みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1198「自販機」

2022-02-06 17:42:36 | ブログ短編

 それは、いつの間(ま)にかそこにあった。いつ設置(せっち)されたのか分からない。売(う)られているものは、目を疑(うたが)うようなものだった。彼は自販機(じはんき)の前に立って、指(ゆび)を差(さ)しながら呟(つぶや)いた。
「えっと…、恋人(こいびと)、婚約者(こんやくしゃ)、配偶者(はいぐうしゃ)、娘(むすめ)、息子(むすこ)……。これを買(か)い集(あつ)めれば家族(かぞく)ができるってことか? でも、愛人ってのは余分(よぶん)だろ。こんなの買う人、いるのかな?」
 金額(きんがく)を見てみると、一万から十万までになっていた。ちょうど彼は、予定外(よていがい)の収入(しゅうにゅう)があったので、試(ため)しにやってみることにした。
「ここは、やっぱり恋人だろ。金額も一番安(やす)い一万だからな…」
 彼はお金を入れてボタンを押(お)した。すると、カプセルが出てきた。まるでガチャのようだと彼は思った。カプセルを開けてみると、中には電話番号(でんわばんごう)が書かれた紙(かみ)が入っていた。電話をしてみると、女性の事務的(じむてき)な声が聞こえてきた。
「恋人希望(きぼう)でいいですね。どんな感(かん)じの娘(こ)がいいですか?」
 彼は戸惑(とまど)いながらも、「これって、あれですか? 疑似体験(ぎじたいけん)みたいなやつですかね?」
 女性のしゃべり方は変わらなかった。「それは、あなた次第(しだい)ですね。どんなタイプの娘(こ)がいいですか? 希望があればお伺(うかが)いします」
「そこまで選(えら)べるんですか? そ、それは、いいですねぇ…」
「でも、それはお急(いそ)ぎでなければですか…。今ですと、いくつか空(あ)きはあるんですか…」
<つぶやき>これはどういうこと? ほんとに恋人が買えちゃうなんてあり得(え)ないでしょ。
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