みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1174「狩り場」

2021-12-19 17:52:15 | ブログ短編

 そこは繁華街(はんかがい)にあるディスコ。雑多(ざった)な男女が入り混(ま)ざり、身動(みうご)きも取れないほど混(こ)んでいた。音楽(おんがく)が、理性(りせい)や恥(は)じらいをかき消(け)すように大音響(だいおんきょう)で流(なが)れている。
 人混みから女が出てきた。女は火照(ほて)った身体(からだ)を冷(さ)ますように手で扇(あお)いでいる。女がカウンターまでやって来ると、身(み)なりのいい男が声をかけてきた。女は恐(こわ)いもの知らずの若(わか)さで、男に微笑(ほほえ)みかけた。男は女に何かを耳打(みみう)ちすると、女を連(つ)れて店(みせ)の外へ出て行った。
 外は心地(ここち)よい風が吹(ふ)いている。男は、女をビル陰(かげ)の暗(くら)がりに誘(さそ)った。そこには先客(せんきゃく)がいたようで、人影(ひとかげ)がそそくさと立ち去(さ)った。男は女を先(さき)に行かせると、女の後ろに回った。女は酔(よ)っているのか足がふらついている。男は、後ろから女の肩(かた)を優(やさ)しく掴(つか)んだ。
 女は掴まれたことに何の反応(はんのう)も示(しめ)さなかった。まるで、立ったまま眠(ねむ)ってしまったようだ。男は、後ろから女の胸(むね)に手を回した。そして、首筋(くびすじ)に顔を近づけ女の匂(にお)いを嗅(か)ぐと、満足(まんぞく)したように微笑んだ。女は目を開(あ)けたまま身じろぎひとつしなかった。
 男は口を開(ひら)いた。白い牙(きば)が暗闇(くらやみ)に浮(う)かび上がった。男は、女の首筋をひとなめすると、若い張(はり)のある肌(はだ)に牙を突(つ)き立てた。そして、ゆっくり味(あじ)わうようにゴクリゴクリと喉(のど)を鳴(なら)す。女の首筋に赤いものがひとすじ流れた。
 女の身体が崩(くず)れ落ちていく。男は、女の身体を抱(だ)き止めると、軽々(かるがる)と抱き上げた。男の目がまるで猛獣(もうじゅう)のように光を放(はな)った。男は、女を抱いたまま暗闇に消えてしまった。
<つぶやき>繁華街にはこんな危険(きけん)もあるかもしれません。くれぐれもお気をつけ下さい。
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