みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0556「偽りの仮面6」

2019-05-29 18:40:01 | ブログ短編

 主人(しゅじん)は女の顔を睨(にら)みつけて、ゆっくりとソファに座(すわ)った。そして、女を脅(おど)すように、
「お前の目的(もくてき)は何だ? 何のためにここへ来たんだ!」
 女は主人を睨み返して艶(なま)めかしい声で、「すぐに分かるわ。そんなに慌(あわ)てないで」
「どいつもこいつも、女って奴(やつ)は…。お前もそうだ。俺(おれ)が、お前にどれだけ金を使ったか分かってるのか。それを――」
「そのお金は、有効(ゆうこう)に使わせてもらったわ」女は妻(つま)の方を見て言った。
「まさか、そのお金をこいつに…。まったくお前って女は――」
「あなたも楽(たの)しんだじゃありませんか。何人もの女性と夜を共(とも)にして…」
 主人は怪訝(けげん)そうな顔をする。すかさず女が笑(わら)いながら言った。
「あなた、まさか自分(じぶん)が女性に好(す)かれてるなんて思ってないでしょうね。おかしいわ、そんなはずないじゃありませんか。あたしが、後腐(あとくさ)れの無(な)い女をあてがってあげたのよ」
「何を言ってるんだ。――あれは全部(ぜんぶ)、お前が仕向(しむ)けたって…」
「そうよ。あなた好(ごの)みの女性を探(さが)すのは大変(たいへん)だったのよ。おかげでずいぶん稼(かせ)がせていただいたわ。でも、そろそろ限界(げんかい)なんじゃない。会社(かいしゃ)の――」
「黙(だま)れ! 俺をよくも欺(だま)してくれたな。このままですむと思うな。訴(うった)えてやる」
「あら、あたし、お金を要求(ようきゅう)したことなんて一度もないわよ。これって罪(つみ)になるのかしら」
<つぶやき>一体(いったい)、何人の愛人(あいじん)にお金を貢(みつ)いだのでしょう。お金で愛なんて買えないのに。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 0555「しずく26~帰宅」 | トップ | 0557「偽りの仮面7」 »

コメントを投稿

ブログ短編」カテゴリの最新記事