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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0276「手掛かり」

2018-08-01 19:01:04 | ブログ短編

 刑事(けいじ)たちは強盗犯(ごうとうはん)のアジトに踏(ふ)み込んだ。折(おり)しも、人質(ひとじち)の女性にナイフを突(つ)き立てる寸前(すんぜん)だった。刑事たちの奮闘(ふんとう)により、犯人(はんにん)たちは全員逮捕(たいほ)された。
 人質の女性は、縛(しば)られていた縄(なわ)をほどかれてほっとした顔で言った。
「もう、遅(おそ)いです。もう少しで、あたし、殉職(じゅんしょく)するところだったんですよ」
「ばか野郎(やろう)! お前が勝手(かって)な行動(こうどう)をとるからだろう」先輩(せんぱい)の刑事は一喝(いっかつ)した。
「すいませんでした」新米(しんまい)刑事はふて腐(くさ)れた顔でちょっとだけ反省(はんせい)したが、「でも、手掛(てが)かりを追(お)って来てくれたんですよね。さすが、先輩」
「何の話だ? そんなの知らんぞ」
「だって、あたし、ちゃんと手掛かりになるように、残(のこ)しておいたじゃないですか」
「なに言ってんだ。いいから、行くぞ」
「えっ。だって、あたしちゃんと分かるように、一枚ずつ落としておいたでしょ」
「はぁ? お前、また何かやらかしたんじゃないだろうな?」
「だから、あの、トラックに押(お)し込められたとき、ちょうどお金が入ってる袋(ふくろ)があって…」
 刑事の顔色(かおいろ)が変わった。「まさか、それをばらまいたとか言うんじゃないだろうな?」
 新米刑事は肯(うなず)いた。先輩の刑事は新米のえり首(くび)をつかんで、
「いくらまいたんだ? お前、始末書(しまつしょ)だけじゃすまないぞ。すぐに拾(ひろ)ってこい!」
<つぶやき>仕事熱心(ねっしん)なのはいいんですよ。でも、命(いのち)を落としては何にもなりませんから。
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