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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0082「まだ早い」

2017-10-11 19:08:39 | ブログ短編

「あかり、風呂(ふろ)入るぞ」泰造(たいぞう)は愛娘(まなむすめ)と過(す)ごすこの時間を、何よりも楽しみにしていた。
 いつものあかりだったら喜(よろこ)んで父親に駆(か)け寄って行くのだが、今日はどうも様子(ようす)が違(ちが)う。泰造から隠(かく)れるように、母親の恵理(えり)の後(うし)ろにくっついた。
「どうした? パパ、先(さき)に入っちゃうぞ」
「いいもん」あかりは半分(はんぶん)顔を覗(のぞ)かせて言った。「あかり、ともくんがいい」
「ともくん?」泰造は首(くび)を傾(かし)げて恵理に訊(き)いた。
「誰(だれ)のことだよ、えっ?」
「ほら、この間、近所(きんじょ)に引っ越してきた吉村(よしむら)さんとこの…」
「聞いてないよ、そんなこと」泰造はムッとして言った。
「そうだった? 何か、すっごく仲良(なかよ)しになっちゃって」理恵は楽しそうにあかりに声をかけた。「ねっ、あかり。ラブラブだよねぇ」
「うん、ラブラブだよねっ」
「冗談(じょうだん)じゃないよ」泰造は顔色(かおいろ)を変えてあかりに駆け寄り、
「お前には、まだ早い。何が、ラブラブだよ。パパは絶対(ぜったい)に…」
「あなた、なに言ってるのよ。あかり、怖(こわ)がってるでしょ」
「お前も、お前だ。何で、そんな男と遊(あそ)ばせるんだ。それでも、母親か」
「もう、いい加減(かげん)にして。あかりはまだ幼稚園(ようちえん)よ。今から、そんなこと言ってどうするの」
<つぶやき>父親にとって、娘は特別(とくべつ)な存在(そんざい)なのかもしれません。でも、ほどほどにね。
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