徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

書評:Ostfried Preußler著、『Das kleine Gespenst(小さなゆうれい)』(Thienemann-Esslinger)

2019年08月18日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

ドイツ語の児童文学とは今まで縁がなかったのですが、FB友達のお勧めでOstfried Preußlerの『Das kleine Gespenst(小さなゆうれい)』を読んでみました。

Eulenbergという小さな町の上に立つ古いEulenstein城に住む小さなゆうれいのお話で、市庁舎の鐘が夜中の12時を打つと起き出して1時の鐘が鳴るとまた眠る習性を持っていて、みみずく(Uhu)のSchuhuと友達で、彼と昼の世界はどんなだろうと話していたら、ある日突然昼の12時に目覚めてしまい、Eulenbergの町中を昼日中に彷徨って騒ぎを起こします。ストーリーは単純で微笑ましく、思わずニヤリとしてしまうよなユーモアがあります。

ドイツ語学習者の視点で見ると、児童文学とはいえなかなか侮れない高度な表現があります。私はもうちょっと言葉の面でも子供向けの単純なものを想像していたのですが、結構知らない表現があって意外でした。知らなくても意味は文脈からくみ取れるようなものでしたが、興味深いものでした。例えば jemanden ins Pffererland wünschen(誰かが遠くに(コショウの育つ土地)いなくなることを願う)や mit Holterdiepolter(大慌てで)などが表現として面白いですね。別れる意味での「失礼する」のニュアンスで sich empfehlen が使われているのもなかなか文学的です。

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書評:エラリイ・クイーン著、大庭忠男訳『日本庭園の秘密』(ハヤカワSF・ミステリebookセレクション)

2019年08月16日 | 書評ー小説:作者カ行

『日本庭園の秘密』または『ニッポン樫鳥の謎』(井上勇 訳)は1937年の作品で、国名シリーズの最終編です。日本で育った女流作家カレン・リースはニューヨークに日本庭園のある屋敷を構えて住んでいましたが、その屋敷の寝室で怪死を遂げます。その時彼女の婚約者の娘エヴァ・マクルーアが訪問しており、カレンが書き物をしている間居間で待っていて、彼女がカレンの死を発見するまで居間の前を誰も通らなかったため、実質上の密室殺人ということになります。エヴァ以外にカレンを殺すことができた人間は居なかったため、彼女は窮地に追い込まれますが、そこに急に表れた私立探偵テリー・リングがエヴァの無罪を信じて時間稼ぎのためにカレンの部屋から屋根裏部屋に続くドアのかぎを開けるなどの工作をして捜査を混乱させます。

このテリーの行動の意味も長いこと謎のままですが、カレン自身もかなり謎な人物です。

最終的にエヴァの容疑はすっきりと晴れて事件は解決したと思われた後にもう一転するところが興味深いです。そのせいもあって「読者への挑戦」は挿入されていませんでした。

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国名シリーズ

書評:エラリイ・クイーン著、宇野利泰訳『ローマ帽子の秘密』( ハヤカワSF・ミステリebookセレクション)

書評:エラリイ・クイーン著、宇野利泰訳『フランス白粉の秘密』(ハヤカワSF・ミステリebookセレクション)

書評:エラリイ・クイーン著、宇野利泰訳『オランダ靴の秘密』(ハヤカワSF・ミステリebookセレクション)

書評:エラリイ・クイーン著、宇野利泰訳『ギリシャ棺の秘密』(ハヤカワSF・ミスリebookセレクション)

書評:エラリイ・クイーン著、青田勝訳『エジプト十字架の秘密』(ハヤカワSF・ミステリebookセレクション)

書評:エラリイ・クイーン著、大庭忠男訳『アメリカ銃の秘密』(ハヤカワSF・ミステリebookセレクション)

書評:エラリイ・クイーン著、青田勝訳『シャム双生児の秘密』(ハヤカワSF・ミステリebookセレクション)

書評:エラリイ・クイーン著、乾信一郎訳『チャイナ・オレンジの秘密』(ハヤカワSF・ミステリebookセレクション)

書評:エラリイ・クリーン著、大庭忠男 訳、『スペイン岬の秘密』(ハヤカワSF・ミステリebookセレクション)

 

悲劇シリーズ

書評:エラリイ・クイーン著、宇野利泰訳『Xの悲劇』(ハヤカワSF・ミステリebookセレクション)

書評:エラリイ・クイーン著、宇野利泰訳『Yの悲劇』(ハヤカワSF・ミステリebookセレクション)

書評:エラリイ・クイーン著、宇野利泰訳『Zの悲劇』(ハヤカワSF・ミステリebookセレクション)

書評:エラリイ・クイーン著、宇野利泰訳『ドルリイ・レーン最後の事件~1599年の悲劇』(ハヤカワSF・ミステリebookセレクション)

 

書評:エラリイ・クイーン著、大庭忠男訳『九尾の猫』(早川書房)

書評:エラリイ・クイーン著、青田勝訳『災厄の町』(ハヤカワSF・ミステリebookセレクション)


書評:エラリイ・クリーン著、大庭忠男 訳、『スペイン岬の秘密』(ハヤカワSF・ミステリebookセレクション)

2019年08月12日 | 書評ー小説:作者カ行

『スペイン岬の秘密』(1935)は国名シリーズの第9弾。舞台は大富豪ウォルター・ゴッドフリー氏が所有する大西洋に突き出したスペイン岬。主人の妻であるステラ・ゴッドフリーに招かれた客の一人として滞在していた悪名高きジゴロのジョン・マーコが屋夜中に敷のテラスで殺され、帽子とマントと杖以外は裸で発見されます。

エラリイ・クリーンは親しい引退したマクリン判事の誘いでスペイン岬にある貸別荘に向かい、現地に着いた早々縛り上げられた若い女性を別荘の中で発見することになります。彼女はゴッドフリーの娘のローザで、前夜に叔父のでしたデーヴィッド・クマーと散歩中に誘拐されていたのでした。叔父はジョン・マーコと間違われて誘拐者キャプテン・キッドにモーターボートで連れ去られてしまい、そのまま行方知れずになります。

休暇先でこのような事件に遭遇してしまったエラリイ・クリーンとマクリン判事は休暇どころではなくなり、ゴッドフリー家に滞在して現地の警察・モーリ警視に協力することになります。

なぜマーコはマントと帽子を除いて裸だったのか、犯人はなぜ彼の服や靴など一式を持ち去る必要があったのか。この問いが事件を解くカギとなります。

マーコはかなりの悪党で女性関係を多数持っていただけでなくその女性たちを恐喝していたらしいので、殺人の動機は怨恨と考えられるという意味では割と普通の殺人事件と言えるかもしれません。『チャイナオレンジの秘密』の時のような大掛かりな仕掛けが使われたわけでなく単純な針金による絞殺なので、トリック解明のようなものはなく、関係者らのウソを暴き、真の関係性を追究する方に主眼が置かれています。凝り過ぎたトリックはいまいち理解できないことが多いので、このような人間関係の絡みやウソの解明がメインの推理小説の方が私の好みです。

 

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国名シリーズ

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ドイツ語いろいろ~コンピュータ関連用語、コンピュータでの作業に関する語彙集

2019年08月12日 | ドイツ語いろいろ