これは、とある夫婦(ふうふ)のお話だ。
妻(つま)が夫(おっと)に妊娠(にんしん)を告(つ)げると、夫はどこからか家政婦(かせいふ)を連(つ)れて来た。妻は心配(しんぱい)になって言った。
「そんなお金(かね)、どこにあるのよ。そこまでしなくても…」
夫は嬉(うれ)しそうに、「心配ないよ。ちょっと知り合いのつてで安(やす)くしてもらったから」
妻はしぶしぶ受(う)け入れた。ところが、この家政婦、どうやら夫の愛人(あいじん)のひとりのようだ。妻に隠(かく)れて、家の中で身体(からだ)を触(ふ)れ合ったり、みだらな振(ふ)る舞(ま)いをしていた。妻が出産(しゅっさん)をおえて赤(あか)ちゃんを連れて帰ってきた頃(ころ)には、夫は妻の目を気にすることがなくなっていた。これみよがしに、まるで夫婦になったかのように見えた。
妻は、育児(いくじ)の手伝(てつだ)いをしてくれるので、その家政婦には何も言えなかった。悪(わる)い人ではないのだ。夫への不信感(ふしんかん)も芽生(めば)えていたが、妻をないがしろにするわけでもなく、育児にも前向(まえむ)きで良(よ)きパパになっていた。でも…、これでいいのか?
妻は思い悩(なや)んで、夫とちゃんと話しをすることにした。でも、夫は…。
「何の不満(ふまん)があるんだよ。彼女がいてくれて、君(きみ)だって助(たす)かってるだろ。俺(おれ)だって、彼女にはずいぶん助けてもらってるんだ。クビにする理由(りゆう)がどこにあるんだ?」
「でも…、あなた。あの人と、そういう関係(かんけい)なんでしょ。あたしは…イヤなの」
「なに言ってるんだ? 君と彼女は二人でひとりなんだ。俺には必要(ひつよう)なんだよ」
<つぶやき>こんな夫は許(ゆる)しちゃダメだよ。けじめをつけさせて、お仕置(しお)きしちゃおう。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。