アキは月島(つきしま)しずくのもとに駆(か)け寄ると、「あたしも行く。いいでしょ?」
柊(ひいらぎ)あずみが口を挟(はさ)んだ。「ダメよ。あなたにはまだ無理(むり)よ。ここにいなさい」
しずくは少し考えるような仕種(しぐさ)をして言った。「分かったわ。じゃあ、涼(りょう)と初音(はつね)で守(まも)ってあげて。あとは先生(せんせい)と私で行きましょ。千鶴(ちづる)さんとあまりはここからサポートしてね」
――同じ頃(ころ)、神崎(かんざき)の研究所(けんきゅうしょ)に数台(すうだい)の車が横付(よこづ)けされた。物々(ものもの)しい感じで数十人の人たちが降(お)りてきた。彼らは玄関口(げんかんぐち)を固(かた)めると、リーダーと思われる人物(じんぶつ)が研究所に入って行く。すぐに、神崎に連絡(れんらく)が入った。神崎は慌(あわ)てて玄関に向かった。
スーツを着た男が言った。「あなたが、所長(しょちょう)の神崎さんですか?」
「ええ、そうですが…。これは、どういうことですか? あなた方は…」
「失礼(しつれい)しました。私、内閣調査室(ないかくちょうさしつ)の小暮(こぐれ)です。今日は、ここの施設(しせつ)の査察(ささつ)を行います」
「査察…、そんな話しは聞いてませんが。いったい誰(だれ)の指示(しじ)ですか?」
「もちろん総理(そうり)からですよ。そして、こちらが…」
後にいた男が言った。「私は、テロ対策室(たいさくしつ)の権藤(ごんどう)です。早速(さっそく)ですが、施設内の案内(あんない)をしていただけますか? 施設内のすべての部屋(へや)を確認(かくにん)させてもらいます」
「テロ対策って…。まさか…、私たちを疑(うたが)ってるのですか?」
神崎は従(したが)うしかなかった。表(おもて)にいた人たちが研究所になだれ込んで行った。
<つぶやき>きっと総理は、神崎が信用(しんよう)できるのかどうか確(たし)かめたかったんでしょうね。
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