私の友だちに〈合(ごう)コンの女王(じょうおう)〉とささやかれている娘(こ)がいる。彼女はスタイルもよくて、誰(だれ)が見ても美人(びじん)の部類(ぶるい)に入る。おまけに社交的(しゃこうてき)で、いつも明るく振(ふ)る舞(ま)っていて――。そんな彼女が、今日は何だかイライラしていた。私を見つけると近寄(ちかよ)って来て、
「昨日(きのう)の合コンは最悪(さいあく)だったわ。あたしに落(お)ちない男はいないはずなのに…。そいつ、あたしと目を合わせようともしないのよ。信じられる? 何て男なの!」
私は戸惑(とまど)いながら訊(き)いてみた。「昨日のって…、大学(だいがく)の…」
「そうよ、気晴(きば)らしのつもりで顔を出してあげたのに…。理工学部(りこうがくぶ)の斉藤(さいとう)! あたしを無視(むし)したのよ。この…、このあたしをよ。許(ゆる)せない。何であたしより串(くし)カツを選(えら)ぶのよ!」
「串カツ…? ああ、そういうお店に行ったんだね」
「そうよ、皆(みな)さん庶民的(しょみんてき)な所が好(この)みみたいで…。そうか、あのお店は、あたしにとってアウェーだったんだわ。だから、あたしの魅力(みりょく)に気づかなかったのよ。きっとそうだわ」
「いや、それは違(ちが)うと思うよ。でも、あなたがそんなこと気にしなくても…」
「気にするわよ。だって、理工学部の斉藤、あいつが、美味(おい)しそうに串カツをほおばる顔が目にちらつくのよ。寝(ね)ても覚(さ)めても、斉藤のことが頭から離(はな)れないの。こうなったらリベンジよ。斉藤を呼(よ)び出しで、高級(こうきゅう)フレンチのお店に連(つ)れて行ってやる」
<つぶやき>これは恋(こい)しちゃったのかな? でも、斉藤君にその気があるのかどうか…。
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