みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0983「愛はあるか」

2020-11-12 17:53:26 | ブログ短編

「そこに愛(あい)はあるのか?」彼は彼女に訊(き)いた。彼女は答(こた)える。
「ええ、あるわよ。だって、あたしのこと大事(だいじ)にするって…言ってくれたわ」
「君(きみ)だって知ってるだろ。あいつのいい加減(かげん)なところ…」
「あの人はとっても優(やさ)しい人よ。ただ、ちょっと誤解(ごかい)されやすいだけよ。悪(わる)い人じゃ…」
「あいつは、誰(だれ)にでも優しいんだ。前の彼女にだって…。俺(おれ)、知ってるんだ。前に付き合ってた彼女のこと…。彼女、言ってたよ。あいつに愛なんてないって。あいつは、自分のことしか考えない人間(にんげん)で――」
「あたしは、その人とは違(ちが)うわ。あたしは、彼のこと信じてる。彼のこと悪く言わないで」
 彼は言葉(ことば)を呑(の)み込んだ。彼女は、彼を見つめて微笑(ほほえ)んで、
「あたし、行くね。もう、あたしのことは忘(わす)れて…。そのほうが、いいの」
「君は、それでいいのか? あいつと一緒(いっしょ)にいて、幸(しあわ)せになれるのか?」
「なるわよ。絶対(ぜったい)に幸せになってみせる。あなたも、奥(おく)さんを大事にしてね。もう、浮気(うわき)なんてしちゃいけないわ。可愛(かわい)いお嬢(じょう)さんもいるんでしょ」
「それは…」彼は小さなため息(いき)をついて、「分かってるよ。君以上(いじょう)の女性(ひと)は現れないさ。最後に、もう一度会ってくれないか? そしたら…」
 彼女は、それには答えなかった。ただ、「さよなら」と微笑みを残(のこ)して去(さ)って行った。
<つぶやき>なんて男たちなんでしょ。真実(しんじつ)の愛はどこへいってしまったのでしょうか?
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