みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1438「恋心」

2023-12-15 18:18:39 | ブログ短編

 さえ子は小太郎(こたろう)と結婚(けっこん)して三年。子供(こども)はいないけど二人で仲良(なかよ)く暮(く)らしていた。彼はとっても優(やさ)しいし、気づかいのできる人だった。彼女が作った料理(りょうり)も、ちゃんと美味(おい)しいって言ってくれるし、ちょっと失敗(しっぱい)しても、つぎ頑張(がんば)ろうよってちゃんと残(のこ)さず食べてくれる。誕生日(たんじょうび)や記念日(きねんび)も忘(わす)れずに二人で…。
 さえ子はとっても幸(しあわ)せだった。結婚に不満(ふまん)などなかった。不満はないはずなのに…。でも、最近(さいきん)ちょっと、あれって思うときがあるようだ。この違和感(いわかん)は何なのか…。さえ子はずっと考えていた。そして、彼女は気づいてしまった。
 夫(おっと)が自分(じぶん)のことをちゃんと見ていないのだ。会話(かいわ)をしていても、ベッドの中でさえ目を合わせてくれないのだ。これはどういうことなのか…。どうしてこんなことに…。彼女は頭の中がぐるぐるしてきた。そして、思わず心の声が漏(も)れ始めた。
「そういえば、あたしが髪(かみ)を切ったときも…。買ったばかりのお気に入りの洋服(ようふく)を着たときも…。あの人、何も気づいてくれなかったわ」
 そうなのだ。彼女の夫は、彼女がそばにいることがあたりまえになっていた。彼女のことを、まるで空気(くうき)のように感じているのだ。つまりは、彼女を見ているようで、実(じつ)はまったく見てない。まるで目に入っていないのだ。彼女はすべてに合点(がてん)がいった。このままではダメだと彼女は感じた。そして、打開策(だかいさく)を練(ね)り始めた。
<つぶやき>結婚したら、愛(あい)だの恋(こい)だの考えなくなっちゃうのか? もいちど恋しましょ。
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