みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0504「おせっかい」

2019-04-01 18:31:38 | ブログ短編

「で、どうして欲(ほ)しいんだ?」男は女に向かって言った。
 女はちょっと困(こま)った顔をして、「そんなこと急に言われても、思いつかないわ」
 男はじれったそうに、「君(きみ)が私を呼(よ)び出したんだ。何か言ってくれないと、こっちも引っ込みがつかないだろ。何かないのか?」
 男は女の顔をじっと見つめて、「あー、なるほど。男にひどく振(ふ)られた顔をしているなぁ。じゃあ、そいつに仕返(しかえ)しをしてやろう」
 女は慌(あわ)てて、「ちょっと待ってよ。あたし、別に振られてなんか…」
「えっ、そんなはずは…。じゃあ、あれだ。ずっと片思(かたおも)いの男がいて――」
「いません。そんな人、いないわよ」女は不機嫌(ふきげん)な顔をする。
 男は女の顔を覗(のぞ)き込み、「そんなはずはない。どう見たって、寂(さび)しい顔をしてるじゃないか。相手(あいて)は誰(だれ)だ? 俺(おれ)が、そいつを振り向かせてやろう」
 女はますます不機嫌(ふきげん)な顔になり、「あなた、何なのよ。もう、あたしの前から消えて!」
 一陣(いちじん)の風が舞(ま)い上がり、男は忽然(こつぜん)と姿(すがた)を消した。女は、手にした急須(きゅうす)を見つめた。
 そこへ、この店の主(あるじ)が顔を出して女に声をかけた。「なかなか良い急須でしょ。年代物(ねんだいもの)らしいんだがね。これを持ってると幸せになれるとか、なれないとか…。そんな曰(いわ)くがあるみたいだよ。本当かどうかは、分かんないけどね」
<つぶやき>欲(よく)のない人にとっては、魔法(まほう)の急須なんて必要(ひつよう)なかったのかもしれませんね。
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