その雑貨屋(ざっかや)は古(ふる)びた感じのお店(みせ)だった。でも、知る人ぞ知る…。どんなムリな注文(ちゅうもん)でも即座(そくざ)に答(こた)えてくれる。何でも手に入るお店だ。
そこにヤバそうな感じの男たちがやって来た。そして応対(おうたい)に出た店主(てんしゅ)にこう言った。
「金を持ってきた。頼(たの)んでおいたもん用意(ようい)できてるか?」
店主は怖(こわ)がる様子(ようす)もなく答えた。「ああ、それでしたらお断(ことわ)りしたはずですが…」
「何だと、こら! この店は、何でも調達(ちょうたつ)してくれるんじゃねえのか?」
「うちはしがない雑貨屋ですよ。他(ほか)のものなら…。ちょっと待って下さいねぇ」
店主は店の奥(おく)へ入って行った。男たちが落ち着かない感じで待(ま)っていると、店の奥から別の男たちが飛(と)び出してきた。そして、店の表(おもて)にも――。彼らは刑事(けいじ)だった。ヤバそうな感じの男たちはすぐに逮捕(たいほ)されて連(つ)れて行かれた。
店主が奥から出てくると、店の隅(すみ)で震(ふる)えながら待っていた老人(ろうじん)に言った。
「悪(わる)かったねぇ。何か、お探(さが)しですか?」
老人はかすれた声で答えた。「わしは…タワシがほしいんじゃが…」
店主はにっこり微笑(ほほえ)むと、「あるよ。こっちだ」と、客を案内(あんない)する。
老人は、「あんたは商売上手(しょうばいじょうず)だね。たしいたもんだよ」
「いやいや、そんなことありませんよ。まだまだ未熟者(みじゅくもの)です」
<つぶやき>この店主、何者なのでしょうか? もしこんなお店があったら助(たす)かります。
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