しずくはまだ眠(ねむ)ったままだった。つくねは何かを決意(けつい)するように、しずくの手を強く握(にぎ)りしめてささやいた。
「早く戻(もど)って来て。あなたには、言いたいことたくさんあるんだからね」
つくねが部屋(へや)に戻ると、千鶴(ちづる)があずみに話しかけていた。
「それは厄介(やっかい)ね。人を操(あやつ)る能力者(のうりょくしゃ)か…。そんな相手(あいて)と、どう戦(たたか)うのよ?」
「そうね、分からないわ。私に、能力者を見分けられる能力(ちから)があればいいんだけど…」
二人の話に割(わ)って入ったのはハルだった。「それなら、何とかなるかも」
ハルはポケットから小石(こいし)を取り出した。丸(まる)っこいその石は艶(つや)こそないが、翡翠(ひすい)のような深(ふか)い緑色(みどりいろ)をしていた。ハルはそれをあずみの身体(からだ)に押(お)し当てた。すると不思議(ふしぎ)なことに、その小石が緑の光を放(はな)ち始めた。そして身体から離(はな)すと、光は消(き)えてしまった。ハルは、
「庭(にわ)の掃除(そうじ)をしてたときに見つけたの。よく分かんないけど、能力者どうしが触(ふ)れると光るみたいなんだ。これなら役(やく)に立つんじゃない?」
あずみはその石を受(う)け取ると、手のひらに乗(の)せてつくねに言った。「試(ため)してみて」
つくねがそっと指(ゆび)で触れてみると、また緑の光を放ちだした。つくねは思わず呟(つぶや)いた。
「すごい…。不思議ね、何で光るのかしら? でも、これがあればすぐに見つけられるわ」
「それだけじゃダメよ」千鶴が言った。「わたし達だって操られてしまうのよ。その能力(ちから)をはね返(かえ)す方法(ほうほう)を考えないと、勝(か)ち目はないわ。私も、ちょっと調(しら)べてみるね」
<つぶやき>無謀(むぼう)な戦いになるかもしれません。この先(さき)、どんな試練(しれん)が待っているのか…。
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