徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:エラリイ・クイーン著、大庭忠男訳『アメリカ銃の秘密』(ハヤカワSF・ミステリebookセレクション)

2019年06月06日 | 書評ー小説:作者カ行

『アメリカ銃の秘密』(1933)は国名シリーズ第6弾。西部劇をニューヨークに持ってきた感じのロデオがスポーツ競技場コロシアムで上演され、2万人の観衆が見守る中、カウボーイ&カウガールたちの一斉射撃(空に向かって空砲を打つ)があり、その瞬間に往年の西部劇映画スターのバック・ホーンが馬から落ちて、彼の後を追っていたカウボーイたちの馬に踏みつぶされるという悲惨な事件が起こります。彼は一発で心臓を撃ち抜かれて死亡したために馬からずり落ちたのでした。クイーン家の召使ジューナの希望でロデオを見に来ていたクイーン父子は直ちに現場を収め、警察の応援を呼んで2万人の身体検査を行い、場内もくまなく捜索しましたが、バック・ホーンを撃った銃は見つからずじまいでした。捜査のためにコロシアムは閉鎖・興行禁止となり、4週間収穫のないまま経過し、再度ロデオが上演されると、また同じ状況で同じ武器を使ってウッディというロデオのトップスターが射殺されてしまいます。

いろんな背後関係が明らかにされて行きますが、武器はかなり後になるまで見つかりませんでした。例によって「読者への挑戦」ページがありましたが、最後の謎解きと同期の説明を読む限り「必要なすべての情報が提示された」とは納得がいかないと思いました。すごく真剣に謎解きをしようと思って読んでたわけではありませんが、「なるほど、あれはそういうことだったのか!」という納得感よりも、「そんなことどこに書いてあった?」という部分が多かったという印象を受けたので、読後感はX。娯楽としての楽しさがそれによって半減している感じです。

武器を隠すトリックは、なるほど確かにそこは抜け穴だったなと思えるものでしたけど。

 

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