきん)で離(はな)れていたのだ。
引っ越しをした翌日(よくじつ)、小学校のときの旧友(きゅうゆう)が訪(たず)ねてきた。そいつとは、昔(むかし)よく二人で遊(あそ)び回ったものだ。――酒(さけ)を飲みながら、子供の頃(ころ)を懐(なつ)かしみ、あれこれと話はつきなかった。旧友は、ある同級生(どうきゅうせい)の話をした。そいつは陰気(いんき)な感じのヤツで、よくからかったりして何度も泣(な)かせていた。
――僕は、ある光景(こうけい)が頭に浮(う)かんだ。そういえば…、引っ越しの前日(ぜんじつ)、そいつを廃屋(はいおく)の倉庫(そうこ)に閉(と)じ込めて……。その後、どうなったんだろう? 僕は旧友に、
「なぁ、そいつ、今はどうしてるか、知ってるか?」
「それがさぁ…。いなくなっちゃったんだよ。家出(いえで)したんじゃないかって、噂(うわさ)になって。結局(けっきょく)、学校にも来なくなったし、それっきりどうなったのか――」
翌日、家に宅配(たくはい)が届(とど)いた。差出人(さしだしにん)の名前(なまえ)を見て、僕は驚(おどろ)いた。そいつだ、行方不明(ゆくえふめい)の…。
「なんだ、生きてるじゃないか…。でも、どうして僕に…」
僕は、宅配の箱(はこ)を開けてみた。中に入っていたのは、薄汚(うすよご)れた子供服(こどもふく)だった。僕は思わず箱を投(な)げ捨(す)てた。その服に見覚(みおぼ)えがあったのだ。それは、そいつの…。あのとき着(き)ていた服に間違(まちが)いなかった。いったい誰(だれ)が…、何のためにこんなことを…。
僕は、あの倉庫へ行ってみることにした。今も残(のこ)っているかどうか分からないけど――。
<つぶやき>これは、復習(ふくしゅう)の序章(じょしょう)かもね。彼はこの災難(さいなん)を乗(の)り越(こ)えることができるのか?
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